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健闘を祈るのです!



 痛ててて。

 ここはどこだ。

 眼の前には川瀬見さつきがいた。

 白い壁に白い天井に、何も物が置いていない部屋で、臭いもなく、気温もよくわからない部屋だった。

「君が反町ひなのちゃんね?」

 俺がその名前を使われるとついつい「いいえ」と言ってしまいたくなるが、せっかくつくった偽名だから「はい」と言っておくのが無難だろう。

「はい」

「本当は新城新太郎君ね?」

「いいえ」

「ゲームじゃないんだから、そういうのやめない?」

 少女はにこやかに笑っていた。

 でも俺は何故彼女と二人っきりになっているのかまるで見当がつかない。

 そういえば確か魔法陣に吸い込まれて……。


「あなたを正式にMagiaGameの参加者として認めます!」

 あなたを正式にMagiaGameの参加者として認めます?

 川瀬見さつきはよくわからないことを言った。MagiaGameの参加者は二百人くらいいて、川瀬見紀良と戦っていたじゃないか。

「えっと、つまり……どういうことですか?」

「参加者が二百人なんて捌ききれないから数を絞ったの。十六人に」

「それじゃあ残りの人は?」

「おじいちゃんと戦っているよ。どうせ皆死んじゃうだろうけど」

 そのセリフはどこかおかしかった。

 思わず笑ってしまいそうだったが、明らかに笑うのに即している状況ではなかった。

 実際に多くの人が殺されているのを見たんだ。笑えるわけではない。


「でもなんで俺が正式な参加者に認められたんですか。他にももっと良い人がいたでしょう」

 正式な参加者になる=殺されずに済むということならばそれはそれは有り難いことではあるが、しかしそれにしてもそういう不平等によって生かされているとなれば気が気でない。

 もちろん、死にたくはないけどな。

「あなたを正式な参加者にする理由はかんたん。だってこの大会はあなたのために開いたようなものだもん」

「え?」


 俺のために開かれた大会とはよくわからないことを言い出すじゃないか。

 本当に俺の為を思うなら死人なんて出さないでほしいけどな。


「俺から一つ質問がある」

「なに?」

「このゲームで死んだら現実でも本当に死ぬのか?」

「それは死んでからのお楽しみ」


 恐ろしいことを平然と言う女だ。

 しかし小さい女の子にムキになるのは男としてどうかと思うので閉口する。

 俺は天井をぼんやりと見つめる。

 シミひとつない天井だ。


 この天井が落っこちてきたりしたら俺は死ぬ。

 そして俺が死ねばこのゲームがガチなのかどうかがわかる。

 でも天井は落ちてこないし、俺は死んで試そうとも思わない。


 川瀬見さつきの不敵な笑いはどっちを意味しているのかわからない。

 だから俺はこのゲームに参加するからには勝つつもりでやらないといけないと思う。


 魔法は使えないから他の魔法少女に比べて圧倒的不利だけど、それでも頑張ろうと思う。


「さつきさん、俺頑張るよ」

 自分より年下にさん付けしてしまっている。

 それほどのオーラを彼女は放っているから仕方がないにせよ、俺不甲斐なし。

「お、乗り気になってくれたのね。健闘を祈るよ。あれ、関東を祈るだっけ。もういいや、知らない」


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