登場、悪の大幹部! 【11】
「ねえ、ヴィーナス、わたしじゃ、ダメなのかな?」
ハートのペンダントを見詰めながら、愛美はヴィーナスに語りかけた。
「わたし、水魚ちゃんの気持ちを全然考えずになんてひどい事を……」
顔を押さえるように手で覆った愛美が、左右に首を振った。
「やっぱり、わたしじゃ、リーダーなんて務まらないのかしら?」
「愛美センパイ?」
愛美が振り向くと、そこにはじょうろを手に、おずおずと上目使いにこちらを見詰めながら、花園妖子がちょこんと立っていた。そう言えば、ここの花畑は確か妖子が世話していた筈だった。
「妖子ちゃん__」
「センパイ、誰とお話してたの?」
携帯電話の普及で最近では独り言も余り奇異な目で見られなくなったが、妖子は何となく気になるらしい。
「センパイも、妖子とおんなじなの?」
「おんなじ?」
「お花さんや、風さんの声が聞こえるの?」
「あ、あは__」
愛美はちょっとうろたえて答えた。
「そうじゃなくてね、妖子ちゃん」
愛美は掌にペンダントを乗せて、妖子に掲げて見せた。
「大切な__お友達と話してたの」
「お友達?」
妖子がペンダントを覗き込むように見詰めた。暫くして__
「__お友達?」
妖子が、ペンダントを指差した。
「ええ__」
愛美が頷いた。
「とっても大切な、お友達の__」
愛美が言葉を切って、一息つけてから続けた。
「__形見なの」
「形見……」
妖子が小首を傾げた。
「お友達って、おっきなビーナスの事?」
「ええ」
愛美が、やや寂しげに頷いた。
「センパイ」
「なあに?」
「妖子も、おっきなビーナスとお話してもいい?」
「妖子ちゃん……」
妖子の一言に、愛美が感に耐えないと言うように呟いた。
「ダメ?」
「そんな、妖子ちゃん__」
潤んだ瞳を輝かせて愛美が溜息をつくように言った。
「有り難う、妖子ちゃん。是非、お話してあげて。きっとヴィーナスも喜ぶと思うから」
「うん__」
素直な、どこまでも純真な笑顔で頷いた妖子に、愛美の胸が熱くなった。