Wave.3 鬼
呼び出し。
それは恐怖でしかない。
今日はバイトはお休みの日。家でごろごろしようと思ってた。
のに。
呼び出されたんだよ、鬼頭先輩に!
いいよね、先輩は。出勤は週一か、多くて二。殆どお休みじゃん! まあ、もしかして万が一億が一、先輩が『わぁるふぁ』なら違うだろうけど。配信外も忙しいって聞くし。何してるか、全然知らないけど。
呼び出された先は近所の公園。
なに? 私、カツアゲされるの? お、お金なんて無いですよ?
はー、怖い。行かなかったら、もっと怖い。
「オウ」
公園に到着した瞬間、声を掛けられた。
鋲が付いた黒の革ジャン、ダメージ入りで金具が付いた黒のレザーパンツ。耳には穴を開けないタイプの金色の軟骨ピアス、イヤーカフ、って言うんだっけ? 足元は頑丈そうな黒革のブーツ。
全体を通して威圧感の塊、めちゃくちゃ強そう。長閑な公園に異質な存在であるのは明白だ。親子連れがなるべく距離を取ろうと、端の方で子供を遊ばせている。うちの先輩が、大変ご迷惑をおかけしております。
私に近寄ってきた先輩。
周りから見たら、ヤンキーにカツアゲされる一般人だろうなぁ。
「行くぞ、そこの喫茶店だ」
親指で指した先には、老舗っぽい風合いの喫茶店。入店して壁と柱に囲われた端っこ、テーブル席のソファに掛けた。先輩はブラックコーヒー、私はミルクと砂糖たっぷりのアイスコーヒーを注文。
「さて、本題だ。『わぁるふぁ』については誰にも言うな」
はい、答えが出ました。昨日の一件は夢なんかじゃありませんでしたー、配信で気になった所は正解でしたぁー。めっちゃ残酷な答え合わせ、このまま崩れ去ってしまいたい。
なんて思っていた私に、追い打ちが飛んでくる。
「マァ、それはどうでもいい。お前の昨日の配信についてだ、何だありャ」
「へひっ?」
変な声が出た。
先輩が私の配信を見てた?いや、それよりも私が配信してるの何で知ってるんだ?
「え、私配信してるって言いましたっけ?」
「テンパりながら言ってたろ。『椋鳥ひより』って名前で活動してます、ッて」
記憶にございません。わぁるふぁショックで記憶が飛んでます、マジで何にも覚えてません。何言ってんだ、昨日の私。脳みそバグってんのか!
いや、バグってたわ、うん。
「で、何だあれは」
「な、何だ、とは?」
「やる気ねェ態度、見所ゼロのダラダラ。クソみてェな時間の無駄」
「ふぐがぅっ!」
鋭利な言葉のナイフが私を突き刺す。ついでに抉って貫通するレベル。心を傷付けるのも酷いイジメだっていうじゃない。酷い、酷すぎるっ!
「で、活動歴は」
「は、はい?」
「活動歴だ。V-Waverとしての」
「は、半年ぐらいです」
私の回答に先輩は、右手で顔を覆って盛大な溜め息を吐いた。
な、なんだよー、その態度!まだ半年なんだから、これから人気出るんだから!
「断言してやる。このままならお前は、あと半年で活動しなくなる」
「なっ!?」
心の内を見透かされたようで、私は思わず声を上げた。




