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第2話 荒れるコメ欄


その後、四人は森の中へと入って行った。


登山道から逸れた直後は急な下りがあったものの、すぐに傾斜は緩やかになった。


「なるほど、今はここね? なんとなくわかって来たわ」


果歩が嬉しそうに笑うと、黒木が地図を覗き込んで来る。


「そうだ。この等高線の狭いあたりが、さっきの急な下りだ。そこから今、このなだらかな場所に下りて来ている」


「じゃあ登山道は、少し高い位置でこの平地の右側をぐるりと取り囲むように通っているのね?」


「そういうことになるな」


「じゃあ、このゴツゴツした印は何?」


「それは岩場だ」


「所々にあるよね」


「その周辺だけ等高線が密になっているだろう。おそらく難所がある」


すると果歩は黒木の顔を見て、へへへと笑った。


「少しは地図を読めるようになってる?」


すると黒木はフフンと笑った。


「まだまだだな」


「あーっ」


果歩は頬っぺたを膨らませた。


「そこは褒めるところでしょ」


果歩は笑った。


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【同時視聴者数 83】

@comutan_love:果歩ちゃんかわいいw

@trekker_joe:地図読みできるようになってるじゃん

@yamaholic_k:黒木さんちょっと笑ったw

@aoi_fan_official:これ二人いい感じじゃない?

@nashi_gasuki:葵ちゃんは??

@guest_134:黒木さん不器用な褒め方するな


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「ちょっとなんだか生臭くない?」


葵が鼻をスンスン言わせる。


「そんなの気のせいだって」


慎がそう言って笑うと、葵はグーで優しく殴ってくる。


「オメ―は花粉症だろうが」


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【同時視聴者数 89】

@comutan_love:おならじゃないの

@trekker_joe:花粉症草ww

@yamaholic_k:慎さん殴られてて草

@aoi_fan_official:葵ちゃん容赦なさすぎw

@nashi_gasuki:でも確かになんか雰囲気変わった?

@guest_134:黒木さんの顔こわ

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目の前に岩場が現れた。


それを見た葵は地図を睨みつける。すぐに慎が寄って来て、一緒に地図を覗き込む。


「ちょっと、岩場じゃない」


「どうする? 迂回するか?」


すると葵は少し考えた後、撮り棒からカメラを外して黒木に渡した。


「ちょっと黒木くん、これ頭につけて」


「は?」


「ヘッドマウントのバンドがあるから。ほら、つけて」


「俺が?」


「私の後ろを歩いて欲しいのよ。そうすれば私が映るから。自撮り棒じゃもう無理だわ、この道」


黒木は無言で、葵に言われるがままヘッドマウントを装着した。


果歩は思わず吹き出しそうになった。


あの無愛想な黒木くんが、頭にカメラをつけて葵の後ろを歩かされている。


「いい? 私の次に来てね。離れないで」


「……わかった」


「あと喋って。無言だと視聴者が不安になるから」


「……今日は頑張って喋っている方だが……」


それを聞いた葵は、黒木にウインクを飛ばした。


そして、岩に括り付けられていたロープを使って、ゆっくりと岩場を降りて行く。


黒木は葵のその後を、うまく撮影しながらついていく。身のこなしが完璧だ。それを見た慎が唸った。


「意外と撮影が上手いな……あの状況で、ちゃんと葵を写してるよ」


黒木にとっては、この程度の岩場など何の問題もないようだった。


皆が岩場の下まで降りてくると、黒木は地図を指差しながら言った。


「帰る時は、この岩場を迂回した方がいいな。その方がなだらかだぞ」


黒木がそう言うと、葵はニコリとした。


「なんか地図読みらしくなってきたじゃん」


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【同時視聴者数 92】

@comutan_love:黒木さん撮影うまくない?

@trekker_joe:カメラワークちゃんとしてるw

@yamaholic_k:黒木さん何者なの

@aoi_fan_official:葵ちゃんと黒木さん意外と合うw

@nashi_gasuki:臭いって何?

@guest_134:獣でも死んでんじゃないの


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「岩場を降りると、さらに臭くなったわね」


葵が鼻を摘みながら、顔の前で手を振る。


「確かに臭いわね……動物の死骸でもあるのかしら?」


果歩は眉をしかめながら葵と顔を見合わせた。


「なんだか向こうの方から匂うわね?」


果歩と葵が様子を見に行こうとすると、慎が止めた。


「やめとけ、熊でもいたらどうするんだ」


すると葵はケラケラと笑った。


「こういうアクシデントがあるからライブ配信は面白いんじゃない。ちょっと覗いてみて……面白そうだったらカメラを呼ぶわ。グロかったら、すぐに引き返せばいいだけじゃない」


果歩が葵についていこうとしたその時、黒木が果歩の腕を掴んだ。


黒木はサングラスを外すと、小さな声で果歩に言った。


「果歩……逃げろ」


「え?何?」


果歩は理解できなかった。


だが、身長の高い黒木の頭に取り付けられたカメラには、木々の向こうで穴を掘る男の姿がはっきりと映っていた。


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【同時視聴者数 91】

@trekker_joe:え、なんか変じゃない

@nashi_gasuki:穴掘ってる?

@comutan_love:葵ちゃん止まって

@yamaholic_k:なんか嫌な予感する

@aoi_fan_official:ねえこれ大丈夫??

@guest_9921:あれ人じゃない??

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葵は黒木と果歩のやりとりを聞いていないようだった。


「ちょっと何なの? そっから何か見えた?」


葵はそのまま奥へ歩き出した。


木々の間から、低い、くぐもった男の声が聞こえる。


慎が葵の腕を掴んだ。だが葵は慎の腕を振り解いて、そのまま声のする方へ数歩進んだ。


木の幹の向こうにある広場に、男が五人いた。


三人はスコップを持って穴を掘っている。残りの二人は煙草を吸いながら、地面に転がっている何かを見下ろしていた。


地面に転がっているのは——人だった。


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【同時視聴者数 94】

@comutan_love:葵ちゃん行かないで

@trekker_joe:慎さん止めて!!

@yamaholic_k:黒木さんの顔マジで怖い

@aoi_fan_official:果歩ちゃん大丈夫?

@nashi_gasuki:何見えてんの?人形?

@guest_9921:これ配信止めた方がいいやつ

@guest_441:葵ちゃん頼むから戻って!

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