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連鎖する不幸は神様からの罰か。


お母様が…!私のせいでお母様が…!!

どうして私はそこまで考えつかなかったんだろう。

お父様が駆け落ちに怒るのは当たり前だ。そしてその怒りは駆け落ちをした私達ではなくケリー一家に向く事に。

「私が…。私がやり直したから…。」

いけない。早く着替えないとジョンが帰ってきてしまう。私はフラフラと立ち上がり着替えるとベッドに倒れ込んだ。

ジョンが帰ってくる。私は何事もなかったように笑わなくては。でもどうしても涙が止まらない。

自分でもどうしたらいいかわからなくなっていた時、家のドアが勢いよく開いた。


「大変です!!ジョンが…ジョンが…!!」


――嗚呼、神様。これは運命を変えた私への罰なのでしょうか。



*******

「あんたも鉱夫の奥さんかい!?早く行くんだ!」

私は急いでジョンの働く鉱山へと向かった。

泣きながらコリーが落盤事故を伝えに来てくれたのだ。

鉱山に着くとそこはまさに地獄だった。

頭から血を流し泣き叫ぶ者、痛みに耐えきれずのたうち回る者。

「ジョン…ジョンは…。」

恐怖から震えが止まらない。

「ひっ!」

突然袖口を引っ張られ振り向くと、血まみれで横になっていたおじいさんに声をかけられた。

「お嬢さん…足が痛いんだよ。俺の足…どうなってる?右足が痛むんだ。」

恐る恐る右足を見ると膝から下が切断されて無かった。

「あ…足…足は…。」

「ほら!急いで病院に連れてくぞ!」

私の言葉を遮るように町人がおじいさんを連れていくように指示を出した。

「お嬢さん、ダメだ。足が無いなんて言ってはいけない。今ショックを受けたら生きる気力も無くなっちまう。」

「あ…ごめんなさい…ごめんなさい…!」

「いやいやそんなに謝るな。それよりお嬢さんは鉱夫の奥さんかい?旦那の名前を教えてくれ。」

「あ…ジョン…!ジョンです!」

「ジョン?聞いたことないな…。」

「アンネ様!こちらです!」

コリーの声が聞こえると私は急いで走っていった。



「ジョン…?ジョンなの?」

担架に横たわりぐるぐる巻きにされた男性は本当にジョンなのか…?私は力無く声をかけた。

「あ…アンネか?アンネ…。」

「ジョン!!」

私は目の前の男性がジョンだと確信すると大泣きしてしまった。

「アンネ…。心配かけてすまない…。」

「大丈夫なの?痛むなら喋らないで良いから!」

見た限り四部欠損はしていないが、全身に巻かれた包帯からは血がたくさん滲んでいた。

「俺は大丈夫だ。…でも俺の前にいた先輩が…。俺を庇ったんだ。俺を庇って岩の下敷きに…。」

ジョンはそう言うと泣き出してしまった。私はただ、ジョンの手を握り続けることしか出来なかった…。




********

「うん、若いだけあってもう骨がついてるよ。」

落盤事故から2ヶ月半。左足を粉砕骨折していたジョンは家で治療を続けていた。

「あと半月で仕事復帰ができるんじゃないか?あとはメンタルが心配だけど…。」

見てくれた医師が心配そうに呟く。

「まぁ、美味しい料理でも食べさせて元気付けてくださいな!」

医師はそう言って帰って行った。


「ジョン…骨がくっ付いたって。良かったわ…。」

「アンネ…すまない。」

「なんで謝るの?これは事故だったのよ。」

「でも収入が無くなったうえに治療代も…。それに偽名までバレてしまった。」

事故当日、私達は本名で呼びあってしまったのだ。

「名前なんてどうでもいいのよ…。ジョン!貴方が無事で本当に良かった…!」

落盤事故はかなりの損害を出しており、死者もかなり出てしまった。…ジョンを庇った先輩も……即死だったようだ。


「…アンネ、俺、明日から出勤する。」

「え!?何言って!」

「骨くっついたんだろ?ならもう大丈夫。」

「ダメよ!先生だってあと半月と言っていたでしょう!」

「……早く仕事に復帰したいんだ。」

嘘だ。あんな忌々しい現場、本当は二度と戻りたくないはず。けどきっと優しいジョンは、生活費を稼ぐために無理を言っているんだろう。

「大丈夫よ。ジョン。まだ宝石は残ってるんだから。だからジョンは無理せず治療に専念してね。」

…私は嘘をついてジョンを励ました。宝石なんてとっくに無くなっていたのだ。



******

「じゃぁ行ってくるね。」

あれから半月経ち、ついにジョンの仕事復帰の日がやってきたのだ。

「行ってらっしゃい。…無理はしないでね。」

「大丈夫だよ。まだ少し痛むけど。」

ジョンは少し左足を庇いながら歩いて行った。左足も心配だけど私はメンタルも心配だった。

「ジョン大丈夫かしら…。あ…!」

ジョンを見送ったあと洗濯をしようとしてふらついた。貧血だ。治療代を払うために私は食費を節約したのだ。

毎日夜だけ。ジョンにバレると自分も食べないと言い出すので夜はジョンと一緒に食べているのだ。

「しっかりしないと…!」

私は気合いを入れるため自分の顔を叩くと洗濯を始めた。




「ただいま!」

「ジョン!おかえりなさい!」

思ったよりも元気なジョンの声に私は喜んだ。

「いやぁ復帰してくれて助かるよと凄く喜ばれてさ!あの落盤事故で手足を無くしたりメンタルをやられて辞めちゃった人も居たからさ。」

「そう…。」

私はあの足を無くしたおじいさんを思い出す。

「さて!身体も作業を思い出してきたし、明日も頑張るぞ!」

…ジョン、元気になって本当に良かった。でもその元気が空元気だとわかったのはその日の夜だった。


「うわぁぁぁ!!」

突然のジョンの叫び声に私は飛び起きる。

「嫌だ!嫌だぁ!崩れてくる!」

「ジョン!しっかりして!」

「うわぁぁぁ!足が!足がぁ!」

「ジョン!!」

私の叫び声にジョンは我に返る。

「あ…アンネすまない…。嫌だな、悪い夢を見て…。」

笑って誤魔化そうとするジョンを私は泣きながら優しく抱きしめた―。








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