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匿名性の戀(文)

作者: かげる












大好き、可愛い、愛してる。


それぞれの言葉を、一日でも言わないで、


行動が伴わない、偽りの人間が


僅かにでも実在すれば、


きみを、不幸にしてしまう。


そんなことを、想像するたびに、


ぼくの触る指が、タッチパネルが、


震えて、全て終わりにしたくなるのだ。


化け物になろうと思う。


きみを、愛する化け物に。


胸が焼けて、明日くらいに死ぬような、


儚い灯火。


そうやって今日を、終わりにしたい。


きみが、誰も愛してないわけがない。


みんな、きみのことを愛してるのに。


なんてラブレター。


響かない愛情を虚偽だとするなら、厚い唇で、


大きな口を、より大きな口で包みたい。


マグマに溶け込む岩石のように、ひたひたにして、


蜜蜂のように、直向きに、誠実に、


テンポよく返信し、満開の桜を咲かせる。





人の好意より嫌悪ばかり感じとる。


どうせ嫌うなら期待しないで!!





メラメラと燃える蝋燭の火が、からからにして、


空気の読まないボンベを鎮座させ、


やがて、それは汚ない花火のように散った。


無造作に化け物がぶん投げた怒りのような。


ぼくはいらなくても、きみがいる。


寄り添わなくても、重なり合わなくても。


SNSの外で生きているみたいで、


そのことが好きです。


身を尽くしたいのです、と


遠い個室で胸を熱く焦します。





この想いがげんそうだとしたら。


愛憎表裏一体なら。





きみもぼくを愛と、呼称しない。


それでも、こんな匿名だからこそ、


いらない自分は、


いる世界と、いるきみを感じたら、


『本当』に愛していると感じていれば、


それで充分ではないのか、と自問する。


性別ジャンルごちゃ混ぜに。


結ばれるんじゃなくて結ぶ婚姻に、


百パーを込めた大人の誠意と、大人の信頼と実績で、


未来への確証を得た大人は、その背景に、


曖昧な川が流れていることさえ無意識になって。


告白してないのに、


失恋したって発言すら、不誠実かもしれなくて。


彼女がいた、だけではなくて、


彼といた、画像添付が過去の証拠になって、忘れた。


忘れなかったのはイメージだけにして、忘れたまま。


『本当』のリアルタイムを生きてんだろ。


愛しているならそれでいいじゃん。


自分が感じていれば。


善意と好意はいらないだろ、なんて、


ぼくは笑うようにしたんだ。


自然の風が吹いたら、ゆらゆら揺れながら。


微睡みたくなる眠気で今日をお終いにしよう。


拡散したのは押し付けの、


好きです。


嫌いになってしまうのが、嫌なくらい、好き。


写真を見ても顔を覚えられないくらい、好き。


ぼくは馬鹿になってしまいました。


大好き、可愛い、愛してる。













そうだ。


悪質なストーカーはみんな大嘘つき。


きみはいつだってきみの感情に素直で、


嘘がつけない冷たい優しさがあるから、


みんなの戀を気にもとめないで拒絶し、


ぼくらが傷つくだけで済むんだ。


実は、


みんなきみのことを可愛いと思ってる。


だって、みんな素直じゃないから。









ぼくは、


善意と好意をやり過ぎても、


敵意以外なにも感じないだろうと期待して、


きみに片想いをした、化け物。


従順な化け犬として、今日も。


きみはかわいい。




























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