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その伯爵令嬢、〝替え玉〟につき ~替え玉のわたし(妹)が侯爵に溺愛されるなんてあり得ません  作者: とんこつ毬藻
<閑話Ⅰ~Dias Side>

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EX02 閑話ディアス編 専属侍女は見た! その②

 皆さまこんにちは。ゴルドー伯爵家にてアリーシェ様の専属侍女を務めておりますネンネです。

 アリーシェお嬢様の姉であるローズお嬢様の〝替え玉〟としてグランディア侯爵家へと送り込まれたのですが、まさかのご令息ソルファ卿の本当の求婚相手がローズ様ではなくアリーシェ様という事が発覚したのです!


 これは、もしかするとソルファ卿は、今まで侍女目線からしてもお辛い経験ばかりされて来たアリーシェ様からすると、ゴルドー家という鳥籠の中から救い出して下さる王子様となる存在かもしれません。


 そして翌日、グランディア侯爵家での生活がいよいよ始まります。


 〝替え玉〟がバレてしまっては即終了なドキドキの生活。私ネンネも誰かが近くに居る時は『アリーシェお嬢様』ではなく、『ローズお嬢様』と呼ぶよう徹底しています。


 って、うわぁああ~~~アリーシェお嬢様ぁああああ~~今、牛乳飲んだだけで子爵家に居るお気に入りの牛の乳搾りを脳内でしてましたねぇ~~! たまにお嬢様は意識が世界旅行してしまうので、本当注意しなければなりません。

 

「ソルファ様、どうかされましたの?」

「いや、すまない。昨日、君を愛する努力をすると伝えたばかりなのに、何故か牛乳を飲むローズの姿に妹君であるアリーシェが搾乳している様子を思い浮かべてしまった」


 ええ、ええ。私にも視えましたよ。アリーシェお嬢様が『あらあらモモ~~、こんなにお乳が張って~』と可愛らしく牛さんの乳を搾る御姿が……。


 コホン、さて気を取り直して、何やらソルファ卿と専属執事のスミスさんがお話をしていますね。


「ローズ。実は今日、公務が休みなんだ。……そのだな。ディアス領を少し案内しようと思うのだが、どうだろう?」

「え? え?」

 

 アリーシェお嬢様、きょとんとしていますが、これはソルファ卿との距離を縮める絶好の機会ですね。此処は、ソルファ卿の意図をアリーシェお嬢様へお伝えしなければですね。


『もしかすると……ソルファ様は、ローズお嬢様とデートをしたいと申しているのかもしれません』

「デ、デ、デート!?」


 私とアリーシェお嬢様は、スミスさんへ連れられて、侯爵家の支度部屋へと案内されます。入室してびっくり。

 (あか)(あお)、黄色、紫。色とりどりのドレスに普段使いの衣装まで。様々な衣装が何百と並んでいるではありませんか?

 しかも、どんな体型にも合うようサイズまで種類があります。


 私、思わず瞳がキラキラしてしまいました。だって、今からアリーシェお嬢様にこの沢山あるドレスを着ていただくんですよ?

 侍女として(たぎ)らな……コホン、気合が入らない訳がございません!


 複数のドレッサーに煌びやかな宝石にアクセサリ、お化粧の道具まで。伯爵家の継母キャサリーナ様の衣装部屋も絢爛豪華でしたが、衣装と服飾品の数なら負けていません。何でもお相手が居る前から、将来ソルファ様の相手になるべく淑女のため、グランディア侯爵が知人のデザイナーに頼んで準備させていたんだそう。さすが、侯爵家です。


「さて、お嬢様。いかがいたしましょうか?」

「うーん……どうしよう」


 スミスさんや侍女の方々には一度ご退室いただき、お嬢様と二人きり。暫し鼻息が荒くなってしまうかもですが、ご了承願います。フンスッ!


