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第8話 視聴者の声


仙田とマサが二人を連れて広場に戻ると、思いがけない客が待ち構えていた。


月の輪熊だ。


埋めずに放置していた死体をガツガツと食い荒らしている。


これには葵も果歩も、そしてマサも血の気が引いた。


だが、仙田だけは「あの野郎、ぶっ殺してやる」と怒り心頭だ。


「兄貴、やめて下せえ」


「どうしてだ?」


「熊に食ってもらった方が、証拠隠滅になるじゃないっすか」


「馬鹿野郎! あの男は行方不明ってことになってるんだ。熊の食べ残しが道端にでも落ちていたらどうするんだ!すぐに捜査が始まるぞ」


「ですが、熊はヤバいですって……あいつは月の輪ですが、9ミリ弾で殺すのは難しいですよ」


マサは心配そうに続けた。


「それに熊って生き物はしつこいんす……自分の餌だと思ったものはいつまでも追いかけてくるんすよ」


「じゃあ威嚇射撃だ、ほら」


すると仙田はバン!と引き金を引いた。その弾は熊に当たらなかったようだが、驚いた熊は茂みの向こうへ逃げていく。


それを見た仙田はニヤリと笑った。


「ほれ見ろ……熊も銃の音にはビビッて逃げ出したぜ」


仙田は得意気に笑ったが、他の三人は固唾を呑んだ。


なぜなら、熊は完全に逃げてはおらず、茂みの向こうからこちらをジッと伺っていたからだ。


静かに敵を見定める、黒い目。


その姿に、マサは冷や汗を流した。


「あの野郎、まだこっちを見てやがる……もう1発お見舞いしてやろうか?」


仙田が銃口を向けると、その熊はサッと茂みの中へと姿を消した。その様子を見ていたマサは、不安気な顔を仙田に向けた。


「兄貴……熊はヤバいんですから挑発するのはやめてくださいよ」


「びびってんのか、マサ」


「いえ、びびってませんって」


「それより、あの女どもに、死体の処理をさせろ。人出が足りねえ」


「へえ、わかりましたって、オイ! 待てコラ!」


熊に気を取られている隙に、果歩と葵は逃げていく。それを見たマサは大きな身体を揺らしながら追いかけた。


仙田はそれを遠目に眺めると、ペッと唾を吐き出した。そして懐から煙草を取り出して火をつけた。


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【同時視聴者数 6,341】

@trekker_joe:何か動いた?

@comutan_love:葵ちゃんのカメラ揺れてる

@nashi_gasuki:銃声聞こえた!

@yamaholic_k:熊に銃撃ってんの??

@aoi_fan_official:葵ちゃん逃げて!!

@guest_9921:隙に逃げろ逃げろ!

@guest_13204:マサが追ってきてる

@guest_44821:仙田とかいうやつ怖すぎる

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デブの男を倒した黒木は、果歩と葵を追って山道を走っていた。


すると、道端に割れたスマホを発見した。黒木には、それが果歩のものだとすぐにわかった。


黒木は思わずしゃがんでそれを手に取った。


「あの二人に何かあったのか……」


黒木は周囲を見渡した。


おそらく、果歩と葵はヤクザにつかまったに違いない。だが、奴らは彼女たちをどこへ連れて行ったのか……黒木の胸の中で、焦る気持ちが膨れ上がった。


相手はヤクザだ。早く助けないと、彼女たちの命はない。


登山口へ向かうか、広場へ戻るか。


黒木は悩んだ。


下山して組事務所へ連れて行かれる可能性は非常に高い。


もしそうだとすれば、今すぐ登山口まで戻らなければならない。なんとしてでも、彼らが出発する前に救い出さなければ手遅れとなってしまう。


だがもし、広場へ連れて行かれたなら、自分の墓穴を掘らされた後、そのまま殺されてしまうだろう。


とはいえ、このままここに留まっていては、どちらにせよ二人は死ぬことになる。黒木は頭を抱えた。


「ああ、どうすればいいんだ」


その時ふと、頭に装着していたヘッドマウントに指先が触れた。


「あ……」


黒木はヘッドマウントを頭から外して、カメラを自分の顔へ向けた。


「おい、みんな……教えてくれ……果歩たちはどこへ行ったんだ!頼む、助けに行きたいんだ」


黒木はそう言うと、自分のスマホを開いてコメント欄を覗き込んだ。


するとそこには、黒木への励ましの声と、果歩たちがどこへ向かったのか、情報がズラズラと書き連ねられていた。


黒木は一瞬、唇を引き結んだ。


「みんなありがとう」


黒木はそうカメラにつぶやくと、改めてヘッドマウントを頭に装着して、登山道を走り出した。


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【同時視聴者数 11,247】

@trekker_joe:黒木さんがコメ欄見てる!!

@comutan_love:森だ森!広場に連れてかれてる!

@nashi_gasuki:黒木さん聞こえてる?

@yamaholic_k:広場に戻れ!最初に死体があった場所だ!

@aoi_fan_official:黒木さん頼む助けてあげて!

@guest_9921:読んでくれてる、読んでくれてる!

@guest_13204:黒木さんありがとうって言ってくれた

@guest_44821:泣いてる、黒木さん泣いてる

@trekker_joe:早く行け!時間がない!

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