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その伯爵令嬢、〝替え玉〟につき ~替え玉のわたし(妹)が侯爵に溺愛されるなんてあり得ません  作者: とんこつ毬藻
<Ⅱ.南の領主編~Scene Southolive>

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第39話 その英雄、犯人の手掛かりに辿り着く

 せっかくなので、スミスさんとネンネには暫く魔法使いのお爺さんと町娘のままで居てもらう事にした。

 

「似合っているわよ、ネンネ。普段侍女の格好しか見ないから新鮮ね」

「そうお嬢様にまじまじ見られると恥ずかしいのでやめてください」


「スミスも御伽話の魔法使いみたく、火でも放ちそうな勢いだな」

「いやはや坊ちゃんにバレてしまうとは某もまだまだですわい」


 昔読んだ子供向けの御伽話の本で、神話出て来るようなドラゴンが街に現れて、町娘を魔法使いのお爺さんが助けるシーンがあったんだけど、それを思い出した。ドラゴンの炎をお爺さんが魔法で防御した後、しんたいきょうか? とか言う魔法で筋肉ムキムキになって自身の肉体を露わにした後、そのままドラゴンの尻尾を掴んで投げ飛ばしていたんだよね。ムキムキになったスミスさんがドラゴンを投げ飛ばすシーンを想像して、思わず吹き出してしまうわたし。


「どうした、ローズ嬢?」

「いえ、なんでもありませんわ」


「ならいいが。まぁ、何事もなくてよかった。ブティックで買い物をするつもりだったが……あの様子じゃあ暫くは無理そうだな」

「ええ、そうですわね」


 サウスオリーブ公爵のブティック。現場は騒然となっており、とてもじゃないけれどお買い物が出来る状況ではなかったため、わたし達はそっとその場を後にする事にした。ブティックや他の観光地巡りはまた後日改めてという事に。盗賊団の調査や現場検証は、警備の人や紛れ込んでいるジウさん、騎士団の人達にお任せし、わたしとソルファ様、スミスとネンネは一路公爵家へ。あ、スミスさんとネンネは馬車の中で着替えて、元の執事・侍女コンビに戻りました。パール婦人に二人の姿をお見せしたかった気もしたけれど仕方ない。


 帰路につく馬車の中でわたしの事を心配してくれたのか、ソルファ様が声を掛けてくれた。


「ローズ嬢、さっきは怖くなかったか?」

「いえ、あっという間の出来事でしたし、わたくしは全然大丈夫です」


 怖くなかったと言えば嘘になるかもしれないけれど、泥棒と気づいた時にはスミスさんが犯人を投げ飛ばしていたし、ソルファ様とのデートのドキドキでわたしの心はそれどころじゃなかったしで。それに……。


「ソルファ様と一緒に居ると、なんだか安心するんです」

「そうか。そうだな、オレの傍に居る限り、オレが必ずローズ嬢を守ると誓おう」

「あ、ありがとうございます……ですわ」


 胸に手を当てて騎士の誓いを立てるソルファ様。それだけで心がぽかぽかして安心出来る。凄いなぁ、ソルファ様って。


「坊ちゃま、公爵家が見えて参りました」


 自身のブティックが襲われたという事は、きっとサウスオリーブ公爵も既に事態を把握している事だろう。ソルファ様も今日仕入れた情報を基に今後の作戦を立てるつもりみたい。

 

 サウスオリーブ公爵はどうやら入れ違いでブティックの現場検証に同席しているみたいで、侍女さん達が出迎えてくれたんだけど……。公爵家入口の方からクルクル巻いた髪を揺らしながら駆けて来る女性の姿があり……。


「ローズさん! よかったわぁ~~ご無事だったのねぇ~。息子のブティックが襲われたって聞いて! 心配したのよぉ~何事もなくて本当によかったわぁ~」

「え!? あ、ありがとうございます」


 パール婦人に突然ぎゅーーっと抱き締められてびっくりなわたし。香水だろうか? ご婦人の髪や(うなじ)あたりからお花のいい香りが流れて来る。ブティックが襲われたって事もあって、凄く心配してくれたみたい。


