【詩】春のはて
あの、ぼうぜんとした
空の向こうがわの、
かすみの
白っぽいかなたにある、
春のはてよ。
おまえの望みはなんだ。
こんなにも
人びとを
狂乱せしめてしまって。
こんなにも
あわい夢を
まき散らしてしまって。
見よ。
あの萌える木の芽の
ざんこくさを。
はしゃぎまわっても
きのうの嘘は
きえはしないのに。
むず痒いような
しょうどうに
おどらされている。
耳を澄ませ。
あのクレーンアームの
鉄塊の、
あめに濡れる音を。
もしかしたらと
いうような、
きぼうの雨音が、
ぴちゃんぴちゃんと
きこえている。
錆びて土に混ざりたいと、
あめにたえながら
泣いている。
あるとき切り替わるのだ。
とつぜんの匂い。
しゅううの源は、
むじんぞうの涙を
海からくみあげる。
そのときまで、
やさしくぬるく
あいまいでぼうとした
このけはいの中で、
かき乱されて
疲れたものたちよ、
おちつきをとりもどせ。
さだかでない
境目をみるものよ、
こだわりをすてよ。
上をむいてわらう
人びとよ、
あしもとのいのちを嗤うな。
むしんにあくびする
獣たちよ、
おののきとみなぎる力を思い出せ。
目には見えないはてが
すすんでくる。
音のないおわりが
ちかづいてくる。
この春のはてに
向かって、
みなは、
おなじほうを
向いている。