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その伯爵令嬢、〝替え玉〟につき ~替え玉のわたし(妹)が侯爵に溺愛されるなんてあり得ません  作者: とんこつ毬藻
Ⅰ.替え玉開始編~Scene Dias

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第18話 その伯爵令嬢、緊急事態に見舞われる 

 誰かの話し声が聞こえる。

 真っ暗だった視界がぼやけている。どうやら暫く眠ってしまっていたみたい。

 あれ? そもそもわたし、何をしていたんだっけ?

 

 あ、そうだ! ディアス大農園の牧場で乳搾り体験をさせてもらっていたんだ。えっと、その後は……頭がなんだか重たくて思考が中々回らない。だんだんと話し声がはっきりと聞こえて来た。どうやら男の人の声が数名。


「おい、そこの令嬢だけ連れて来いという命令だったろう!?」

「すいません、兄貴! ですが、このガキ、あの大農場の娘でっせ。なんなら身代金がっつり穫れるかもしれやせん」

「まぁ、それもそうだな」


 え?


 その会話が聞こえた瞬間、わたしの意識が覚醒する。そうだ! あの時誰かに羽交い締めにされて、何かで口を塞がれた瞬間、眠ってしまったんだ!


 手脚を、身体を動かそうとするも、どうやら縛られていて動けない。口も紐で縛った布で塞がれていて声が出ない! リンダちゃんはわたしの横で縛られたまま、まだ眠っているみたい。


「お、どうやら目を覚ましたみてぇだな」

「……っ!?」


 どうやらこの大男がリーダーらしい。覆面を被っていて顔は分からない。下っ端らしき男の人達も同様だ。恐怖で身体が震えてしまう。そんなわたしの様子を見た男が口角をあげ、口を縛っていた布を外してわたしの上顎を掴み、自身の顔を近づけて来た。


 わたしの顔に掛かる男の吐息。何日も放置された残飯と汚泥を混ぜたような臭いに、思わず顔が歪み、鼻が捻じ曲がりそうになる。嫌だ。嫌だ嫌だ。怖い。


「お嬢ちゃん。ゴルドー伯爵家長女、ローズ・ゴルドーだな。あんたには悪いが、これがオレ達の仕事なんでな」

「何が目的なの……こんな……ことをして……只じゃ済みませんわよ」

「震えてる割に威勢がいいじゃねぇーか?」

「こ、此処は一体どこですの!? 誰か助け……んんっ!?」


 大きな分厚い手で口を塞がれ、無理矢理、叫声を呑み込まされてしまう。 

 

「此処は昔使われていた無人の山小屋、どうせ助けは来ないぜ。心配するな。用が済んだらお前は返す。だが、大人しくしておくのが身のためだ。何せ、そっちのガキに関しては何も言われて居ないからなぁ?」


 指差す代わりに顎で合図し、ニヤリと嗤う大男。そうだ。リンダちゃん。わたしはどうなってもいい。リンダちゃんを助けないと。抵抗する様子を止めた事で、ようやく塞がれていた口が解放されて咳き込むわたし。


「どうやら立場が分かったみてぇだな」

「で……一体何が目的なの?」

「嗚呼。あんた。その高飛車な性格。相当嫌われてるだろ? 侯爵家へ嫁いだせいで、あんたはこれから何処へ逃げようとも、一生恐怖と隣り合わせで過ごしていくのさ。それを、植え付けてやろうって話だよ」

「嫌ぁああ」


 身に着けていた民族衣装とアームカバーが無理矢理引き裂かれ、わたしの両腕が剥き出しになる。次の瞬間、大男は屈々と嗤い出し、やがてその声は高らかな笑いへと変化していく。


「アーハッハッハ! 何だ、その腕の傷。どうやらあんたは今までも散々弄ばれていたみてぇだな!」

「兄貴! 既に疵物(きずもの)なら、あっしらもやっちまって……ぐはっ」


 飄々としていた子分らしき男の顔面へ大男の拳が放たれ、子分の一人が小屋の扉まで吹き飛ばされた。


「誰がお前達にやるって言った? こんな上物。俺様のモノに決まっているだろう。飽きたらお前等にやる。それまで外見張ってな」


「へっへい!」

「やったぜ」

「わかりやした」


 子分達が外へと出る。手にナイフを持っている者、頬に傷をつけた者。どの人達も人目で危険な相手だと分かった。この人達を怒らせちゃうとリンダちゃんが危ない。でも、どうすれば……いいの? 


