あの子の思い(あの子視点)
始めはただの興味本位だった・・・
この人だって私の強さを見れば、恐れて離れていく・・・そう思った・・・
だから、何も出来ない空間を作った・・・何も聞けない、何も見えない・・・魔法も使えない・・・唯一、体内の魔力と感覚だけは残した、それは慈悲でも何でもなく、回復魔法を使わせて心が折れるまで闘わせる為と痛みによる恐怖を与える為だった・・・
だけど・・・私の思惑は外れた・・・初めの方は相手も驚いて動揺していたが、すぐに順応し対応できるようになっていった・・・どうやって?目も耳も魔法すら思い通りに使えないのにどうして?
そんな事を考えながら遠くから攻撃をする・・・例え、闇雲に攻撃しても500m先にいるここに攻撃が当たる訳が無く・・ただ、時間だけが過ぎていく・・・そうすると、あら不思議、相手の体力も無くなっていきます・・・
この空間で、私に勝つのは不可能・・・そう思っていたのが、油断だった・・・不意に相手が力を抜いた・・・?よく解らないが、そんな隙だらけなら思いっきり風穴を開けてやろうと腹の方に攻撃をする・・・急所は殺したいわけでもないし・・・外しておく・・・だが、私の攻撃が相手に貫いた瞬間・・・
そいつは私の方に向かってきた・・・何故?どうやって?感知魔法は使えないはず・・・そう思いながらも障壁を張る・・・破られた!!やばい!私は咄嗟に魔力で剣を作り弾く・・・はは・・・何これ・・・私・・・・こんな未来になるなんて想像がつかなかった・・・・・・
『・・・どうして・・解ったの・・・?』
私は思わず訪ねていた・・・
『魔法に・・貫かれた瞬間・・逆探知したんだよ・・・奇襲には結局失敗したけど・・・』
・・・それって、魔法に貫かれた瞬間のわずかな時間に逆探したって事・・・魔力を私以外は外に出せないはずだから魔力による逆探知は不可能・・・という事は貫かれた魔法の魔力だけでほとんど推測して、この位置を割り当てたって事?
『そう・・・思っていたよりやるようね・・・』
私はつい笑っていた・・・もっと、見てみたい、もっとこの人がどんな未来を作り出すのか見てみたい・・・って少しだけ思ってしまった・・・だから、私はこんな小細工をほどこした世界を壊し・・・・
実力で彼に負けを認めさせることにした・・・
それから、私は全力で攻撃をした・・・だけど、彼は全然諦めなかった・・・私はだんだん意地になっていた・・こんなの生きてきて初めてだ・・・感情なんてなかった自分、それなのに今は苛立ちと・・ほんの少しの期待がある・・・私は何度も殺す気で攻撃する・・・だけど、相手は死なない・・・
それを何度も繰り返す・・・死なない・・・死なない・・・死なない・・・・
「次は・・・」
「な・・・・あ・・・」
そんな中彼が話しかけて来た・・何だろうか?
「な・・ん・・・で・・・け・・・ちゃ・・・く・・・を・・・はあ・・つ・・・け・・な・・い」
決着?つけようとしているよ?だけど、貴方が強いから出来ないんじゃない・・・まあ、確かにやり方を考えなければやりようはあるんだけど、それじゃあ意味がないし・・・・そこまで考えてふと思う・・・
どうして・・・どうして『それじゃあ意味がない』って考えている?私が頭の中で疑問に思っていると・・・
「・・・た・・め・・・し・・がは・・て・・る・・・の・・・か?」
・・・・そう言われて気づく・・・ああ、私はこの人を試しているんだと・・・本当の意味でこの人が私を・・・・・・・・・
「な・・・に・・・を・・・・ため・・・して・・るんだ・・?それとも・・・・かく・・・に・・ん?」
それってどちらも同じ意味なのでは?そう思いながらも、確認か・・・攻撃をしないで話をしている内に気になる事を聞いてみよう
「・・・・・・・ねえ、何でそんなに頑張ってるの?何も変わらないのに?」
そうこの人はさっきから全然諦めないのだ・・どれだけ実力差があっても、どれだけ勝ち目がなくても絶対にあきらめないのだ・・・それが私には不思議だった・・・だって、未来は絶対に変わらないのだから・・・
「み・・ら・・・い・・・がきま・・・ってる?・・・誰が・・・言った?」
・・・ああ、この人は何も知らない・・・だからか・・・こんなに頑張れるのは・・・足掻くのは・・・だから私は教えてあげた・・・
「天智の書・・・・」
私のスキル・・世界というものを・・・
「て・・んち・・・の・・・書・・って・・何だ・・・?」
それは知らなくて当然よね・・・私しか持っていないし・・・だから、解りやすい、身近な人が持っているスキルを例に挙げる・・・
「・・・ジェニーが持っている知者の書のスキルの上位互換」
「ジェ・・・二ー・・・・が・・ス・・キ・・ル・・・・・持って・・・る・・・の・・・・初めて・・・聞いた・・・」
・・・話していなかったのね・・まあ、わざわざ言う事でもないか・・・
「・・・天智の書というのは簡単に言えば、何でも知る事が出来る、万能の書、この空間だって、天智の書で作った物」
