Shall we dance?
「わぁ!アンネ様とても美しいです!」
以前ルースのお店で購入した青色のドレスに身を包む。
まさに星空のような美しいドレス。やっぱりこのドレスにして良かったわ。
「…旦那様も惚れ直しますよ。」
リネにコソッと言われ私は照れてしまった。
「さぁアンネ様、旦那様がお待ちです。」
私はクライン様の待つ部屋へと歩いて行った。
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「ヘルバーツ公爵閣下のお見えです!」
貴族達で賑わう中、クライン様が堂々と歩いていく。私も気後れしないように、胸を張って隣を歩く。
「まぁ…おふたりともなんて美しい…!」
「あちらルースの新作ドレスじゃない?」
良かった…久しぶりの社交界。なんとかなりそうね。
「アンネ…とても綺麗よ。」
お母様とお父様だわ!…お母様の元気な姿に私は涙目になる。
「ヘルバーツ公爵様、お久しぶりです。」
「シャルロン子爵、お元気そうで何よりだ。」
「やだ、アンネったら涙目になって…ホームシックかしら?公爵夫人でしょ!しっかりしなさい!」
私はお母様に怒られてしまった。公爵夫人として有るまじき失態だわ。
「やぁ、ヘルバーツ公爵にアンネ夫人。」
「英国の沈まない太陽、お会い出来て光栄ですわ。」
王族だわ!私は慌てて頭を下げる。
クライン様は王族と話している。私は邪魔にならないように端に行くことにした。
「やぁ美しい夫人。またお会い出来て光栄です。」
「あら、アルバーン侯爵様。」
見慣れた顔にほっとするとアルバーン侯爵から差し出されたシャンパンを受け取る。
「アルバーン侯爵様はこの後のパーティにも参加しますわよね?」
「もちろん。少しでもアンネ夫人と一緒に居たいからね。」
まぁ、と私はクスクスと笑う。
「おや、夫人、私は真剣ですよ。夫人が何でもしますと言った時は胸の高まりがおさまりませんでした。」
「それは大変だな。いい医者を紹介するぞ。」
気付くと不機嫌そうな顔をしたクライン様が後ろに立っていた。
「わぁ、嫉妬深い旦那様を持つと大変ですね、アンネ夫人。じゃぁクライン、またな。」
アルバーン侯爵はそう言って去っていった。私へのウインクは忘れない。
「あいつ…本当に油断も隙も無いやつだ。」
ふふ、と私は笑ってしまった。
「何がおかしい。」
「クライン様がこんなに嫉妬されるなんて思わなくて。」
「ずっと好きだった女性がやっと振り向いてくれたんだ。嫉妬するのもしょうがないだろう。」
クライン様は真顔でしれっと言う。私の方が照れてしまうわ。
~♪
ホールに音楽が流れる。
「さぁ、お嬢様、お手を。」
「はい、クライン様。」
私はシャンパンを使用人に手渡すと差し出された手にソッと手を添えた。
「…ねぇ、ヘルバーツ公爵様ってあんなに奥様と仲良かったっけ?」
「ふん、王族の手前、仲良くみせてるんでしょ。」
「そうよね。あんな冷めた結婚式してたぐらいですものねぇ。」
クスクスと笑い声が上がる。
「あら、公爵様はアンネ夫人を愛しているわよ。」
「ガーネット様!!」
「アンネ夫人を心から愛しているわ。貴方達が付け入る隙が無いぐらいにね。……こんなところで妬んでないで、素敵な紳士でも捕まえてきたらどうなの。」
まぁ!と令嬢達は赤い顔をして去っていった。
「こら、ガーネット…お前はまた…!」
「あら、私は本当の事を言ったまでよ。あーあ、それにしてもまさかあんなに仲良くなるなんて。もう公爵様からプレゼント貰えないじゃない。」
「そう言うな。私は友人のあんな幸せそうな顔が見られて幸せだよ。」
「…まぁそうね。だけど宝石もドレスも花束にも靡かなかった夫人は何が望みなのかしら?」
「それがさ、クラインに聞いたところ蛙を捕まえに行きたいんだって。」
「蛙!?」
しまった。大きい声をあげた為視線を浴びる。
「昔よく捕まえていたらしい。お淑やかな令嬢どころかとんだお転婆令嬢だったんだな。」
「あはは、おかしいー!私のアドバイス、何一つ参考にならないじゃない!大した方ねアンネ夫人って。…誰も敵わないわ。」
「さぁ、私のお姫様。公爵様のような高価なプレゼントはなかなか出来ませんが機嫌を治して私とダンスでも。」
「しょうがないわね。ルルド侯爵様。」
ガーネット夫人は笑いながらルルド侯爵の手を取った。
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「ああ、久しぶりの社交界は疲れたわ。」
私は控え室でソファに倒れ込んだ。リネがドレスに皺がつきますよ!と悲鳴をあげる。
「今まで社交界と言っても王族なんて招待しなかったもの。緊張して疲れるのはしょうがないでしょう?」
「確かにそうですが、皺になりますので早くお着替えください!」
私はリネに言われるがままドレスを脱ぐと先程のドレスよりカジュアルなドレスに着替えた。
「さぁ、パーティの始まりよ!」
私は急ぎ足で庭に向かった。