「あの……待って! 縛られていちゃ……わたくし、何も出来ないわ」

「嬢ちゃんは、何もしなくていいよ。その口さえ、開いて居てくれたら。傷だらけで可哀想に。前のご主人と違って、俺様は優しくしてやるからなぁ?」


 大男の臭い口が段々とわたしの顔へ近づいて来る。嫌、嫌嫌嫌! 誰か助けて! ネンネ……ソルファ様!

 わたしの脳裏にソルファ様の顔が浮かんだその時だった。山小屋の木製の扉が突然破壊され、何かが勢いよく床を転がった。大男が入口へ向かって叫ぶ。


「おい! 外で待ってろって言っただろう! 何やって……る!?」


 が、床に転がったそのモノを見た時、大男は一瞬にして固まった。床に転がっていたのは白目を剥いて気絶している先程の飄々としていた男だったのだ。続けて何か外で物音がしたかと思うと、同じように気絶した子分達が次々に投げ入れられ、山となっていった。


「ど、どうなってやがるっ!」


 蹴破られた入口から続けて入った人物は、わたしのよく知っている人物で……。


「ソルファ……様?」


 でも、その冷徹な表情は、今迄に見た事もない表情で。彼から放たれる空気に、わたしの全身に思わず悪寒が走った。


「お前達。ローズへ何をした?」

「ハハッ、まだ何もしてねぇーよ。あんたのせいでなっ!」


 ソルファ様危ないっ! 


 小屋の壁に立てかけられていた斧を手に持った大男がソルファ様へ突撃するも、横へ移動したソルファ様は大男の斧を躱していく。途中転がっていた子分を蹴り上げ壁を作り、斧による猛攻を後退しつつ避けていくソルファ様。そして、大男が大きく振りかぶった瞬間、ソルファ様が(かが)み、そのまま脚払いをした。大男の巨体が回転した瞬間、腰に携えていた剣を引き抜き、大男の斧は振るわれた斬撃により、回転しながら小屋の天井へと突き刺さった。


「貴様ら、誰に雇われた」

「言うかよ」


 喉元へ剣を突き立て、ソルファ様が大男を問い質す。


「まぁいい、話は後でたっぷり聞こう」

「お前何をする気……」


 剣を回転させたソルファ様は大男の喉元を剣の柄で思い切り突き上げる。大男の巨体が一瞬にして宙を舞い、そのまま大男は白目を剥いて気絶する。静かに剣を収めたソルファ様が、こちらへと振り返り、駆け寄って来る。後ろに縛られていた腕と脚の縄をナイフで切ったソルファ様は、そのままわたしを抱き締めた。


「ローズ! 無事でよかった!」

「ソルファ様」


 嗚呼、先程の怒っているソルファ様じゃない。いつものソルファ様だ。


「ローズ、その腕の傷、痛かったろう。もう大丈夫だ」

「あ……」


 引き裂かれた衣装と両腕の傷を確認したソルファ様が、再びわたしを抱き締めてくれた。

 違うの、ソルファ様。この傷は……伯爵家で何度も何度も打たれてついた傷なの。

 そんな事、言える筈もなく。わたしは暫くの間、只々無言でソルファ様の温もりを受け入れていた。


ソルファ様、見事な救出劇、いかがでしたでしょうか?

是非いいねや感想もお待ちしてますね。

作品更新だいぶ進みましたので、ここから更新ペース落としていきます(原作週一更新のため)。その代わり、まだまだ長編予定で作品続いて参りますので、変わらずの応援、今後ともよろしくお願いします(´ω`)


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