その2 冥王星について議論する
冥王星について、あなたはどれだけ知っていますか?
惑星、と答えた人はハズレです。しばらく前まで、太陽系の第九惑星でしたが、2006年8月、天文学上の定義が変わり、冥王星は、小惑星に格下げになりました。一応、小惑星でも別格の準惑星ですが、もはや惑星ではありません。今の分類は、冥王星型天体の代表です。
どうして、そうなったかと言うと、宇宙探査が進んだからです。
もともと、冥王星は他の惑星とは完全に異なる軌道を巡るため、出自が違う可能性が検討されてきた惑星です。海王星までの惑星は同じ太陽系の一員であるが、冥王星はどこかから迷い込み、太陽の重力に捕獲されたのではないか、とも言われています。
その後、技術や理論の発達により、さらに遠くの天体も観測できるようになり、冥王星よりさらに遠い場所で、太陽系に属するだろう天体が発見されたのです。このため、天文学会では、海王星までを太陽系とともに生まれた正式な惑星と考えるべきだという説が普及しました。日本では、新たに見つかった遠い天体を「太陽系外縁天体」(英語では「海王星以遠天体」(TNO:トランス・ネプチューン・オブジェクト)、または、エックワース・カイパー・ベルト天体(EKBO)と呼びますが、その中には、冥王星より大きいエリスがあり、これは惑星と呼ぶにはあまりに遠い軌道を巡っています。そこで、天文学会は惑星、小惑星、その他の天体の定義をし直したのです。
さて、作家になる三番目の方法として、「冥王星について議論する」ことを上げたのは、アメリカのホラー作家、H・P・ラヴクラフトの作家人生の転機がここにあるからです。
ラヴクラフトは若い頃から本に親しみ、科学に興味を持ちました。その結果、高校生の時から地元の新聞に科学記事を投稿するようになったのです。その中で、彼は、冥王星がまだ未発見だった頃に、さらなる外惑星があることを推測し、さらなる天文調査を提唱しました。
また、小説家になった後も、冥王星発見とほぼ同時に、『闇に囁く者』という、太陽系外縁にある暗黒の惑星ユゴスを拠点として、地球に侵略してくる菌類生物ミ=ゴの恐怖を描いた作品を発表しました。
ラヴクラフトの天文に向けた興味や好奇心は、彼のクリエイティビティやオリジナリティとなりました。作家になる人とは、このように何らかの対象に対する創作のエネルギーを持っているものです。それはこだわりと言い直してもいいでしょう。
小説を書き、作家となることは、そのエネルギーを不特定多数に向けた作品に凝縮することです。100のエネルギーがあって、初めて10の文章、1の文章が出来ます。
さあ、こだわりを持ちましょう。それが作家への道です。