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その伯爵令嬢、〝替え玉〟につき ~替え玉のわたし(妹)が侯爵に溺愛されるなんてあり得ません  作者: とんこつ毬藻
<Ⅱ.南の領主編~Scene Southolive>

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第41話 その悪役令嬢、南の領地へ降り立つ

南の領地、アリーシェとソルファ様がゴンドラデートをしていた少し前。遠く、東の果ての修道院からも一台の馬車が移動を開始していたようで。

「はぁ? 一週間かけて移動!? そんなのありえませんわ!」


 ただでさえ揺れる馬車の中、専属侍女の説明にわたくしは叫声をあげたのです。

 耐えて耐えて耐え抜いた修道院での生活から一ヶ月。ようやくあの地味で質素な修道院を抜け出せると思ったらこの仕打ち。叫んで当然ですわよね。


「申し訳ございません。ローズ様、此処東の果ての(イースター)修道院は国の東側。サウスオリーブへ向かうには中央のモーリア領を経由せずともグレイシャル領南端から向かう事は出来るのですが、まだ街道があまり整備されておらず、中央のモーリア領経由で南へ向かった方が安全でし……」

「そこまで丁寧に説明しなくとも分かるわよ! わたくしを誰だとお思い!?」


 はぁ、キャサリンは相変わらず慌てているわね。隣で冷静に外の景色を眺めているブルーノを見習って欲しいわ。


「モーリア領、サウスオリーブと、道中豪華な宿を予約しております。母君キャサリーナ様とはサウスオリーブ領のマリーナリゾートで合流する予定です。ローズ様のスタイルを存分にアピール出来る水着でも新調致しましょう」

「ふふふ。分かってるじゃないのブルーノ。じゃあリゾートの男でも捕まえて余暇(バカンス)を満喫するしかありませんわね」

「そう仰ると思いまして、コレを準備しました」 


 何やら鞄からブルーノが何かを取り出した。その取り出したものを見たわたくしは、一瞬その場に凍り付いたのですわ。


「は? まさかわたくしに……そのかつらをしろって言うんですの?」


 よりによってどうしてそのかつらをと叫ぼうとすると、ブルーノが補足説明を始めましたわ。


「キャサリーナ様からの伝言です。サウスオリーブ領へ入ったら、侍女服とこのかつらを身に着け、翠雪山草(エメラルドエーデル)の花弁から創った目薬で双眸(ひとみ)の色を蒼色(アクアマリン)から淡緑色(エメラルド)へと変えておくように、と」

「お茶会へ出席されるご婦人方は七名。ご令嬢三名。その中にアリーシェ様演じるローズ様も含まれますが、マリーナリゾートは観光地故、いつ誰に目撃されるか分かりません。領地にローズ様が二人(・・)居てはそれこそこれまでの替え玉計画が水の泡となります故」


「ちょっと待ちなさい! 百歩譲ってそのかつらを被るとして、わたくしのこの金色に輝く自慢の髪はどうなりますの?」

「そうですね。いっその事短く致しましょうか?」

「そんなのありえませんわーーー」


 わたくの声と共鳴するかのように馬車が激しく揺れましたわ。もう、この道の凸凹なんとかなりませんのー!?



 結果的にわたくしの命である髪を切るという最悪の事態は免れる事となりましたわ。


 一日目の宿で、キャサリンが長い髪を髪飾りとピンを駆使してまるで短髪のように見せる技を披露したのですわ。普段どん臭いキャサリンを褒める事はほぼしないわたくしですが、今回は珍しく褒めて差し上げましたわ。そして、ブルーノが金髪を銀色に染めるためのまるで魔法のような染料を調達。なんとか事なきを得ましたのよ。


 一日目の宿泊地――東の果て修道院のあるグレイシャル領の都市グレイシャル。石造りの整然された街並みはルモーリア王国の中で、モーリア城下町の次に大きな都市と言われるだけあって中々風情がありましたわね。グレイ(ポーク)を油で揚げて香辛料をまぶした料理は中々新鮮でしたわね。この香辛料は隣国でしか取れない貴重なものなんですのよ? お母様なら今すぐ買って来なさいと専属執事セバスへ指示を出していたでしょうね。


 え? わたくし? わたくしは勿論、香辛料よりも宝石。お土産にわたくしのへそくりで蒼宝石(アクアマリン)のネックレスを一つ購入しておきましたのよ。食べると消えて無くなるものよりも、形に残るものがいいでしょう? 

