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お迎えに上がりました。


「アンネ様、おはようございます。」

翌朝。リネが嬉しそうに挨拶しに来た。

「リネ……随分嬉しそうね。あ、痛い、腰が……!クライン様はもうお仕事に?」

「はい!早く帰ってきたいから早く仕事に行かれました!」

「そう……クライン様、腰は大丈夫そうだった?」

「はい!とても元気でしたよ!」

「そう……流石クライン様……。」

私は腰を摩りながら顔を洗いにベッドから這い出でる。


「着替えたら朝食をお持ちしますね。あ、旦那様が明日丸1日空けたからどこか行かないかと言ってましたよ。」

「……丸1日…あ、行きたいところ!あるわ!」

私は大事な人を思い出した。


*********


「こんな町に来たかったのか…?」

最北端の町。私はクライン様にお願いしてまたこの町に来ていた。

「ええ、ここにね、とても美味しい野菜を売ってる人が居るのよ。」

私は大好きだったスージーさんに会いに来たのだ。

「いらっしゃいませ……って貴方はヘルバーツ公爵様じゃないか!なんだってこんな町に!おや、なんて美しいお嬢さんなんだ……って何処かで見たことがあるような…私達、会ったことあるかい?」

スージーさんはナンパ師のような事を言う。

「……会ったことあるのか?」

「いえ、はじめましてです。アンネと申しますわ。」

「おや、はじめましてか。失礼したね。私はスージーさ。だけど貴方達のような大貴族がこんな小さい店に何か用かな?」

「妻がこちらの野菜を食べたいと言いましてね。随分と美味しいようで。」

「ええ。スージーさん、貴方ロンドンに移り住む気は無い?ちょうど野菜の仕入先を探していたのよ。」

ちょうど今までヘルバーツ家に野菜を入れていた農家の旦那が腰を悪くしたのだ。息子の居ないその農家は知り合いの農家を勧めてきたけど、私はまたとないチャンスだと思いその提案を蹴ったのだ。


「ヘルバーツ公爵家の!?えっうちが!?えっどうしよう!あんた!あんたー!!」

いきなり付き合いの無い公爵家に任命されたのだ。気が動転してもしょうがないだろう。スージーさんは私達を置いて家に入ってしまった。

「……。」

「……。」

2人で顔を見合わせているとスージーさんが旦那さんを連れて戻ってきた。

「まさか首都で暮らせる日が来るなんて……!一生懸命野菜育てて本当に良かった……!お願いいたします!!」

スージーさんは旦那さんと涙目になりながら頭を下げた。



********

「へぇーここがロンドンかい!随分と人が多いねぇ。」

スージーさんはまるで子供のようにずっとキョロキョロしている。

「おい、見ろよ!あんなに大きいコーヒーハウスがあるぞ!」

「あら、うちの町にはコーヒーハウスさえも無かったのに。……あんた、入り浸らないでよ。」

「大丈夫さ!公爵家様直々の任命だぜ!農家の腕が鳴るぞ!」

「こんなに気合いの入った主人は初めてだよ。」

スージーさんは笑いながら言った。


「……ではこちらの家で。何か困ったことや足りないものがあったら私に言ってくれ。……妻でもいいが。」

「ヘルバーツ公爵様!ありがとうございます!」

2人は何度も頭を下げる。

「ではまた、スージーさん、何かあったら気軽に頼ってくださいね。」

「本当にありがとう……!あんた達みたいな気さくな貴族様は初めてだよ。」

スージーさんは泣き出してしまった。

「スージーさん!」

「おいおい、泣くなよスージー。悪いね、うちの領主様は酷く横暴な人でね。うちも随分苦しめられたからつい……。」

「……あの町の領主は確か…。」

「フリン伯爵です。」

「ああ、そうだ、フリン伯爵だ。アンネ、よく知ってるな。」

嫌なことされたからね…と言いたくても言えなかった。

「そのことについてクライン様、ちょっとお話があります。」

「わかった。夕食の時に話そう。ではこれで。」

私たちはスージーさん達に挨拶をして馬車に乗り込んだ。スージーさん達はずっと頭を下げていた。



**********


「それでアンネ、話とはなんだ?」

クライン様がワインを飲みながら不思議そうに聞いた。

「クライン様……あの町は寒くてあまり農作物が取れないようです。なのにフリン伯爵は毎年過度な要求をしてくるから町民は困ってるようで……。」

「過度な要求……?おかしいな。フリン伯爵家はテッドの……アルバーン侯爵家の傘下なんだ。フリン伯爵家の領地はあまり農作物が育たないから要求も少なくしていると聞いていたが……。ちょっと調べてみよう。」

「ありがとうございます!」

アルバーンさんって地方貴族と言っていたけど侯爵様だったのね!私に怪しまれないように高い身分を隠してたんだわ……。

「それにしてもアンネがまさかあんな最北端の町を知っていたなんてな。あの農民のことも知っていたようだし……。行ったことあるのか?」

「えっ?ええ……まぁ。」

まさか過去に戻った時に行ったのです!とも言えず言葉を濁す。

「なるほど。私には言えないことか。……いいだろう。ベッドの上で聞くからな。」

「ベッド……!?えっ……!?」

「アンネはベッドの上では素直になり甘えてくるからな。」

「クライン様……!!」

クライン様を見るとまたいたずらっ子のような顔でニヤニヤしている。うう……クライン様ってこんな方だったっけ?私は赤い顔をしながら食後のシャーベットを食べ始めたのだった。




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