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追加攻略対象のキャラ被り問題は、いつでもどこでも普遍的な問題です

 一夜明け、いよいよ私たちは南の封印へと向かう。

 でも南の封印に向かってすぐに試練を受けたら、突破しようがしまいが、悪路王がやってくる。連戦は厳しいということで、南の封印に着く前に作戦会議をしてから行くことになったけれど。

 皆が皆、なかなか現状打破する手段を思いつかずにいた。


「そもそも悪路王が現れるというのは、さんざん鈴鹿様に対して仕掛けていたんですからわかります。実際に田村丸さんが鈴鹿様にかけられるはずだった呪いを引き受けましたから。ただ、いつ襲撃してくるのかがわからないというのが困ります」


 保昌が言う。

 そりゃそうだ。試練を突破して朱雀の力を引き受けた直後に襲いかかってくるのか、南の封印を出たときに襲いかかってくるのか、タイミングがわかれば対処もできるけれど。酒呑童子にしろ白虎にしろ、言っていることがふわっふわし過ぎなんだ。

 黒虎をちらりと見ると、黒虎は肩を竦めてしまった。


「あれは魑魅魍魎を統べ、初代巫女に執着を見せておる。鈴鹿に彼女を見出したとなったら、あれはなかなか難儀だ。隠密を貫いて、我々の気が緩む瞬間にさらうだろうな」

「そんな……もうちょっとこう、なにかわからないんですか?」

「そういう星詠みは、詠めないものか?」


 黒虎に指摘されて、私は目を白黒とさせる。

 ……一応運命と合わせて天命も詠めるようにはなったけれど、悪路王の天命なんて詠ませてくれるのかな。私はおそるおそる空を眺めた。

 空の星のひとつひとつを線で結び、その星座図から天命を見出す。その編み目の中に、たしかにものすごい情報量のものがあったけれど……。私はそれらを詠んだ瞬間、頭に大量に情報が流し込まれる感覚を覚えて、頭を抱えてしまった。


「いった……っ!」


 こめかみがズキズキと痛む。それに保昌が「そこまでです、紅葉様」と慌てて私の傍に寄ってきてくれた。

 維茂はぎょっとして、私を支え、保昌に詰問する。


「これはどういうことだ? 黒虎も」

「……おそらくですが、太古の鬼である悪路王の天命の情報量に、紅葉様が押し負けたのだと思います」

「そうなのですか?」


 私に振り返る維茂に、首を縦に振った。

 まるで動画再生を三十個以上一気見したような疲労感に、事務仕事がいつまで経っても数字が合わない徒労感を合わせたようなもので、処理しないといけない情報量に私の頭が追いつかなかった感じなのだ。

 それに黒虎は「すまなかった」とあっさりと謝る。


「我らも天命を詠み取ることができればいいが、我らでは詠むこともかなわぬからな。星詠みでも詠めないとなれば、いよいよ手に負えない」

「……天命で動きを特定できないとなったら、彼が襲撃してくる瞬間だけでも察知することができないかな。たとえば、保昌が南の封印に結界を張るとか」


 鈴鹿の提案に、頼光が「いや巫女」と止めに入る。


「それはさすがに止めたほうがいい。これは試練なんだから、試練をしている四神の心証が悪くなるような真似は、致さないほうがいい」

「いや、問題なかろうよ」


 そうきっぱり言い切ったのは利仁だった。それに周りはきょとんと彼を見る。

 でも黒虎も私も「だろうね」という顔になってしまった。利仁は淡々と続ける。


「あれはそんなことは気にしないだろうよ、それこそ、巫女の安寧以外はな」

「……うん、そうだね」


 そう鈴鹿は困ったように首を捻っていた。田村丸はそんな彼女を支えている。

 ……まあ、ここまで来たらわかりそうなものだけれど、残念ながら皆煮え切らないものを抱えつつもわからないでいる。

 あれだけ仰々しい口調でも、誰も何故かツッコミを入れない。何故かそういうものだと思い込んでしまっているから。彼に対して疑問を持っても、流されてしまう。何故かまあいっかで済ませてしまうから。

 正直、私も転生者でなかったらわからなかっただろうし、黒虎に至っては同種だからわかるようなもんだ。

 利仁こそ、ずっとステルスを決め込んでいた最後の四神、朱雀だ。正確に言えばちょっと違うのだけれど、彼がここにいるのは朱雀のためだ。

 彼のルートが既に閉鎖されているというのは、南の封印を真っ先に攻略しなかったら、彼の中での優先順位が定まらないからだ。彼があまりにも攻略手順が引っ掛けだったがために、本家本元での彼の攻略については賛否両論だった。

 まあね、ひとりくらいは神様が攻略できたらいいと、そう思うんですよ。

 クソプロデューサーときたら、リメイク版の追加攻略対象が全員人外という、バランスブレイクっぷりを見せているから、折角の利仁ルートの切なさが全部クラッシュされてしまいましたがね、ははっ!

