Wave.7 改良
「モデルの良さ……」
「そうだ、同程度の登録者でお前みたいにモデルに金かけてる奴は少ない。それだけで強みだ、V-Waverは見た目が十割だからな。まァ、ソレだけで渡っていける程、今の業界は甘くは無ェが」
スマホを自分の手のひらに戻して、先輩は再び椋鳥ひよりチャンネルのページを表示させて私に見せた。
「さて、じゃあ問題解決だ」
「え」
ライブのタブをタップして、すいっと画面をスクロール。今までの半年間で私がしてきた多種多様なライブ配信がそこにあった。どれもこれも再生数は二桁、直近に至っては一桁だ。悲しい、泣きたい。
「お前、配信するジャンルをもう少し絞れ」
「絞る?」
「雑談、歌枠、ゲーム配信。歌枠は流行の歌、ゲームも話題になったものをジャンル問わず手を出してる。節操がなさすぎる」
「でっ、でもでも、そうしないと見に来て――――」
「るか?」
「……てないです、はい」
ガクンと肩を落とすしかない。流行りに乗っても空振りばっかりですから。
「絞る。核を作る。お前、何か特技は無いか?」
「特技……ええと、レジ打ちが早い」
「オレの方が早くて正確だ」
「ぐはっ」
その通りです、参りました。
「えーっと。歌はすこーしだけ自信あります、一応、音楽やってたので」
「弱いな、音楽に関する事で他に何か無いか」
「何かと言われましても……」
うーんと唸る。実は歌に自信があるといっても高校時代に友達から褒められた程度だったり。他の人より優れている事は思いつかない。他に音楽に関する事なんて――――
「あ」
思い出した、けど流石にコレは……。
「なんだ、何か思いついたのか」
「あー、いえ、大した事じゃないので」
「言え」
先輩の有無を言わさぬ眼光が私を貫くっ。
無理です、これに抵抗する度胸は私にありません。
「そのぅ、お父さんが趣味にしてたアコースティックギターを弄ってた時期が高校生の頃あったなー、と」
「弾けるのか」
「ほんのちょっと、簡単な曲だけ……」
「よし。へたくそアコギを弾く事をサムネにデカデカと表示させて配信しろ。ああ、防音室はあるか?」
「めちゃ小っちゃいですけど」
「よし、やれ」
こうして私の、へたくそアコギライブが決定しました。