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人魚姫メルジーナは今世こそ平和に結婚したい  作者: 丹空 舞
第三章

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オスカー2世


「失敗した?」


オスカー2世は耳を疑った。

まさか。


信じられない思いでいるうちに、エスター大公国のマージが捕らえられたと続報が入った。


エスター大公国とは前王からの繋がりがある。海運を生かして、様々なものを輸入している大公国とのパイプは不可欠だった。なぜなら、前王オスカー1世は戦いこそが人の生き様だと息巻くような存在だったからだ。

オスカー1世はエスター大公国からの武器の密輸を繰り返していた。そんな父は、美食に明け暮れた日頃の不摂生がたたってか、六年前の流行り病であっけなく亡くなった。


オスカー2世となった自分が即位してからも、変わったことはそれほど多くない。

既存の物を現状維持すればよいと信じていたし、それで今まで問題が起こったこともない。


それなのにーー。


「ジークフリート殿下が直々に視察に来られると!」


「マージが喋ったか」


オスカー2世は震えが止まらなかった。

好戦的な父王と違い、戦などどうだってよかった。波風立てずに生きていればそれでよかったのにーー。


「まさか発覚するはずがなかった」

「それが、あの魚の毒について非常に詳しい人間が、宴席にいたらしく…」

「おい、マージの話ではあの毒は珍しい物だから知識のある者は殆どいないはずではなかったのか? だから話を持ちかけられたときに、断ればよかったのだ!」

「しかし、断れば先代の密輸の件が明るみに出ると、マージ殿が……」

「ええい、済んでしまったことは仕方がない。どうするのだ、ジークフリートが来てしまう。我々は糾弾されるぞ!」



オスカー2世は唾を飛ばしながら大臣にまくし立てた。膝が震えていた。

なぜだ。なぜこうなる。


そのとき、後ろから天使のような柔らかな声が聞こえた。


「大丈夫ですわ」


オスカー2世は振り返った。

そこには、いつも自分を救ってくれる妃が、蠱惑的な笑みを浮かべていた。


「証拠などありません。あり得ませんわ。堂々としていれば良いのです」


ああ、こんな時でも彼女は美しい。

海で溺れて命を落としかけた自分を救ってくれた彼女こそ、真心と誠実の権化に違いない。


「さあ、王として決断するのです」


膝の震えはいつの間にか止まっていた。

最終章です。

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