表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/18

【ぼろぼろのアトリエと結婚式】2

 「人間の結婚式、面白かったです」

 ルナはそう言いながら、セシルの指輪をまじまじと見ていた。アレックスは笑いながら、ルナに話しかける。

 「もし、ルナさんが結婚するときは、セシルさんに結婚指輪を作ってもらったらどうっすか?」

 「そうですね。それも、面白そうですね」

 「その時は、僕も腕を振るうよ」

 談笑する三人を横目に、シルバはどこかほっとした表情を浮かべていた。本当に、記憶がない間セシルを失う結果にならなくてよかった。

 「では、私はこれで失礼します」

 「旅、続けるの?」

 「はい。特に行く当てもないですし。旅自体は気に入っていますので」

 ルナは静かに言った。そしてセシルの手を握りながら耳に口を近づけた。

 「『あの人』を、お願いします」

 「うん」

 そう言うと、ルナは踵を返し、歩いていく。旅人のマントをかぶり、やがて森の闇に消えていった。

 「じゃあ、オレも帰ります」

 「人間界に?」

 「はい」

 アレックスは誓いの書を小脇に抱えると、笑顔で言った。

 「また、どっかで会いましょう」

 「そうだね。また遊びに来てね」

 「お前なら、我が家に来ることを許そう、勇者」

 偉そうに言うシルバに、アレックスは笑いながら「そうだな」という。そして、二人に背を向け、歩き始めた。

 「……勇者が我に笑うなど、気味が悪いな」

 「打ち解けた、ってことじゃない?」

 セシルのその言葉を背後に聞きながら、アレックスは考えていた。

 (お幸せに)

 それ以上、アレックスは考えるのをやめた。


***


 『ゲーテ』は繁盛していた。工夫して作っている作品も好評で、仕事も軌道に乗ってきた。ただ困ったことに、客人の間で広まった「セシルとシルバは結婚している」という噂が町を駆け巡っていることだ。もちろん、それに文句を言われたことはない。ただ、中には祝の品を置いていく者や、旦那の愚痴をセシルに言いに来る人もいた。

 「セシルさんは、シルバさんに文句とかないの?」

 「え?うーん……特にはないですね」

 「まあ、新婚さんはいいわねぇ」

 商店街のマダムは嬉しそうに言った。女性というのは恋の話が大好きだな、とセシルは感じ始めていた。

 「でも、浮気には気をつけなきゃだめよ?シルバちゃん、町では人気者なんだから」

 「そうなんですか?」

 「そうよ。イケメン、高身長、食材を買ってるってことは料理もできるんでしょ?女性から人気だから、気を付けてね」

 そう言えば、前に婚姻紋の話で浮気をしてもバレる、と言っていたが、気を付けた方がいいのだろうか。いや、正直者のシルバだ。浮気をするくらいなら、自分と別れるだろうな、と笑う。マダムはその後もしばらくしゃべりながら、やがて帰っていった。

 「……シルバ、帰ってこないな」

 客足の途絶えた店で、セシルは頬杖をつく。自分の店で、愛する人を待つ。それがどれだけ幸せなことか。セシルは笑いながら、シルバの帰りを待った。

 「あ、おかえり、シルバ」

 「うむ、ただいま」

 店の戸が開いた。入ってきた彼の左手には、指輪が光っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