 

 二日目の宿はモーリア領とグレイシャル領間の宿場町。ようやく東の領地を後にしたわたくしは、三日目にしてモーリア領ゴルドー家へ一旦帰宅したのですわ。わたくしを出迎えたアゴ髭が感動の再会だとか言っていましたが……まぁ、その話はどうでもいいですわね。


 そこから更に二日間の移動を経て、ようやく辿り着いた南の領地サウスオリーブ領マリーナリゾートへ。一年中温暖な気候に恵まれていて、水着の観光客が各地からやって来るのですわ。ホスピスと呼ばれる海外沿いの宿泊地。流石、あのドレスのデザイナーでも有名な南のサウスオリーブ公爵様がデザインされた宿泊施設ですわね。滞在する部屋へと入室したわたくし達はすぐに変装の準備をしましたの。暫く自慢の金髪とお別れするのは残念でなりませんが、そもそもわたくしが狙うはイケメンの貴族。この際、嫌いな妹の姿へ変装しているなんて関係ありませんわね。髪色と双眸(ひとみ)の色は妹の姿(アリーシェ)でも、わたくし自慢のプロポーションは隠しきれませんもの。


「どう? 似合う?」

「素敵でございます、ローズ様」

「ローズ様、髪は天然植物由来の染料をベースに銀鉱石の粉を混ぜ、素材の美しさを活かしつつアリーシェ様よりも星空のように輝くシルバーブロンドへと仕上げました。変装も水着姿も完璧です」


 時間をかけて準備した甲斐がありましたわね。これで心置きなくリゾートを楽しむ事が出来ますわね。


「さぁ、今日はこの水着(ビキニ)姿でリゾートを満喫するわよ? キャサリン、ブルーノ、一緒に来なさい」

「え? ですが、この後キャサリーナ様と合流の予定が……」

「何を言っているのキャサリン? お母様もきっとバカンスを満喫しているに違いありませんわ。ですからわたくしも貴族のイケメンを捕まえてそこから夢のようなひと時を過ごし……ん? どうしたのキャサリン? 表情が固まっているわよ?」


 何故か青褪めたような表情のキャサリン。そう、震えるほど変装をしてもわたくしの姿が美しいという事ですのね。さっきまでわたくしの傍に居たブルーノの姿が消えているわね。隣の寝室でバカンスの仕度でもしているのかしら?


「ロロロ……ローズ様、うしろ……うしろ……?」

「え? うしろがどうかしたの?」


 扉を開ける音もしませんでしたし、気配も無く近づくなんて、密偵のやる仕事ですのよ。わたくしはこの時、わたくし達が滞在するホテルの部屋へと入室し、わたくしの後ろに立つその人物に全く気づいていませんでしたのよ?


「何だかとても楽しそうですわね? 侍女のアリー(・・・)ちゃん」

「は? わたくしはゴルドー伯爵家長女、ローズ・ゴルドーですわ。一体誰と勘違いして……え?」


 いつものゴージャスな扇子を片手に水着ではなく少し肌の露出を見せたドレスに身を包んだ女性が、腕を組んだままこちらへ微笑んで……いや……口では笑っていますが、こめかみに浮き出た血管と口元の震え、全身から溢れるどす黒いオーラが漏れ出ていますわよ……。これでは……御伽話に出て来る魔女ですわーーー。


アリー(・・・)! サウスオリーブ領へ入ったらあれほど目立つなと言っていたのに、バカンスでイケメンを捕まえるですって!? ワタクシの大切な長女。ローズ・ゴルドーは今、グランディア侯爵家、ソルファ・グランディアの婚約者としてサウスオリーブ領に居るのですよ? サウスオリーブ公爵の母君。ルモーリア貴婦人会・副会長のパール婦人は顔が広い方。万一、お茶会へ参加する貴婦人と遭遇したらどうするの? この地でのあなたはあくまで侍女アリーです。アリー、分かって?」

「は、はい……お母さ……」

「お母様ではありません! ご主人様(・・・・)です! はい」

「はい……ご主人様(・・・・)


 こうしてわたくしの『南国リゾートでイケメンを捕まえますわよ大作戦』は……波に呑まれた砂山のように一瞬にして崩れ落ちたのです。


 侍女として叫ぶ事すら禁じられたわたくしは、心の中で盛大に叫んだのですわ。


 そんなのありえませんわーーー!


いよいよローズ(本物)、南の領地へ到着。母キャサリーナとも合流し、アリーシェとの再会も近づいて来ましたね。侍女姿のローズは侍女アリーに変装。その姿は妹アリーシェのようにも見える姿のようで……。


(先週更新出来てませんでしたので、年末もう1話更新致します。ここまで追いかけていただきありがとうございます。ヤンチャンWebのコミカライズも是非よろしくお願いします)

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