罪と罰
ミオナは神経質そうに指先を擦り合わせるオスカー2世を支えるように、そっと隣に寄り添っていた。
何処からどう見ても、領地を守ろうと奮闘する王を献身的に支える妃だ。
我ながら妃という仮面の被り方も様になっている。
ジークフリート皇太子は予告していた期日ぴったりに王城の門をくぐった。
氷の美貌と言われるだけあり、隙のない彫像のような男だった。
歓待もそこそこに、ミオナとオスカー2世は側近たちと共に皇太子の前に頭を垂れていた。
普通なら帝国の城に関係者を呼び出すだろうに、そうしなかったのは逃亡を阻止するためだろう。
それだけでも帝国の本気が察せられた。先代の王は悪事を働くにも抜け目がなかった。帝国は今回こそはオスカー派を粛清するつもりでいるのだろう。
ミオナは内心で高笑いしていた。
全く心配は要らない。
何せ、証拠は何一つないのだ。
魚の毒を提案したのはミオナだ。
と、いっても珍しい魚の名前や毒効を詳しくマージに教えただけ。
ミオナ自身が手配したものは何もない。
今回はうまくいかなかったようだが、あれは向こうに非がある。
少量で劇的に効果のある毒なのに、それでもぼろを出すなんてとんだ間抜けだ。
無味無臭かつ致死性が高い、死因も謎であることが多いのに、エスター大公国の奴らはボンクラ揃いなんだろうか。
先代の王には、きちんと効果があったのに。




