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テレビでも観るのです!

 俺は飛島に別れを告げると、俯きながら電車に乗って自宅に帰った。

 なんで俯いてたかって?

 だって、今の俺の格好はどっからどうみても笑われる格好だからな。

 無事に帰ってこれたのが奇跡なくらいだ。

 

 男子高校生が魔法少女の衣装を着てるんだぜ?

 

 こんなところを斉藤に見られたら大変なことになるに決まってる。

 あいつに知られたら校内中に拡散されていてもおかしくない。

 もしかして写真を撮ってSNSでばらまくかもな。あいつはそういう奴なのだ。

 

 しかしマギアゲームに俺が本当に参加させられるのかどうかは知らないけど、参加させられたとしたらどんな感じでやればいいんだろう。

 俺は当然ながら魔法なんて使えないから、相手が魔法を使ってきたら絶体絶命なんだよな。

 でもこの世界に魔法なんて存在するのか? 否、しないだろ。

 魔法があるんだったらこの世の中の暮らしはもっとより良い方に進んでいるはずだ。

 

 ――でも、魔法が存在しないとして――

 俺が女になったのはどうやって説明すればいいんだ?

 俺の夢? 幻覚?

 そんなわけはない。そうだとしたら俺が今着ている服はどうやって説明するんだ。

 ってことは魔法少女は魔法を使って闘うのか? 明後日に行われるのはそういう大会なのか?

 

 しまったな、飛島にそれくらいしれっと聞いてこれば良かった。気づくのが遅かったな。

 そういえばマギアゲームは連日オリンピック並の勢いでテレビとかで報道されてるらしいけど本当かな。

 俺は久しぶりにテレビリモコンを操作し、テレビの電源スイッチをオンにした。


 電源ボタンを押して繋がった最初のチャンネルは公共放送局によるものだ。

 つまり、俺が最後に観たのはこのチャンネルだったってことだろう。あ、ちなみに俺は訳あってひとり暮らしをしている。でもこれといった不自由はない。

 

『日本国民の皆さん、こんにちは。我が日本国が主催するビッグな大会がついに明後日始まります! この放送スタジオの前では、マギアゲームに期待する熱狂的なファンによる大会開催までのカウントダウンが既に始まっております! 二日前から二日後までの時間を数えてたらとてつもなく大変でしょうに情熱とは恐ろしいものですね……』

 アナウンサーがやたらにテンション高めで喋っている。これは公共放送のわりに珍しい光景だ。

『本日は大変素敵なゲストにお招き頂いております! 大会主催者である川瀬見紀良(かわせみのりよし)さんのお孫さんでいらっしゃいます、川瀬見さつきさんです。今日はよろしくお願いします』

『よろしく~! いよいよ明後日からだからね、私凄く楽しみなのっ』

『ほお、凄くというのはどれくらいでしょうかね?』

『サンタさんにプレゼントを貰う時くらい、かな。サンタさんはいつも旅行のためのジェット機とかを届けてくれるのよ。凄いでしょ?』

『サンタさんがですか……。どうやらサンタさんというのは子供の身分によって与えるものの規模が違う不平等な聖人のようです。私の頃なんてレタス太郎でしたよ。今の子供はそんな商品知らないですよね』

 

 アナウンサーの自虐ネタに数名のスタッフの大きな笑い声が聞こえた。その時女の子は真顔だった。というか若干拗ねた顔をしていた。

 この女の子、川瀬見さつきというのがあのポスターに書いてあった文章の筆者みたいだ。やたらに目がキラキラしてて発色の良い白い肌をしている。

 見た目だけなら小学四年生の見た目だ。恐らくはそれくらいの年齢なのだろうが、表舞台に立っても受け答えはハッキリしてる。

 ハーフなのだろうか、瞳は緑色で、日本人にはまずない天然物の金髪だ。金髪の遺伝子が勝つとはなかなか恵まれたやつだ……。

 

『さつきさん、この大会の見どころをズバリ言うとなんでしょう?』

『見どころって魅力ってこと?』

『はい、そうです』

『そうだなあ、やっぱり世界中の魔法少女たちが集まって魔法で戦闘するってのがこの大会でしか観られないものなんだよね。迫力がありすぎてこれをテレビで観てたらサッカーとか野球が物足りなくなっちゃうわ! 会場まできたら多分もっと凄いよ!』

『そんなにですか。あ、私共のチャンネルではサッカー中継や野球中継にも全力で取り組んでいますので、そちらの方もどうぞよろしくお願いします』

『おじさん、なんでそんなこと言う必要あるの? オトナノジジョウって奴? ここはマギアゲームだけ応援する番組で良いんじゃないの?』

『い、いえそれは……』

『マギアゲームなんて私だってまだ一度も観たことないんだから、そもそも私だってわかりっこないのに説明させようとするし!』

『す、すいませんっ』

「すいません? 何を吸わないの? タバコ? 大麻? シンナー?」

「ひぃ、ひぃぃぃぃいいいいぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいい!!!」

「すみませんだろうがボケェ!!!」

 

 放送事故だった。

 放送を続けて観ていても面白そうだったが、念の為チャンネルを変えてみた。

 情報は多角的に見るべきだからな。

 俺はリモコンについてる数字をポチポチと押しながらチャンネルを変えてみた。

 

 結果的に全局魔法少女の番組だった。

 一局だけマギアゲームとは全然関係のない魔女っ子ものの夕方アニメだったけど。恐るべしテレビ東○。


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