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人魚姫メルジーナは今世こそ平和に結婚したい  作者: 丹空 舞
第三章

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エピローグ

メルジーナは温室に戻り、ようやくひと心地ついていた。


ティモはいないけれど、身の回りのことはマリーがやってくれる。


任を解かれたメルジーナは、伯爵令嬢として館に帰ってきた。

エルネスティーネのところに行くまでにはまだ時間があるのだろう。

招集がかからないのをいいことに、メルジーナは実家ぐらしを堪能していた。


久しぶりの植物たち。


黄色い実のなる背の高いバナナの木。


「とめぃと」の苗も貰ってきた。

ずいぶん良く育っているようで、いくつも実がなっている。


ここで紅茶を飲みながらまったりと過ごす、午後のティータイムは何物にも代えがたい。



「最高ねー!」



エルネスティーネ様にも、バナナとトメィトを分けてあげようか。

でも、バナナの種はどこにあるのかしら?



メルジーナが小首をかしげながらカップを傾けていると、


「お嬢様ッ」


マリーのいつになく慌てた声が聞こえた。



「どうしたの?」


「失礼する」




温室に一陣の風が吹いた。気がした。




「……突然の訪問、申し訳ない」




ジークフリートは旅装ではあったが、それでも優雅であることに変わりはなかった。


「時間がないが、あなたの家の側を通りかかったので、その……少しでも会えたら、と」




メルジーナは丁重にカーテシーをしてジークフリートに挨拶をした。




「ご機嫌麗しゅうございます、殿下」


「あー……メルジーナ殿。あなたにお願いがあるんだ」


「命じて頂ければ良いですのに」


「それではいけないんだ。その、つまり、……一緒に来て欲しい」


「どこにですか?」


「エルネスティーネのところに戻らないで、皇宮で働かないか」


「エルネスティーネ様がお許しになるか分かりませんが……」



大公国をメルジーナが出国する話をするだけで散々泣き、ジークフリートを詰っていたエルネスティーネだ。お気に入りのメルジーナが帰ってこないともなれば、地獄絵図が繰り広げられかねない。


「実はそこは話がついているので心配はいらない。侍女を100人送ったし、何より…」


もしメルジーナがお兄様と婚姻するのならば親族になるじゃない! と手を打ったときのエルネスティーネはとても良い顔をしていた。


ジークフリートの氷の彫像と形容される美貌が僅かに赤みを帯びる。


「何より?」


無垢な瞳を向けるメルジーナ令嬢の美しくも可愛らしい様子に、ジークフリートは年甲斐もなく落ち着かないで言った。


「いや、いいんだ。あー……つまり! つまりだな、私……いや、俺は……最初見た時からあなたに惹かれていたんだと思う。海の中でも、陸でも、あなたは魅力的だった。ずっと」


メルジーナはジークフリートをじっと見た。氷の美貌は溶け去り、熱気さえ感じられる。何か大切なことを言われるような、そんな気さえする。





「ずっとあなたのことが……す」


「殿下!!」



温室の壁を蹴破る勢いで入って来たのはリア・ヴァイスだった。




「ま、待て、今良いところ……」


「馬車の休憩中にいなくなったと思ったら、何やってらっしゃるんですか! 従者がどれだけ焦ったかお分かりですか?」




美人が本気で怒るとものすごく怖い。


メルジーナは知らぬ存ぜぬでカーテシーをして見送ることにした。





ごねるジークフリートを屈強な従者二人に引き渡し、リアはメルジーナに向かって深い礼をした。



「うちの殿下が申し訳ありませんでした。全く子供のような方で」


「いえいえ、そのようなことは」



ニッコリしておすましをしていると、リアが言った。



「メルジーナ嬢。私の調査ではあなたが殿方との婚姻を希望しているということなのですが」



メルジーナはドッキリのあまり、ニッコリが崩れそうになった。


(リアさんの情報網、おそるべし。いや、ティモが喋ったな!?)



「……ええ。素朴でささやかな婚姻が私の夢でございまして」


「それでは、主の顔を立てて申しますが、皇宮にぜひいらして下さい。貴族向けのパーティーや晩餐会、舞踏会もあります。皇宮で勤務する貴族女性は参加できます。私の知人もそこで知り合った殿方と、先月式を挙げました」


「まあ!」


「素晴らしい出会いがあることを願っています」






皇宮への出仕をメルジーナはこのとき、婚活に有利だわ! と非常に軽い気持ちで決めた。



しかし、メルジーナが慎重でさえあれば、リアが「あなたの夢がかなうことを願う」とは言わなかったことに、気が付けたかもしれない。




リアが目論んでいたのは、素朴でもささやかでもない、帝国中の耳目を集める婚姻だった。







しかし、それをメルジーナが知るのは、まだまだ先の話である。





いつも「いいね」や評価をしてくれた、名前も分からないあなたの応援で、稚拙ながらも最後まで書き切ることができました。

ありがとうございました!

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