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【プロローグ】

 魔術を作成できる人間と、その人間が召喚した魔王が消えた。そのニュースは人間界にも魔界にも鳴り響いた。人間界的には魔術を作成できるという戦力を失ったことになるし、魔界的にはせっかく復活した魔王が雲隠れしたことになるのだ。人々は数日、そのニュースを扱ったが、やがて持て余し、結局は手放してしまった。もちろん、このニュースを看過できない人間もいた。人間界の政府である。魔術を作成できる人間など、世界中を探してもいない。この戦力は是非、取り戻したい。

 「勇者アレックスよ。必ずや、かの男を捕まえて魔術棟へ戻せ」

 そう言ったのは人間界の王だ。王、と言っても貴族の言いなりなので、実際に言わせているのは貴族なのだろう。

 (そもそも、セシルさんを逃がしたのはオレ達なんだけどな)

 考えの行き届かない、いわゆる馬鹿な貴族に呆れながらも顔には出さない。自分が勇者であれるのは、自分だけの力ではない。彼を勇者であると認めてくれる存在あってこそだ。それは市民であることも、もちろん理解している。しかし、一番強い権力を持っているのは、現在横に控えている貴族なのだ。

 「分かりました。必ずや、彼を連れ戻しましょう」

 「うむ、頼んだぞ」

 そう言うと、王は謁見の間から出て行ってしまう。アレックスは踵を返すと、謁見の間を出た。

 「さて……どうしたもんかな?」

 頭をガシガシかきむしる。彼と呼ばれた存在、セシルは、自分が作った転移魔術で逃げてしまった。魔王、シルヴェスタが翼を使って逃げたのであれば、大体の方角は見当もつこう。しかし、転移魔術で逃げられてしまっては、どこに行ったかわからない。

 「……気合、いれるか」

 顔をパシッと叩き、前を見る。連れ戻すかどうかは別として、セシルに会いたい気持ちはある。あの後、どうしているのか。友人として、アレックスには友人以上の気持ちもあるが、彼が元気なのか知りたかった。

 「うっし。まずは情報収集からだな」

 アレックスは歩き始める。城の外は見事な快晴だった。

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