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その伯爵令嬢、〝替え玉〟につき ~替え玉のわたし(妹)が侯爵に溺愛されるなんてあり得ません  作者: とんこつ毬藻
<Ⅱ.南の領主編~Scene Southolive>

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第50話 その伯爵令嬢、貴婦人達の戦いを目の当たりにする

「それでは、皆さん揃いましたので始めましょう。ルモーリアの繁栄と我々の華々しい未来を祈念して、乾杯」

「「「乾杯」」」


 パール婦人主催のルモーリア貴婦人会がいよいよ始まった。今回、姉ローズが匿われている東の果て(イースター)修道院のあるグレイシャル領を統治するグレイシャル公爵の夫人――アリアナ・グレイシャル公爵夫人とリディア公爵令嬢は急用のため、欠席。今回の出席者は貴婦人六名に、令嬢枠がわたしを含んだ二名の計八名となる。あくまでわたしは出席者の一人であり、主役でもなんでもない。だから、ただこの場をやり過ごせばいい。そう、あくまで冷静に。


「今回初参加の子もおりますから、改めて自己紹介をしましょうか? はい、久しぶりの参加のチェリーから!」


 これはきっと、わたしの事を言っているんだわ。パール婦人の気遣いがありがたい。パール婦人の声掛けに、婦人から一番遠い席に座っているご婦人が立ち上がる。髪色と同じカラメル色の衣装(ドレス)を纏い、すっごく包容力と貫禄がある御姿で細い目を更に細くして微笑む女性。


「プレミア・カスタード辺境伯の妻、チェリー・カスタードです。北東の辺境伯領でプリン温泉を経営しています。社交界シーズンが終わったら、是非湯治にいらしてね。そして……」

「辺境伯令嬢、ポポロンと申します。今回初参加です。よろしくお願いしますですわ」


 うわぁー。チェリーご夫人の横に座っていたポポロン。凄く可愛らしい子だ。ご夫人と同じカラメル色の髪はツインテール。髪色と同じ真ん丸の双眸(ひとみ)に、プリンセスドレスもフリフリしていて、まるで菓子の国のお姫様みたい。 

 

「モーリア公爵家侍女頭。ゼファーです。以後、お見知りおきを」


 チェリー夫人の向かいに座る人物が、ネンネが気をつけてと話していたゼファー伯爵夫人。短髪黒髪に燕尾服。男装のご麗人は、見た目若い執事さんみたい。えっと確か、現国王の弟さんがモーリア公爵だった筈。ネンネとのお勉強を思い出しつつ、一人一人の顔を覚えていこうとするわたし。


 続いてロジータお姉さまが自己紹介をし、継母キャサリーナとわたしの出番。一切こちらへ視線を寄越さない継母だったが、彼女が立ち上がると同時にわたしも立ち上がる。そう、今はグランディア侯爵家へ婚約者として住まわせて貰っているが、この場ではあくまでゴルドー家の伯爵令嬢として参加している以上、継母キャサリーナとわたしがセットとなる。


「ゴルドー伯爵の妻、キャサリーナ・ゴルドーです。今回は初めて愛する娘を連れて参りました。さ、ローズ。自己紹介なさい」

「ゴルドー家長女。ローズ・ゴルドーにございますわ。貴婦人会という素晴らしい場へ呼んでいただき、余りある光栄です。以後、よろしくお願い致します」

 

 継母の見事のカーテシーに続いてわたしもカーテシーを披露する。この場は何事もなく、席へ座る事が出来た。この後、氷の女王、アルバ・ノースフィーネ侯爵夫人が自己紹介を終え、全員自己紹介を終えたところで歓談の時間となる。皆が、自領のことや近況報告を交えていたところで、隣に座っていた継母がパール婦人へ話題を振る。


「それにしてもパール婦人、いつもながらこの薔薇のタルト。華やかな気品と仄かな甘さを添えていて美味ですわね」


 普段、他人を褒める事をしない継母が、パール婦人の作ったタルトを褒めている。この後、嵐が来ないか不安だ。


「あらー、キャサリーナ。毎回お上手だこと。ありがとう」


 パール婦人も褒められて嬉しそう。みんな口々に美味しいと言いながら、タルトを口に運んでいる。わたしも少しだけタルトを口に含む。あくまで少しだけなのは、継母の前で違う世界(・・・・)へ旅立ってしまうと大変だから。口元で薔薇の妖精さんがお辞儀してくれたので微笑み返す事だけしておいた。ごめんね、薔薇の妖精さん。一緒に踊るのは今度にしておくわ。


「今回のメインは薔薇のタルトではありませんのよ。ね、ローズさん」

「え!? あ、はい! ローズ・ゴルドーですわ」


 不意にパール婦人から声を掛けられたものだから、思わず立ち上がって自己紹介をしてしまった。しまった! 薔薇の妖精と会話している場合じゃなかった! ロジータが紅茶を噴き出しそうになり、継母とその後ろに控える侍女アリーに扮した本物の姉(・・・・)からの視線が痛い。