 既存攻略対象と追加攻略対象の配分くらい、考えたほうがいいと思うのよ?

 まあ私のがなりはさておいて。

 作戦としては、南の封印で結界を張り、朱雀と契約し次第警報が鳴るようにセットする。警報が鳴り次第迎撃……なんて、あまりにも普通過ぎるけれど、それ以外が思いつかなかった。

 問題はいろいろある。

 今は戦闘が明らかに鈴鹿に戦闘バランスが偏り過ぎているから、彼女以外の皆もそれぞれ強くならなかったら意味がないということ。特に悪路王との戦いに鈴鹿が参加できるかどうかわからないんだから。

 そもそも悪路王と戦う気のある酒呑童子と茨木童子が、こちらの都合に合わせて動いてくれるとは思えないし。いろいろあって敵に回る可能性だってある。

 そして根本的問題……最後の攻略対象が出てきてないということだ。

 一応「まさかなあ……」とクソプロデューサーの傾向を見て思っていることはあれども、いくらクソプロデューサーとはいえども、そんな投げやりな開示方法をしないといいなあ……と思う。既に信頼できないんだから、信じることは全くできない。


「とにかく、最後の戦いだけは鈴鹿に任せることができない。だから俺たちがどれだけやれるのか、測るしかないな」


 そう田村丸に締められて、私たちは一旦南の封印を迂回しながら進んでいくことになったのだ。

 とにかく練度を上げ、その練度を持って朱雀からの悪路王の二連戦に耐えきれるだけの戦いを行うこととなったんだ。

 南の封印の付近は、基本的に温かい。でも南国のような温かさとは少し違う。

 火山付近の温かさと言えばいいんだろうか。

 土は全部火山灰が混ざった黒土だし、あちこちでその火山の熱を利用して生活するスタイルが形成されている。温泉も川の水を引かないととてもじゃないけれど人間が入れるようなレベルの温度ではなく、どちらかというとエネルギーとして利用されているようだ。

 火山熱を使った歯車による自動織物機のパタパタという音が響き、皿科の中でも比較的栄えた風景が広がっている。

 その中で現れる魑魅魍魎も、一筋縄ではいかないものばかりだった。

 ぐるんぐるんと火車が火の粉を撒き散らしながら走ってくる。


「まさかこんなにすぐに、鈴鹿抜きでの戦闘の実戦ができる、とはなあ……!」


 火車の火の粉をかいくぐって、田村丸は大きく大剣で火車を叩き潰す。その隣の火車は、頼光も火車の車輪の間に矢を差し、とどめとばかりに維茂が斬り伏せる。

 鈴鹿のようにわかりやすく四神の力を使わずとも、皆守護者に選ばれただけあって強いのだ。その強さが……悪路王に通用するのかが、一番の気がかりだけれど。

 私も折角天命が見られるようになったからと、必死で悪路王の天命を読み取ろうとしていたものの、なかなか上手くいかなかった。情報量が多過ぎて、頭がぐしゃんぐしゃんになってしまうんだ。

 庄屋屋敷に着いたときには、私は後方で待機していただけだったというのに、頭がぐしゃんぐしゃんになって、寝込んでしまっていた。


「紅葉、お疲れ様。保昌も言っていたでしょう? 難しいんだったら、止めてもいいんだよ?」


 鈴鹿には当然ながら心配かけてしまったのが申し訳ない。


「……私、維茂に足手まといだから早く帰れって言われたんです。私は、好きでここにいますから、嫌だと断りましたけど」

「うん、維茂だったらそりゃ止めるよね」

「ですけど……私は旅に出てからあれだけ修行しても、補助詠唱以外使えないんです。保昌は結界も張れて回復もできて、皆の役に立っていますのに、私は本当にずっと味噌っかすで……唯一彼より秀でている部分なんです。天命が見えるというのは。ですから……悪路王と対峙するまでに、見てまいりますから」

「……無理だけは、絶対にしないでね」

「わかっています」


 維茂にまた「帰れ」なんて言われたくないし……鈴鹿を鬼になんてしたくない。私だって鬼になりたくない。

 だから、頑張るしかないんだ。

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