「今回は社交界ではなく、町歩きですので、そんな豪華な衣装でなくてもよろしいかと」

「そうですわよね」


「あと、せっかくですので、お試しで色々着てみましょう」

「(え、でも、それはいいよぅ……恥ずかしいし……)」

「(一瞬で口調を戻さないで下さい)」


 まぁ、一瞬で口調が戻るアリーシェお嬢様も可愛いんですが、外に侍女の方とスミスさんが控えていらっしゃるので油断は出来ないのです。かつらが外れないよう気をつけつつ着替えなければなりません。


 最初は乗り気じゃないアリーシェお嬢様でしたが、ローズお嬢様を演じる名目でドレスを着て下さる事に。ふふふ、ネンネはやりましたよ、アリーシェお嬢様ファンの皆さん。その着せ替え人形(アリーシェお嬢様)に恋をしちゃわないよう、私も気をつけなければですね。


 ローズお嬢様と言えば情熱の赤という事で、赤系統のドレスを選びましょう。胸元の開いたエレガントスタイル。胸元のみに薔薇を飾ったスカーレット色のマーメイドスタイル。ローズお嬢様ならば本来はエレガントスタイルにこれでもかと豪華な装飾が施されたドレスをお選びでしょうが……此処はやはり、ローズお嬢様の気高さを残しつつも、アリーシェお嬢様本来の可愛らしい魅力が惹き立つ可愛らしいフリルと薔薇の花弁をあしらった装飾が施されたプリンセスドレスですね。


 脚には硝子細工のピンヒール。一体どこの職人さんがこんな美しい硝子の靴を創ったのでしょう? 

 アームカバーで腕の傷を隠して、今回は試着なので薄桃色の口紅(ルージュ)のみを引き、アリーシェお嬢様を全身鏡の前へと連れていきます。


「え? これが……わたし?」

「ええ。一国の王女様みたいですね」


 嗚呼、心の中で男装したネンネがお姫様となったアリーシェお嬢様と舞踏会で華麗にダンスを踊っています。


『美しいよ、アリーシェ』

『ありがとう、ネンネ王子』


 ああああああ、一瞬鼻血出そうになったので現実世界へ戻って参りました。王子ではなく専属侍女のネンネです。私とした事が、一瞬アリーシェお嬢様顔負けの世界旅行へ行ってしまっていました。って、お嬢様の双眸(ひとみ)から涙が!


「お、お嬢様!?」

「何でもないの。こんな日が来るとは思っていなかったら……嬉しくて」

「そうですね。本当に」


 嗚呼、アリーシェお嬢様……そうですよね。ドレスなんて一生着れないかもって、きっと心の中で絶望していたかもしれませんものね。私も思わずアリーシェお嬢様につられて雫が零れます。


「夢じゃないわよね」

「ええ、現実です」


 お嬢様とそんなやり取りをしていると、部屋の扉がノックされ、外から侍女さんの声が!


『ご衣裳はいかがでしょうか? お手伝い致しましょうか?』

「お気遣い感謝致しますわ。ネンネが手伝ってくれてます故、心配には及びませんわよ?」

『承知致しました。何かございましたら何なりとお申し付けくださいませ』

「ありがとうございます。もう少し、お待ち下さいませ」


 こんなことをしている場合ではありませんでした。今回は街歩きの衣装を選ばなければなりません。

 ソルファ卿の喜ぶ衣装がどんなものなのか? お嬢様と話していると、何か思いついたのか、お嬢様がワンピースや普段使いの衣装……ではなく、別の衣装を持って来たのです。


 それは、農家の娘達の間で流行っている、かつての民族衣装を模した、胸元を紐で閉じる形の伝統的な可愛らしい衣装。胸元周辺の布地は黒、臙脂色のスカート部分以外は白い絹糸で織られています。


 そう、この時のお嬢様は私の考えの上をいったのです。私は思わず感心してしまいました。お嬢様の考えを理解した私は、メイクもアクセサリも控えめなものを選びます。


 その後、この衣装を着たアリーシェお嬢様を見たソルファ卿は、僅かに頬を朝焼け色に染め、ひと言『似合っている』と言ったのです。

 作戦成功ですね、アリーシェお嬢様。掴みは上々でございます。だって既にネンネのハートも……私の事はいいですね。


 では、この後の初デート、専属侍女としても最後まで見届け致しましょう。


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