「何です? 突然。あなた、ローズ・ゴルドーとさっき名乗ったばかりでしょう?」

「す、すいません」

 

 ちょうどわたしのテーブル挟んで向かいに座っていたアルバ・ノースフィーネ侯爵夫人が氷よりも冷たい眼差しをこちらへ向けて来た。それだけで紅茶で温まった身体が凍ってしまいそう。


「アルバ。うちの愛娘が自身の名を名乗っただけ。貴女の言葉を借りるとすれば、取るに足らない事ではなくて?」 

「わたくしは、神聖な茶会の場を乱して欲しくないだけです。キャサリーナ。あなたこそ、先程の発言。パール婦人の菓子が美味だのと、当たり前の事で媚を売ろうなど、浅知恵が見え見えですわよ」

「媚を売る? ワタクシが? はっ。そんな事は一切無用です。何せパール婦人とも親交が深い、グランディア侯爵家嫡男、ソルファ卿(・・・・・)と愛娘ローズの婚約が決まったのですから」

「そうでしたわね。それはおめでとう、ローズご令嬢」


 継母キャサリーナ……ではなく、アルバ・ノースフィーネ侯爵夫人がわたしの名前を呼んでおめでとうと言われたため、あくまで冷静にゆっくり立ち上がり、周りを見渡してから恭しく一礼するわたし。


「既にご存知の方もいらっしゃるかもですが、わたくしは現在グランディア侯爵家にてソルファ卿の婚約者として生活を始めているのですわ。この場を借りてご報告させていただきますわ」

「それはおめでたい事ですね。キャサリーナ様。ローズ令嬢。おめでとうございます」

「おめでとうございますキャサリーナ様。おめでとうさね、ローズ」

「おめでとうございます。キャサリーナ・ゴルドー様」

「取るに足らない事ですわ」 


 パール婦人が紹介してくれた事で、わたしと継母へ概ね祝辞の言葉が投げかけられる。こうやっておめでとうって言われる機会も早々ないので、少し嬉しい気持ちで心が温まる。わたしが声を掛けてくれた貴婦人の皆さまへ会釈しつつ席へ座ったタイミング、次に末席から聞こえたその言葉に、再び茶会の席に風が吹いた。


『――王子派の娘が王女派に嫁ぐ……? どういう風の吹き回しだ』


 皆の祝いの言葉に紛れ、独白ようにも取れる言葉が遠くから確かに聞こえた。声がした方向、パール婦人から一番遠くの席に座っているのは……王家の血筋であるモーリア公爵家の侍女頭を務めるゼファー伯爵婦人だ。


「今、発言したのは誰? ゼファー! あなたですの?」


 当然反応したのは隣に座る継母キャサリーナ。が、ゼファー伯爵婦人も負けじと反論する。 


「お言葉ですが、ゴルドー様。幻聴でも聞こえたのではないですか?」 

「ゼファー、あなた。この場はパール婦人の御席ですよ?」


 一触即発。自分の事を心配している場合ではなかった。お家同士の派閥や権力争い。この場には少なくともキャサリーナだけでなく、ルモーリア王国での地位と威厳を保つため、パール婦人主催のお茶会へ出席している者も居るという事を身を持って体感したわたし。駄目だ。此処は目立たず穏便に過ごすしかない。


「はいはい。皆さん、この場は楽しんで参りますわよ? そうそう、婚約の件もあって、ローズさんにはソルファ卿と早くにサウスオリーブ領へ来ていただいたましたの。そして、今回メインとなるお菓子作りを手伝っていただいたのよ?」


 パール婦人が手を叩いて、サウスオリーブ家の侍女さんがわたしが一緒に作ったストロベリーパイを持って来た。既に人数分切り分けてあって、食卓へわたしの作ったストロベリーパイが並んでいく。紅茶もカップごと、ストロベリーパイに合う紅茶へと取り換えられていく。あれ? 一部のご婦人達からの視線が何だか冷たくないですか?


「今日は特別な席ですの。さぁ、ワタクシの愛娘が腕を振るい、皆様のためにパイ作りを手伝ったんですのよ? さぁ、お召し上がりになって」


 一瞬睥睨するような視線をこちらへ向けた継母キャサリーナだったが、すぐに両手を叩いて貴婦人達へ微笑み返した。


『――ちっ、あれほど媚を売るなと言っていたものを』

『――パール婦人の御前とは言え、伯爵家の令嬢が振るった料理を侯爵夫人が食せと。滑稽なことですわね』 


 え? 待って待って! チェリー夫人とポポロンさん、ロジータお姉さま以外、目が笑ってないんですけどぉ~~。


お菓子作りを手伝っただけなのに……。一触即発の貴婦人会。いよいよ次話。ストロベリーパイ、実食です。


秋田書店さんの漫画サイト「ヤンチャンWeb」にて本作コミカライズ現在第4話まで連載中です。

(https://youngchampion.jp/series/8d7553662f68e ←コピペしてね)

第1話①~③と最新話は無料で、待てば無料のチケットで読める話も沢山なので、是非覗いてみてくださいね。

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