だけど、私は喋る・・・この世界が・・・どれだけ未来が固定されているかを・・・・
「・・・だから、私は何もしようとも思えない・・・」
気付いたら、そう呟いていた・・・
「・・・だから、私は何もしようとも思えない・・・何かをしようとしても、すぐにその結果が解るし、何かしてもしなくても、そんなに未来は大きく変わらないのだから・・・」
ああ・・・そうだ・・・何も変わらない・・・何も変化しない・・・その運命はすべて決まっているのだから・・・
「未来・・・が・・変わら・・・ない?」
・・・ああ、やっぱりこれだけじゃあ、伝わらないか・・私は更に説明をする・・
「天智の書で見える未来は変わらない・・・例え天智の書で見た一つの世界線と違う動きをしても・・天智の書で見える他の膨大な数の別の未来に置き換わるだけだから・・・」
「・・・それは・・・未来が・・・変わったのでは・・?」
・・・ああ、世界線が変われば、未来が変わったという解釈か・・だけど・・・私は首を振る・・・
「ううん、結局の最終地点は一緒・・・」
そう、最後の結末は決まっている・・そう神によって・・・しかも、今回神の介入で戦争が起きた・・・恐らくそいつは・・
「最終・・・地点・・・?」
解っていない様だから、はっきりとした言葉にする・・・
「そう、この世界の終焉終わり・・・多分だけど・・今回の戦争負けたら、世界は滅びる・・・いや勝ってもかな・・・多分、神自身がこの世界を終らせる・・・」
「世界が・・・終わる・・・それって・・・・生きてる者は・・・」
「世界を消滅するって言ってもいいかもね・・・生きる者全てが居なくなると言うより、この世界と言う世界線が無くなる・・・だから、この世界に生きてる者はきれいさっぱり存在しなくなる・・・」
そう、あいつらにとって世界とは力を得る為の道具・・・本来なら魔族と人間同士を争い続けて力を溜める為に世界を作ったはずが、今回、完全に人間側に加担して魔族を滅ぼそうとしている・・・となれば・・・この世界を大規模戦争で力を集めて滅ぼすだろう・・・
争いが無くなる世界など、神はいらないのだから・・・
「それは・・・何故・・?何故・・・神は・・・そんな・・・事を・・」
「さあ、だけど、前にバイドとジェニーが神を召喚しているのが関係しているんじゃない?」
まあ、それ以外にも理由があるかも知れないけどね・・・この世界の魔王は人間と争いを極力減らしていたみたいだから・・・それでもこの世界線が選ばれたという事は神の召喚が関係しているのだろう・・・
それ以外の世界線ではまだ神の関与がされていないのだから・・・
「世界・・・が・・・滅びる・・のに・・・お前は・・・何も・・・しないのか・・・これだけの力があるのに・・・」
「?どうして何かしないといけないの?」
?何が言いたいのだろう?別に何かしないといけないわけでもないし・・・
「世界・・・が滅びたら・・・お前も・・死ぬんだぞ・・・」
「だから?」
「・・・え・・・っ・・・?」
「死んだから、何か変わるの?どっちにしても世界に興味が無いから、生きてても、死んでてもどうでも良い・・・」
?この人は何を驚いているのだろう?死んでも生きてても元々の形に帰るだけ・・・別にどちらでもいいじゃない?
「死ぬのは・・・・怖くないのか?」
「?何で怖いの?ただ元に戻るだけなのに・・・」
私がそう言うと、
「俺は・・・嫌だな・・・」
彼はそう言った・・・何が・・・?そう言おうとする前に彼は口を開いた・・・
「なあ・・・お前の・・・その・・天智の書・・・は・・・絶対なのか・・・・」
そう言われた・・・まあいっか・・・とにかく答えよう・・・答えたからと言って何か変わる訳が無いし・・・・
「天智の書は外部の世界の人に関わる出来事はうまく機能しない。・・・転移者・・つまりあなたにはあまり天智の書を機能することが出来ない・・・」
「・・・そうか・・・つまり・・・それは・・・俺が・・動けば・・天智の書・・に書かれている・・未来は変わる可能性があるって・・・事だよな・・・」
その言葉を発すると、体に魔力を纏わせ始めた・・・・・?
「?話を聞いてた?今回の戦争で人間側に手を貸しているのは神なのよ・・・今の私にすら勝てないのに・・どうやって・・・」
そう言った・・・今の私にすら勝てないのに・・・どうしてそんな事を言えるのか不思議でたまらなかった・・・
「じゃあ・・・お前に・・勝てば・・・可能性が・・あるって考えてもいいのか?」
そう彼ははっきり言った
「・・・・・・勝てるとでも・・・そんな状態で・・・」
いや、もう既に彼は見た目でもう既にたたえる状態では無かった・・服はほとんど破け・・あっちこっち血だらけになり・・魔力も闘気もほとんど残っていない状態・・・なのに・・・
「ああ、勝てるさ・・・」
そう、断言した・・・そうだったら、
「そう、じゃあ、始めましょうか・・・」
そう言うと私は100個の直系1mの火球を繰り出した・・・何とか出来るのならしてみなさい!!




