登場、悪の大幹部! 【8】
「ええー?!」
事の次第を聞かされた愛美が気の毒なくらい狼狽して、やや間の抜けた声を上げた。
「どうしましょう、ねえ、翔子ちゃん__」
そう言われても翔子にも答えようが無い。
「まあ……」
縋り付くような愛美の泣き顔に、翔子が苦笑いで返す。
「仕方無いんじゃございませんこと?」
翔子の、やや薄情な答えに愛美が益々悲しげにその美貌を崩した。翔子が慌てて言葉を捜したが、咄嗟には出てこない。
「だけど……」
俯きながら愛美が呟いた。
「だけど、水魚ちゃんがそんなに気にしてるなんて……」
「そうですわねえ」
翔子が救われたように相槌を打った。
「水魚ちゃんの気持ちに気付かずにわたし、なんてひどい事を__」
「そんな、先輩」
「仲間の気持ちも判らないなんて、わたし、リーダー失格だわ」
「ちょっと……」
おいおい、と言う風に翔子が掌を上下させた。
「そうだわ__」
愛美が、意を決して顔を上げた。
「水魚ちゃんに謝らなくちゃ」
「先輩、何もそこまで……」
「いいえ__」
愛美は思いつめた顔で力強く言い切った。
「ゴメンね、翔子ちゃん。わたし、水魚ちゃんに謝って来るから」
「神先輩」
そんな、滑稽なほどに生真面目な愛美を、翔子が温かな眼差しで見守っていた。
「それじゃ__」
「先輩__」
“全く__”
やれやれ、と言う風に、翔子が肩を竦めて愛美の後姿を見送った。
“頼もしいリーダーですこと”
皮肉ではなく、翔子は本心からそう思った。
“それに__”
何を思ったのか翔子は、妙に幸せそうな含み笑いを洩らした。
“海原さんて、もしかしたら、誰よりもデリケートで女らしい女の子なのかも知れませんわね”
これまた本気で、翔子はしみじみと温かな想いを噛締めた。