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決心なのです!

「試合終了!!! 赤コーナー飛島明日香の勝利! 流石、優勝候補だあああああぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」

 

 会場にアナウンサーの絶叫が響き渡る。耳をつんざくような高音で、ちっとは自重してくれと思うのだが。

 飛島は圧倒的な強さを見せつけて一回戦に勝利した。飛島とはブロックが違うから、闘うとしたら決勝だが、戦いたくない相手だけど、負けてほしくはないし、負けたくはない。

 飛島に負けるのだったら、別に良いような気もするけど。


 そんな気持ちを抱えたまま俺は二回戦に臨んだが、二回戦の記憶は曖昧だ。

 ピカソの本名並みに長ったらしい名前の魔法少女と戦って、相手は本当に雷の魔法を使ってきたが、それは静電気程度のもので俺には一切効かなかった。

 なんでこんなやつが二回戦に進んでこれたのか不思議だったけど、ベスト4をかけた戦いだったので会場のボルテージは最高潮に達してたとか。

 それは後から知ったことだけどな。

 後から知ったということは俺は生きているということで、俺が生きているということは俺が勝ち進んだことを意味する。

 実に楽勝プレイだった。彼女は自分の魔法が通じないのに不思議そうな顔をしていたが、それも束の間、俺は関節技(腕ひしぎ十字固め)で相手の腕を折ってやった。関節技なら死ぬことはあるまいと思っていたら、彼女が「ギブアップ!」と言って、ギップアップを宣言に彼女はフィールドの下から出てくる火の玉に包み込まれて消えてしまった。

 ギブアップすると、消されるらしい。

 俺が一回戦の時に、ギブアップをすれば死ぬことはないから、なんて思ってギブアップしてた可能性がなくはないと思うと恐ろしくなった。

 このゲームに参加した以上、生きて帰るのは優勝以外にないようだった。

 それってなんだか理不尽だと思う。俺はこの大会に出たくて出たわけじゃないのに。


 二回戦を進んだ後に連れて行かれた控室には試合観戦用モニターが設置されており、どんな風にテレビ放送されているのか俺は初めて知ることができた。

 戦闘時にフィールドを囲う結界には、テレビ放送用のカメラが埋め込まれていて、そのおかげでどの角度からも撮影できるようになっている。

 なんだかその説明を受けたときは不思議な感じがした。魔法とテクノロジーは融合しないと思っていたが、まさかの融合をしているのだ。

 そもそも魔法がテクノロジーを生み出したであって、サイエンティストはすべからく魔法使いなのだという。

 その知識をどこで知ったかって? さっきテレビでやってた魔法特集だよ。

 マギアゲーム効果で魔法関係の特番をやると視聴率はぐんぐん伸びるらしく、この波を利用して金曜ロードショーではハリーポッターが放映される予定だという。

 この波を利用しないと流行らないハリーポッターという映画は面白いのかどうかわからないが、考えてみれば俺は超有名な映画であるはずのハリーポッターすら観たことがなかった。

 自分ではオタクだと思いつつも、世間の流行をまるで知らないというのはなかなかやばくはなかろうか。

 もしかすると、俺はオタクですらないんじゃないか。そんな疑念が溢れ出てくるくらいに、俺のハリーポッター観てない度は高いわけで、本編を一ミリを観たことがないのだからしょうがないよなって思いつつも、そう思うだけにして特段興味もわかず、どうせ観ずに終わるであろう、そしてその終わるであろうことに納得している自分がおかしくておかしくて、たまらなくおかしくなってしまったが、それでも俺は観ない。

 肝心のマギアゲームの視聴率は40%くらいのもので、流石国営放送といっただけの数字を叩き出している。

 今のところ瞬間最高視聴率は飛島のパンチラの後にカメラに抜かれたハゲのおっさんで、よく観たら我が校の校長だった。

 この世界はどこまでも不思議で、観客席にいる奴らは何故そこに座れているのか俺は聞かされていない。

 校長もグルだったとすれば、俺の運命はそういう悪い大人たちによって操作されているような気がして腹が立つ。

 でも腹がたっても、その解消どころが試合にしかなく、当然その怒りが試合に出てしまう。

 だから準決勝も楽勝でやんのなんの。ワンパンで相手を粉砕しちまった。

 俺は自分が強すぎることに反省しようと思ったが、人間、強ければ強いほど良いじゃないって思う。

 そして決勝の相手は飛島だということで、ここで俺が負ければ結構理想の展開だ。

 理想の展開だと思っていた。

 紅音の存在に気づくまでは。


 あいつは今どうしているんだ? ちゃんと生きているのか?

 わからない。わからないからすごくもどかしいけど、わからない以上は悲しみに暮れるわけにはいかない。

 俺は決勝戦があるのだ。決勝で飛島に負ける、それでいいじゃないか。



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