物質の粒子・波動の二重性
舞台:社員食堂の片隅、使われていない会議室での「量子ランチ」
副部長が持ち込んだ物理プリント(『光と物質の二重性』)を囲みながらの会話。
Scene 1|光は波なのか、粒子なのか?
野田(真顔でプリントを見ながら)
「昔は光を“波”だと考えていた。でも、それだけじゃ光電効果を説明できなかった……」
富澤(コーヒーを飲みつつ)
「振動数が足りない光じゃ、いくら強く照らしても電子は飛び出さない。つまり“明るさ”じゃなく、“色”で決まる。波では説明がつかない。」
副部長(手元のホワイトボードで図を描きながら)
「ここですね。“E = hν”――光子1個が電子1個にエネルギーを渡す、というアインシュタインの光量子仮説。これが革命だったんです。」
富澤の彼氏
「てことは、オレがどれだけアプローチしても、センスの“周波数”がズレてたら、彼女の心は動かないってこと?」
富澤(ため息)
「お前の話は、光より説得力がない。」
野田(真剣な顔で)
「振動数が足りなければ、どれだけ“熱意”があってもエネルギーは届かない……か。物理って残酷。」
Scene 2|コンプトン効果――衝突する光
副部長(説明継続)
「さらにコンプトン効果で決定的になりました。X線が電子にぶつかると、波長が“伸びる”――つまり、光子はエネルギーと運動量を持つ“粒”として振る舞う。」
野田
「それって……ビリヤードみたいなものですね。球が球に当たって、別の方向に跳ねる。」
部長(突然ぼそっと)
「昔、煮卵をスプーンで弾いて割ってたな……よく怒られた。」
野田(静かにうなずく)
「その“煮卵”が、電子だったんですね……」
富澤
「いや、違う。」
富澤の彼氏(笑いながら)
「でも、食堂で物理語って、煮卵に例えられるとは思わなかったよ。」
Scene 3|物質波――粒子も“波”になる
副部長
「そして次は、光の逆転現象。“物質も波の性質を持つ”というド・ブロイの仮説。λ = h/p。つまり、電子だって波動性を持つ。」
野田(興味深そうに)
「ド・ブロイ波……つまり私たち自身も、波として空間に拡がってる存在……?」
富澤
「まあ、お前は確かに“実体は不明で、ときどき干渉する”感じはある。」
富澤の彼氏(大げさに)
「じゃあ俺、完全に“波”だわ。会社にいるようで、存在はしてない。」
部長
「……いるけど、観測されてない存在って、幽霊みたいだな。」
野田(笑わず真剣に)
「“観測されてない”ということは、可能性が収束してない、ということです。
つまり、“どこにでも、まだなれる”って意味でもありますよ。」
富澤(感心したように)
「理屈としては正しいけど……それ言われると逆に怖いな。」
Scene 4|波数・角振動数と「美しい数式」
副部長(数式を指さし)
「量子論では、Dirac定数 ℏ や角振動数 ω、波数 k も使われます。
この関係式、見てください。
E = ℏωp = ℏk
まるで数式の中で、粒子と波が“手を組んでいる”ようです。」
野田(小さく呟く)
「世界が“数式”でできてるって、本当かもしれない……。
人の感情すら、振動や波長で解けたら、わかり合えるかもしれないのに。」
富澤(少し目を細めて)
「でもその解釈、相手に“波長が合わない”って言い訳に使うやつな。」
富澤の彼氏
「俺、毎回“波長”でフラれてる気がする。やっぱプランク定数、重いわ〜。」
部長(最後に一言)
「……昔から、心が動くときって、音もなく“干渉”してるもんだよ。」
野田
「干渉、ですね。目に見えないけど、確かにそこにある影響。量子論って、実はすごく……人間っぽい。」