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それは突然の甘い衝撃。


「…これは。」

急いで先生を呼んでジョンを診てもらった。

「先生、ジョンは…!」

「アヘンとジンで内臓がボロボロだね。栄養失調もあり、そう長くは生きられないだろう。」

「そんな…!」

「鉱夫にはよくあるんだ。肉体労働のきつい仕事だからアヘンとジンに逃げる。そして気付いたら身体がボロボロなんだ。…若くてお気の毒だけどね。」

医者はそう言って帰って行った。

「アンネ…ごめんな。俺がもう少し強かったなら。」

「ううん、ジョンは充分に強いわ。」

痛みと恐怖で負けそうになりながらも私のために頑張ってくれた。アヘンで身体を誤魔化しながら。

「…ジョン、先生が薬出してくれたわ。」

「薬代も高いのに…ごめん。」

ジョンはそう言って飲み干した。

数分後、薬が効き始めたのかジョンは寝始めた。

「ジョンはもう充分頑張ったわ。ありがとう。」

私はジョンにお礼を言うと広場へと走って行った。



時間が無い!私は急いでロンドンに行かないと!

私は昨日と同じく商人に声をかけ続けていた。

「やぁお嬢さん。ロンドンに行きたいんだって?」

声をかけられ振り向くとガラの悪い男性2人が立っていた。

「え…ええ。」

「ちょうど親方がロンドンに行くみたいだ。あんたを連れてけるか聞いてみてやるよ。」

男はそう言って私の手を取り路地裏へと入った。

「親方、連れてきました。」

親方と呼ばれた男はこれまたガラの悪い男性だった。

「へぇ…ちょっと肉付きが悪いが偉い美人じゃないか。」

私を頭のてっぺんから足のつま先まで舐めるように見る。そのいやらしい目付きにたじろいだ。

「あら…私は人身売買されに来たわけではないのだけれど?」

私が青ざめながら聞くと親方は笑いながら近づいてきた。

「はは、大丈夫だよ。ロンドンに行きたいんだろ?俺が連れてってやるから。…ただ、聞いたところによるとお礼がね、何でもしますと聞いてね。」

すっ、とお尻を触られる。その手つきに鳥肌が立った。…だけどお金が無い私は何でもするしか無い。

「わかったわ…何でも…」

「だから何でもしますって言っちゃダメって言いましたよね?」

突然の声にその場にいた皆が驚いて目をやるとアルバーンさんが立っていた。

「誰だテメェ!」

「おやおや、血気盛んな方達だ。でも私が先に彼女にロンドン行きの貴族を紹介すると約束したので手を引いて貰えませんか?」

「ふざけんな!おい!お前らやっちまうぞ!」

「でも相手は貴族ですよ?」

「ふん、こんなよくわからん貴族1人、路地裏で処理しちまえば…って痛え!」

アルバーンさんに殴りかかろうとした親方の拳は横から入ってきたステッキに激しく叩かれた。

「誰だ!ってあんたは…!」

シルクハットから覗く美しい銀髪…美しく圧倒的な威圧感…そこに居たのはヘルバーツ公爵様だった。

「へへ…まさかこんなところでお会いできるとは…。おい!お前ら!逃げるぞ!」

さすがに公爵様には手が出せないと察した男達は慌ててその場から去って行った。

「あの…ありがとうございました…。」

「本当に貴方と言う人は!間に合ってよかったですよ!あ、彼がロンドン行きの貴族様です。あのヘルバーツ公爵様ですよ?ラッキーでしたね。あ、お礼は後日何でもしていただきますね。」

「おい。」

をっと、怒られる前に退散しますね、とアルバーンさんはさっさと行ってしまった。…私達を置いて。


「………。」

「………。」

どうしよう。まさかヘルバーツ公爵様が来るとは。

怖くて顔が上げられない。いや、今はそんな事を言ってられない。

「あの―!」

「ロンドンに行きたいとは…父親に謝罪しに行くのか?アンネ嬢。」

「え?」

私が驚いて顔をあげると美しい黄金の瞳が私を射抜いた。



「……ヘルバーツ公爵様…私のことを知っていたのですね。」

まさかバレていたとは。

「いつから知っていたのですか?前回助けていただいた時でしょうか?」

領主様に物申した時か。あの時帽子を深く被っていたからバレてないと思ったのに。

「いや、その前から知っていた。…そもそも私は貴方に会いに来たのだ。」

「え!?視察じゃなかったのですか!?」

「ああ。テッドからアンネ嬢がこの町に居ると手紙が来てな。…ずっと探していた。」

「な…なんで私を。」

まさか婚約破棄された恨みとか!?私が身構えていると…。

「!?」

「ずっと会いたかった…。」

何故かヘルバーツ公爵様に強く抱きしめられていた。




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