表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

第6話 血と泥の登山道


黒木は果歩とともに登山道を走った。


5分ほど走ると、黒木が叫んだ。


「あったぞ、あそこが森の入口だ」


黒木はそう言って足を踏み出した。その時、後ろにいた果歩が悲鳴をあげた。


「キャアアア!」


黒木が振り返ると、果歩に黒い泥だらけの何かが抱きついているのだ。黒木はその黒い影を凝視した。


「いやっ! 何?!」


果歩は身を縮めながら叫んだ。


「落ち着いて果歩!私よ!」


その声に驚いた果歩は顔を上げた。良く見ると、泥だらけだが真っ赤な葵のウェアだ。


「葵?」


彼女は申し訳なさそうに果歩を見た。


「寄りかかってごめん、私怪我してるの……あんたたち、無事だったのね?!」


「葵こそ、大丈夫なの?」


葵は顔面蒼白で、息も絶え絶えだった。


「慎が死んだよ!」


それを聞いた果歩は、全身から力が抜けたようにしゃがみ込んだ。


「嘘……」


果歩が信じられない様子で葵を見つめると、葵はただ泣き崩れた。


その背後から、パキパキと枝を踏み折る音が迫ってきた。


葵は振り返って怯えた様子で森を見た。


「早く逃げなきゃ……アイツらが追って来てる……」


「あのヤクザたちね?」


葵は震えながら頷いた。


男の怒号。


それを聞いた黒木が果歩たちの前へ出た。


現れたのは、血走った目の男だった。


身長は2メートル。かなり太っている。目は細く、薄い唇をしていた。団子鼻を広げながら荒く息を吐いていて、手には短刀を握っていた。


「果歩!葵を連れて先に行け!」


「でも!」


「何度も言わせるな……」


それを聞いた葵は、果歩の肩に手を置いた。


「果歩……行くよ」


果歩は葵を見つめた。その顔は少し切なそうだった。


果歩と葵は立ち上がると、そのまま登山道を走り出した。


太った男はチラリとそれを見ると、黒木に視線を戻した。そしてニヤリと笑った。


「お前が相手してくれんのか?」


黒木は男の言葉は無視して、拳を胸の前で構えた。男は枝を踏み折りながら登山道まで出てきた。そして、手に持っている短刀を振りながら、黒木へしゃべりかけてくる。


「お前一人で、クロとカズをやったのか?」


「クズだかカスだか知らないが、アイツらは死んだ。お前もそうなる」


「ハハハ!」


男は黒木を睨んだ。


「腕に覚えがあるようだな。だが、俺はあの二人のようにはいかないぜ!」


男は手に持っていた短刀を、黒木に向かって投げた。その短刀は鋭く飛んだが、黒木は大きく斜め後ろに飛び上がってそれを躱す。


そこへ男が突っ込んで来た。デブのくせに動きが早い。


「うおおっ!」


黒木は身構えたが、猛烈な突き押しに吹き飛ばされる。数メートルは飛ばされただろうか。黒木は危うく倒れそうになったが、なんとか踏ん張った。


「オオッ!」


体勢を立て直す間もないうち次の突進が来た。また黒木は吹き飛ばされた。今度は背中から地面に落ちた。避ける間もなく男が上から乗ってきた。


フライングボディアタックだ。


黒木は大声で呻いた。


「ぐはあ!」


失敗を恐れて低い位置からの飛び降りだったが、なにせ2メートルもあるデブが降って来たのだ。簡単にいうと、大型の冷蔵庫が落ちてきたようなものだった。


黒木は苦痛に顔を歪めた。


「うぐぐっ!」


黒木は体をひねって動かそうとしたが、重すぎて動かない。そんな黒木の姿を見て、男はニヤリと笑った。


「俺は元力士なんだ。短刀で戦うより、素手喧嘩ステゴロの方が得意なんだよ」


男はそう言うと、馬乗りになって黒木を殴り始めた。だが、全力ではない。甚振るようにそこそこ痛い力で殴ってくる。


黒木は始め、腕で防御しながら耐えていたが、両腕をするりと伸ばして男の両耳を塞ぐようにパンと叩いた。すると驚いたことに、男の目尻と鼻からピュッと血が吹いたのだ。


「うわっ! 何が起きた!」


男が顔を顰めながら黒木の腕を振り払う。しかし、黒木はもう一度、男の耳へ右手を伸ばした。そして、耳の軟骨から捻じるように摘まむと、引きちぎらんばかりに引っ張った。


「ぎゃああっ!」


男は悲鳴を上げながら身を捩った。黒木はそのタイミングで体を傾け、横に転がすように男を投げ転がした。


アザラシのような体がゴロリと転がった。


その瞬間、黒木は道端にあったぬかるみに手を突っ込んで泥を掴み取ると、その塊を男の鼻へベットリと貼り付けた。


「グハアッ!」


男が藻掻きながら呼吸しようと口を開ける。黒木はその口へも泥を塗り込む。


「オエエッ!オオッ!」


口から泥を吐き出した男が顔を上げると、そこには短刀を持った黒木が立っていた。

黒木は短刀を逆手に握っていて、刃は上腕に隠れて見えない。


男は黒木に突進した。


「野郎!」


男が張り手を突き出すと、黒木はクルリと回転しながらそれを躱し、そのまま男の懐に入ると、回転の勢いのまま後頭部へ短刀を突き刺す。


「ぎゃああっ!」


男は苦痛に顔を歪ませ、そのまま黒木の腕を掴んだ。そして強烈な握力で握りしめてくる。


「ぐぐぐぐ……」


黒木と男は歯を食いしばりながら睨み合った。黒木の握る短刀に力が入る。男は細い目を般若のように大きくしながら、そのまま地面へ倒れた。


黒木は男が握っていた腕を見た。


そこは、指の形に青く内出血していた。


-------------------------------------------------------------

【同時視聴者数 2,134】

@trekker_joe:カメラ揺れすぎて何も見えん

@comutan_love:葵ちゃんと果歩ちゃんは逃げた?

@nashi_gasuki:でかいやつが来た

@yamaholic_k:黒木さん吹き飛ばされてる!

@aoi_fan_official:やばいやばいやばい

@guest_9921:なんだあいつ、でか!

@guest_13204:黒木さん立ち上がれ!

@guest_44821:カメラが地面向いてる、生きてるか?

-------------------------------------------------------------



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