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六等星の夜/
跳躍せよ
新たな牙を持つものよ
そして
未だ失われぬ熱を生きるものよ
懐かしさに踊るな
確定されたものを懐かしむな
未だ形ならざるものをこそ
未だ来たらぬものをこそ
待つことなく追え
かつて
美しかった歌があり
翻り
眩しく蘇る黄色の落ち葉となり
あのころ妖しく踊った秋の陽は
暮れるほどにくり返した連曲
そして帰って来る
思い出とは常に乾くことのない溜息
しなやかに注がれる視線は銀閃する閃光
夜にこそ輝くもの
遠ざかれば遠ざかるほどに迫り
迫れば迫るほどに遠ざかる
憧れとは微かに異なる水平線が
高みへ登れば見上げる程に
波打ち際では目線へ下り
ついに掴み切れぬ白い肌となり
やがて波うつ黒髪となった
寂しさとは傷を負った瞳の光
そうして繰り返される奏でよ
六等星の明るさで灯れ
見るべきものにのみ
見える程の明るさで
わたしは知らない。過去のわたしを。そうしてその周辺を。しかし、過去のわたしは知る。過去に今であったわたしを。その隙間から蘇るように言葉が湧いてくる。