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人魚姫メルジーナは今世こそ平和に結婚したい  作者: 丹空 舞
第二章

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勢ぞろいです

いたって平和に行われた会談も終わり、メルジーナはエルネスティーネと共に晩餐会の会場にいた。


エスター大公国は長い間、帝国にも諸外国にも与せず、独自の立場を貫いてきた。

しかし、今回エスター大公の結婚で、これを機に財政難や治安情勢などを鑑みて、大臣たちは帝国とのパイプを繋げようとしているのだろう。メルジーナは儚げなあのエスター大公が、政治の傀儡として利用されはしないだろうか、とふと不安を感じた。


花の蜜を溶かしたような甘い顔をした大公だ。あどけなく、ふっくらとした頬に小動物を思わせるようなきらきらした大きな瞳をしている。一国の大公様に失礼かもしれないが、これほど愛らしい、美しいという言葉が似合う少年もいないだろう。


あのエルネスティーネに、緊張もせず、隣に寄り添ってにこやかに話をしているエスター大公を見ながら、メルジーナは密かに安堵した。

なかなかどうして、エルネスティーネも楽しそうだ。


しかし、メルジーナはふと、とんでもないことを思い出した。


(エスター大公は、三十路をこえているという話だったわよね。エルネスティーネ様とは十五歳違うんだから、……ん? えっ、エスター大公って、あの、そこにいる方よね? んっ? 三十路……えっ? どう見ても二十歳そこそこ……? ん?)


メルジーナは深く考えないことにした。




ジークフリート皇子は相変わらずだった。例の氷の美貌で、広間の女性陣の視線を総取りしていた。グラスに入った前菜の生海老の尻尾を持って食べるだけで、そこかしこからキャアッと音のない悲鳴がする。涼やかな目元が心憎い。


メルジーナにしてみたって、手づかみで飲食するジークフリートというのは珍しいし、ちらりと見える舌や歯はたしかにどことなく、なんとなく、見ているだけでドキドキするような感じがする。それを巷では(色気)だとか(フェロモン)だとかいうのだが、メルジーナにはまだ分からなかった。


非公式な晩餐会ということもあり、式典こそないものの、国々の主要な人物は大広間に勢ぞろいしていた。




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