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傷つけた者と傷ついた者
傷ついた者は忘れない
いつどんなふうに血を流したか
誰がどんな顔で
大切なものをむしり取ったか
永い時間 己れを責め
後悔をする その間
傷つけた者は菓子を食べている
何もかも忘れて
傷つけた者は忘れている
誰かを叩きつけた事実は
なかったことにして
そんなことかと意にも介さず
傷つける者は愚かな生き物だ
どれだけ富と名声を得ても
紛い物に囲まれていることに
ずっと気付けずにいるから
ぼろきれになっても
血を流した者は 傷ついた者は
他の誰かを傷つけることのない
本当の強さを知る者だ




