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嘘つき
ミオナの台詞には、一種の説得力があった。
いや、他の誰かが同じ台詞を言っても、白々しく言い訳のように聞こえただろう。
だけど王妃の正装に身を包んだミオナは、有無を言わせない高貴さがあって、誰もが魅力された。
まるで本当に、被害者であるかのようだった。
「私共も傷付けられた者なのです。盟約を裏切り、オスカー大公国は隠していた悪事を拭い去るためにこちらを売ったのですわ。だってそうでしょう? 証拠など一つも無いのですよ。マージというその悪党が嘘をついているのですわ。信じて下さいますね?」
うるんだ瞳と庇護欲がわくたおやかな淑女然といった王妃の言葉は、その場にいた者たちの正義心を煽るのに十分だった。
「もしもオスカー領が関係していたとしたら、密約だの毒薬だのと、……ああ恐ろしい、……何か一つくらいは証拠が出てくるはずではありませんか」
しかし怜悧な双眼に力を込めたジークフリートは、ミオナを真っ直ぐに見据えていた。
「本当に、証拠は無いと言い切れるのか」
「ええ。だって私共は関係ありませんもの。海の神に誓ってもいいですわ」
「その言葉、相違ないな」
「もちろんです」
ジークフリートの口角が、僅かにあがった。