「盗賊団の一件が落ち着くまで、街を出歩くのは控えるように致しましょう。ローズさん。申し訳ないのだけれど、お茶会が終わるまでは一番安全な公爵家の中で過ごしていただきますね」

「え? でも、調査は?」

「調査にローズさんが同行する必要はありません。いいわね? ソルちゃん」

「パール婦人、ローズ嬢はオレが」

「い・い・わ・ね!」

「はい、分かりました」


 パール婦人の迫力に気圧されるソルファ様。守ってくれるって言ってくれたし、ソルファ様が傍に居てくれるなら安全だと思っていたのだけれど、パール婦人にその理屈は通用しないみたいで。


 公爵家の中へ通されて、改めてパール婦人から説明があったのだけれど、一週間後のお茶会には、貴族のご婦人達も港町マリーナへ訪れる予定で、より警備を強化しないといけない訳で。ソルファ様にも領内へ潜んでいる騎士団の方々への指示など、色々手伝って貰いたいというご婦人からのお願いだった。事情が事情だけに、お茶会を終えるまではソルファ様と暫く別行動になるかもしれない。


「お屋敷に居る間、いっぱいお勉強出来ますね」

「ちょ……ネンネ!」


 ネンネが耳元でそっと囁くものだからびくっと肩が跳ねるわたし。そうだ。お屋敷にやって来る貴族のご婦人方のこと、お勉強しないといけないんだった。デートはすっごくドキドキで、とっても楽しかったんだけど。一気に現実へと引き戻されてしまった。


 こうしてあっという間のマリーナデートの日は何事もなく終わりを迎え、公爵家での晩御飯に再びやって来る妄想世界の子達と戦いつつ、怒涛の一日を終えるわたしなのです。


 そして、その翌日――


 公爵家でネンネと過ごしていたわたしは、昼刻にサウスオリーブ公爵の執務室に呼び出される。

 既にスミスさん、ソルファ様。ジウさんも場に同席していた。


「ローズちゃん、昨日の事があって心配したけれど、変わりないみたいでよかった」

「お陰様で心配には及びませんわ」


 カーテシーをして挨拶するわたし。透明なクリスタルテーブルへ侍女さんが淹れてくれた紅茶が並ぶ中、ソファーへと座ったわたしとソルファ様。みんな揃ったところでサウスオリーブ公爵が昨日の現場検証の結果を話し始めた。


「現場は、簡単には割れない硝子で宝石は囲んでいたんだけどね。強力なハンマーで叩き割られていた。まぁ、盗賊団が蔓延っているのは想定内で、より高価な宝石は表に出していなかったんだけど、犯人も無事捕まってよかった。スミスにも感謝しないとだな」

「いえいえ、某はたまたま(・・・・)居合わせただけですので」


 あくまでたまたまを強調するスミスさんの主張は置いておいて。その後、犯人を尋問するも、犯人は『盗賊団の事は何も知らない、頼まれただけだ』と、まだ口を割っていないみたい。


「ただ……どうやら、頭巾で顔を隠した男に頼まれたと証言していてな。腕に何やら獣らしき入れ墨(・・・)を入れている男だったらしい」


 頭巾で顔を隠した……どこかで聞いた事があるような……。


「ローズ嬢、オレが昨日話したあのカフェテリアで民族衣装の女性と話していた男だ」

「あ……」


 そうか。そして、ソルファ様は真剣な表情で周囲を見回した後、思いもよらない事を告げる。


「アクア。ローズ嬢も聞いてくれ。以前、ディアス大農園でローズ嬢が誘拐事件に巻き込まれた。その時の犯人をオレは尋問している。奴の背中にも狼の入れ墨があった」

「え? それってつまり……」


 嘘……じゃあ、ディアス大農園でわたしとリンダちゃんを誘拐した犯人って。


「ああ。あの時の犯人と、今回の一件。同じ盗賊団の仕業だと考えられる」


お知らせです。ヤンチャンWebの方でコミカライズ第2話①が12/1より配信されております。

第2話②は週明け配信予定です。併せて12/23(火)より発売の電子雑誌どこでもヤングチャンピオンでも連載開始となりますので、こちらも覗いてみていただけると嬉しいです。

本編はいよいよ盗賊団の動きが!? ドキドキの第2幕、続きもお楽しみにです。

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