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人魚姫メルジーナは今世こそ平和に結婚したい  作者: 丹空 舞
第一章

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名乗るほどのものでは


指輪をつまんだまま、ぼうっとした銀髪の青年は、熱に浮かされたような顔でメルジーナを見た。



「まるで魔法だ」



メルジーナはにっこり笑った。

人に限らず、生き物を助けることの多い、情の深いところは転生しても変わっていなかった。


「そんな夢物語みたいなこと。ほんの少し、泳ぎが得意なだけですよ」

と、メルジーナは言った。


青年はさんばしにしゃがみ込んだまま、つまみあげた指輪をメルジーナの目前に突きつける。

昼前の太陽を受けて、ピンク色の宝石がキラリと光った。


「この海のどこにあるかもわからない小さな指輪を……泳ぎが得意というが、砂や海藻に隠れている小石を見つけるようなものだ。簡単なことじゃない。いや、普通の人間ではとても」


その言葉にギクッとしたのはメルジーナだ。


「えっ!? いや、いやいやいや、ちがっ、ちがいますよ、普通~の人間ですよ。平凡な、普通代表です!」

「礼をしたいのだが」

「いいですいいです」

「それでは気が収まらん」

「いやいやほんと、こんなのたいしたことじゃないんで」


グレーの瞳に間近で見つめられ、メルジーナの心臓が跳ね上がる。

「せめて名前を……」


銀髪の青年の手がすっと頬に触れた。

メルジーナの胸中で、ヒェェェェェッと悲鳴があがる。

深海生物に指を突っ込んだときよりぞわぞわする。

父さんや姉さんに触れられるのは日常茶飯事だったのに、どうしてこんなに違うのか。

メルジーナは顔の熱さをごまかすように首をぶんぶん振って、半ば叫ぶように言った。


「なっ……名乗るほどのものでは! ティモ! わ、わ、私先に帰ってるからっ、いつものとこで!」

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