決戦です!!!
ルカナ・リリアはまず棍棒を上段に構えた。
間合いは十分に取れているから、この距離で俺が打たれることはないだろう。
しかし相手は魔法使い。飛び道具がある可能性は極めて高いため、ここは慎重にいかなければならない。
俺はゆっくりと間合いを詰める……。
すると、勢い良くルカナ・リリアは上段から、俺の頭めがけて叩き割るかのように縦振りしてきやがった。
喰らったらひとたまりもない。しかし幸運なことに相手の予備動作はかなり大きかったので事前に予測して横に回避できた。
あれれ、相手の動きがよく見えるぞ。
いくら相手が巨体で動きが鈍いとは言え、ここまで動きが遅く見えるのは不自然だ。
もしかするとこれだけ相手が見えるのは俺の魔力のせいかもしれない……って考えるのは考えすぎか。
いける、そんな気がする。
多分俺の魔力は開放されているのだ。
なぜかはわからない。川瀬見さつきとああして喋ってから俺にパワーがみなぎっているような、そんな気がする。
だから俺は叫んだ。
呪文をな。
「ひなのスペシャルフローズンビーム!!!」
その呪文を唱えた瞬間に俺の手が光った。魔力が反応しているっ……!!!
それはクリームキャンディーひなのファンなら誰もが知っている、反町ひなのの代名詞的存在だ。
この呪文を言えば相手はフローズンし、カチコチになってしまう。
アニメ本編では反町ひなのはそのフローズン状態にしたら任務を終えて、普通の女子高生に戻ってしまうわけだが、俺はルカナ・リリアを凍らせた後にフローズン状態の彼女を無情にも殴り続ければ良いのだ。
ひなのスペシャルフローズンビームを喰らった敵は最後、解凍されるまで動けなくなり、殺意を持った相手を前にすれば殺されてしまうのだ。
そして今の俺にはその殺意とやらがある。なぜならば生き残らないといけないからな。
こんなデブスに殺されて死ぬのはごめんだ。悪いな、ルカナ・リリアというやら。
俺はお前を殺しちまいそうだぜ。
ああ、攻撃魔法なんてのはこんなに快感なのか、知らなかったぜ。川瀬見紀良もこの快楽にはまったわけだ。
魔法で人を倒せるなんて楽しいに決まってるじゃねえか。強さこそ近代マチズモの象徴。
その強さと可愛らしさを2つ兼ね揃えた今の俺は最強の戦士である!!
無敵だ、負けるわけがない。あかん、優勝してまう。
「って、あれ???」
俺は大声で呟いた。
確かにビームは出たはず。なのに凍っていない。
ルカナ・リリアは凍っていないのだ。そんなのってないじゃないか。
何が駄目だったんだ? 俺の魔力ではこいつの魔力に敵わないっていうのか?
そんなの絶望じゃないか。勝ち目ないじゃないか。
なんであれはこんなゲームに参加させられたんだよ。
そうこう考えている間にも巨体はズシンズシンと俺に近づいて来やがる。
あれれ、棍棒は凍ってやがるぞ。俺は敵の武器を強度増々にしてしまったかもしれない。
やばい、やばいぞ。どうすれば良いんだ。ルカナ・リリアの目は狂ってやがる。
狂気の笑みを浮かべて俺に近づいて来やがるのだ。来るな、来るんじゃねえ。
来るんだったら殺してやるぞ、糞豚女。っていっても俺にはそんな力はないけどな、へへ。
絶望じゃないか。どうしろってんだ。俺には為す術がないぞ。
焦るな、新城新太郎(現・反町ひなの)! クリームキャンディーひなのを思い出せ。
彼女は絶対的絶望を目の前にした時どう対処した??――そもそも絶望的状況にたたされません。
彼女はひなのスペシャルフローズンビームが効かない相手にどう対処した――そもそもひなのスペシャルフローズンビームが効かない相手なんて出てきません。
くそ、クリームキャンディーひなのQ&Aは尽く俺を絶望的状況に突き落とすだけで、なんの解決策にもなりやしねえ。
「ひなのスペシャルフローズンビームは男をカチカチにさせる魔法よ」
そのセリフは、ルカナ・リリアが吐いたものだった。
彼女の声にはドスが効いていて、北斗晶みたいな声だった。




