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魔力覚醒の時なのです!

 日にちは5月2日になっていた。

 俺は反町ひなの(一号)に誘導されるまま、控室に入った。

 控室は狭かった。

 何故かそこには大福とタバコが置かれていた。

 死刑囚かよ、俺は。それに俺は未成年だぞ。


「新太郎さん、いよいよですね」

「それにしてもお前は突然消えたり現れたり、どうなってんだ?」

「だって私、あなたの魔力で動いてますから」

「へ?」

「だから、あなたの魔力って結構侮れないですからね。安心してください」

「でもそんなこと言ってなかったじゃないですか」

「いや、さっき操縦者がチェンジしたんです」


 操縦者? 俺はこいつを操縦していたというのか?

 あ、こいつって言ってしまった。

 憧れの人と言えども実体化するとなんとなく舐め腐ってしまうものだな。恐ろしい。


「それで前の操縦者ってのは誰なんだ?」

「それはさつきさんですよ」


 ああ、あいつか。彼女はやっぱり魔法使いなんだな。川瀬見紀良を見るに、魔力は遺伝するのかもしれない。じゃあ嫌われたら殺されるかもしれない。怖い怖い。


「大会のルールは事前に発表されていたままなので、やっと正式にマギアゲームが開催されますよ!」

「ああ、こんなめちゃくちゃな大会に招待されるなんて俺はかなりの被害者だと思うけどな」

「そんなこと言わないでくださいよ。この大会は新太郎さんのためにつくられたようなものなんですから」

「俺のため?」

「あなたはどこまでもイレギュラーなんですよ。その意味を考えてください」


 そうは言われてもなあ、俺はこの大会に出る意義を感じていないし、死ぬか死なないのかよくわからない場所にずっといさせられるのはごめんだ。





『赤コーナー、ルカナ・リリア!!』

『青コーナー、反町ひなの!!!』

 名前がコールされた。控室で大福を食っていた時だったから、餅を喉につまらせそうになったぞコノヤロー。

 しかしこんなゲリラ的にコールされるとは思わなかったな。

 相手の名前はルカナ・リリアと言うらしい。なんとなく強そうじゃないか。

 というか日本人じゃないのか? それともリング名かもしれない。

 でも相手の容姿も能力もわからないのに、いきなり戦わされるなんて明らかに間違っている気がするよなあ。

 認識のない人間をいきなり殴れって言われても、そんなことはかんたんにできることじゃない。

 俺はそんな人を殴るのも慣れてないからなあ。


 むしゃりむしゃりとこし餡を歯ですり潰して、喉の奥に通す。

 俺はいよいよ覚悟を決めたわけであるが、何故俺がこんな覚悟を決めなければならないのか少し疑問に思う。

 そもそも論でいけば、俺はこんなことをしなくてもよかったはずだ。

 普通の高校生として生活して、こんなマギアゲームなるものが参加されていることも知らずにポテチを食いながらプレイステーションのコントローラを不意にベトベトにしてしまって、そのせいで誤作動を起こして自分の守備陣でスルーパスをミスって、スーパースターなコンピュータに華麗なゴールでも決められていれば良かったのだ。


 でも俺は反町ひなのになってしまい、ルカナ・リリアという如何にも魔法少女感ある名前の奴と戦わなければいけない段取りとなっている。

 そこに正当性は一切ないと思うのだが、これがすべて俺が飛島明日香にフィギュアのパンツを覗いているところを見られたところから始まったとするならば俺の罪を認めよう。

 しかし現実はそうじゃないようで、飛島明日香は参加者であって、主催者ではない。

 俺がこのゲームに参加していることも知らないだろうし、想像もしていないだろう。


 そういえば、紅音は生きているかな。あいつが心配だ。」

 もし万が一、ルカナ・リリアという相手が紅音だったらどうする?

 でもあいつは大会に参加するってことを教えてくれた時に、リングネームを使っているなんて言っていなかった。

 だからルカナ・リリアというやつは飛島でも紅音でもないわけだ。


 それじゃあ、どんな奴が俺に待ち受けているのかな。

 それはそれで、ちょっと楽しみになっている自分がいた。


 こじれた魔法少女へのあこがれが、俺の感情をそうさせるんだろうな。


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