ママにナイショの冒険談〜北の大地へ〜
「メリークリスマス!」
ぼくと妹とママとパパ
カチンとグラスを鳴らして中のジュースを飲み干した
今夜はクリスマスイブ
サンタさんがプレゼントを持って来てくれる待ちに待ったクリスマス
ぼくは大慌てで歯磨きをしてベッドの中に潜り込む
「あぁ、忘れちゃ大変」
枕の下から大切な真っ赤な宝石を取り出して右手にぎゅっと握りしめた
ママにおやすみなさいと手を振って、ぼくは暗闇の中目を閉じる
「ゆめのかみさま ゆめのかみさま ぼくをゆめのせかいへつれていって すぺーむ ぺるふぃきおー」
ふわふわと意識が体を離れていく感覚ももう慣れたもの
ぼくは目を閉じたまま彼を呼ぶ
「フォーティス!さぁ冒険へ出かけよう!」
僕の声に応えるように風が動き、バサバサと羽ばたく音が聞こえてくる
とさっと体が何かに着地した感覚を覚え、ゆっくりと目を開いた
ぼくは巨大なドラゴンの背の上にいた
「フォーティス!」
「我が友よ、今宵はどこへ行く?」
「北の大地へ!サンタクロースに会いに行こう!」
「しっかりと捕まっておれ」
フォーティスが力強く羽ばたいた
しばらくして、ものすごいスピードで風を切るフォーティスの周りに白いものが飛び始めた
雪だ
フォーティスはスピードを落とし、ゆっくりと高度を下げる
「サンタクロースが住む北の大地だ。全てが雪に覆われている。寒くはないか?」
「平気だよ!寒くなんかない」
「さぁ、降りるぞ。捕まっておれ」
ゆっくりと円を書くように降下するフォーティスの背から、下界を見下ろす。
ぼくらの真下には小さな小屋が見えた
その小屋のそばにフォーティスはゆっくりと着地した
ぼくがフォーティスの背から滑り降りると同時に、小屋のドアが開き真っ赤な服に身を包んだおじいさんが現れた
「おぉ、フォーティス、久しいな元気にしておったか」
おじいさんが大きなお腹を抱えて笑顔でフォーティスに呼びかける
「サンタクロース、そちも元気そうで何よりだ」
「それでなにようじゃ?」
「サンタクロースさん」
ぼくはサンタさんの前に歩み出た
「おぉ、わざわざこんな遠くまでわしに会いに来てくれたのか」
サンタさんが嬉しそうに笑う
「ぼく、サンタさんにお願いがあって来ました。」
「ほぅ、願いとはなんじゃ」
「ぼくのパパとママにプレゼントをあげて欲しいんです。毎年、サンタさんはぼくと妹にプレゼントを持って来てくれるけど、ママとパパにはないでしょう?今年は、ぼくの分をママとパパにあげて欲しいんだ。2人ともぼくと妹のために頑張ってくれているから。サンタさん、お願いします!」
頭を下げるぼくを、サンタさんは優しく抱きしめてくれた
「なんと優しい子じゃ。よし、ではこれを授けよう」
サンタさんは2羽のハトのオーナメントをぼくに手渡した
「これは家族が末長く仲良くいられるお守りじゃ」
「ありがとう!サンタさん!」
「メリークリスマス」
「お兄ちゃん!クリスマスだよ!プレゼントが届いてるよ!」
妹が耳元で叫ぶ声で目を覚ました
眠い目を擦りながら起き上がる
右手に握りしめていたフォーティスの真っ赤な宝石を枕の下に大切にしまう
左手の中には小さなハトのオーナメント
ぼくはオーナメントをママとパパにプレゼントするために走り出した