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サラクの主張
ジークフリートが静かに切り出した。
「サラク大臣はキノコを持ち込んだとうかがったが、本当でしょうか」
「ええ。事実です。だが、珍しいことでもない」
サラクは神経質そうな目をパチパチまばたたかせた。皺が寄った眉間を隠そうともしない。
「豊穣の神に祝福された我らが大地。客人をもてなすのは古来よりのしきたり。以前にも大陸からの方々を同じようにしてもてなしてきた。今回も同じですよ。私も迷惑しているのです。いったい誰がこんなだいそれたことをしでかしたのか見当もつかない」
「貴方では?」
と、突然斬り込んだジークフリートに、
「まさか」
と、間髪入れずにサラクは返した。
表情は少しも変わらない。
なるほど、有能だというのは察せられる。為政者には多くの場合、私的な感情は不要だ。
「おそれながら申し上げますが」
と、全くおそれていない口調でサラクは続けた。
「ジークフリート様を私が害する理由がない」
ジークフリートは、では理由ができれば貴方は私を害するのかと追求したくなったが、何も感じていないような瞳でそうだと言われるに違いないと思って、次の人物へと目をむけた。
他人の感情の機微に疎い人間と付き合うのは、苛立つものだ。




