裁き
ジークフリートが目で合図したのを皮切りに、側近のイカルデが喋り出した。
いつも外交のときにはジークフリートの傍で仕事をする有能な部下だ。
メルジーナにとっては壮年の気の良いおじさんというイメージだったが、このような公の場だと厳格で重々しい印象を感じさせる。
「オスカー2世、大臣4名……および妃のミオナに罪状が出ている。先触れを出したが、皇太子ジークフリート殿のオスカー大公国における暗殺未遂についてだ。オスカー大公国のマージ元大臣が、そなたたち関係者の名を全て吐いた。何か言い逃れはあるか」
オスカー2世は顔をあげられず、大臣4名にいたってはガタガタと震えだしている。
ジークフリートの後ろに控えている騎士たちが罪人を拘束するために動き出そうとしたそのとき、
「お待ちください」
と、高い声が響いた。
それはあまりにも堂々としていたので、いっそ神々しく感じられた。
「私共は陥れられたのですわ」
と、言ったのはミオナ王妃だった。
「外交がうまくいかないからと、オスカー大公国の者はこちら側に罪をなすりつけようとしたのです。私たちは何もやっていません」
「しかし…」
イカルデが続けるよりも先に、ミオナが言った。
「こう言っては何ですが、証拠はあるのですか? オスカー大公国が嘘をついているのです」




