優しさの代償は鞭打ちと死。
「アリスさん、大丈夫ですか?」
翌日。私は熱を出した。
「大丈夫よ。わざわざ来てもらって悪いわねコリー。」
「いえ、だけどアリスさん、熱以外に何か元気が…何かありましたか?」
「いえ…別に何も…。」
私は熱のせいか分からないが朦朧としていた。
「コリー。貴方はシャルロン家の事何かわかる?お母様の事とか…。」
「アリスさんのお母様ですか?すみません、わかりません。」
「そうよね…ごめんなさいね。気にしないで。」
私は心配そうに見ているコリーに、再度大丈夫よ。というと一眠りした。
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「すっかり熱下がりましたね!」
翌朝。コリーとジョンに看病してもらい熱は下がった。
「ありがとう2人とも。助かったわ。」
「熱が下がって良かったよ。今日も俺仕事休むからゆっくりしててくれ。」
「え!私はもう大丈夫よ!昨日も休んでもらったし今日は本当に大丈夫だから!」
「いや、何かあるか分からないから!」
「私が見てるから大丈夫よ。」
コリーのその一言で安心したジョンは仕事に行くことにした。
「ごめんなさいねコリー。でも私もう元気よ?」
「いけません!安静にしてください!」
コリーはそう言ってミルク粥を作ってくれた。
こんなんじゃ今日はコーヒーハウスに行けないわ…。お母様の事が気になるけど2人に心配かけられないし我慢しないと…。
「大丈夫ですか?やっぱり何かあったのでは…。」
「大丈夫よ。…ちょっと疲れが溜まってたみたい。」
私は笑って誤魔化すとミルク粥をゆっくり食べ始めた。
*********
翌日。
「すみませんアリスさん、今日はこの後用事がありまして…。」
今日も来てくれたコリーは申し訳なさそうにそう言った。
「もう大丈夫よ。熱は無いし、お医者様も外出許可してくれたでしょ?」
「そうなんですが…。なんだかアリスさん元気が無くて心配で…。」
「心配してくれてありがとう。言ったでしょ?疲れが溜まってたって。今度から無理はしないようにするから。」
コリーは分かりました…と最後まで心配しながら出て行った。本当に優しい子ね。
「さて…私は……。」
私は急いで男装をするとまたコーヒーハウスへと出かけて行った。
「いらっしゃい…あ!君はこの前の!」
もう大丈夫なのかい?と心配そうに聞くマスターに私は大丈夫です、と低い声で答えた。
「なら良かった。あ、いつものコーヒーで良いかい?」
私は頷く。…今日もアルバーンは居ないわ。いくら男装をしているとはいえ、アルバーンは私の顔を何度も至近距離で見ていたからバレるかもしれない。
警戒しながらいつものカウンター席に座った。
「…………。」
あれから2時間は経っただろう。どうしてもお母様の情報が知りたかった私はいつもより長く留まっていたが、何も有益な情報が得られそうも無いので帰ることにした。
アルバーンは地方貴族だから分からないと言っていた。ヘルバーツ公爵様なら…いや、まさか聞けないし…この間は気が動転していたから聞いてしまったけど…。でも何故お母様が…お母様……!
涙が頬をつたり手で拭こうとしたら横からハンカチが差し出された。
「え…ありがとうございま……!!」
お礼を言い何気なく顔を見たところまさかのヘルバーツ公爵様に私はまた焦ってしまった。
「すみません、公爵様のハンカチを…!」
「気にするな。手で拭くと肌が赤くなってしまう。それにそんなに乱暴に拭くな。」
これが美しい令嬢の格好なら絵になっただろうに、大きめの洋服を着た男性にハンカチを差し出す公爵…なかなかシュールな光景だと私は思った。
「ありがとうございます。こちらは洗濯して返します。あ、あと公爵様、以前言っていたシャルロン家の夫人のことですが…。」
「ああ、そうだ。その事について伝えたい事があり君を探していたんだ。」
「え!!」
忘れてくださいと言おうとしたらまさかの私を探していたとは。驚いてついいつもの声が出てしまい慌てて口を塞ぐ。
「夫人の死因だが、どうやら鞭打ち後に身体を壊したらしい。何故鞭打ちをしたのかは聞けなかったが、その後回復せずお亡くなりになったそうだ。」
「鞭打ち…!?」
そんなお母様が…!?どうして。お母様は私の駆け落ちを知らなかったわ。だからその責任は負わないはず。私が考え込んでいるとヘルバーツ公爵様は静かに口を開いた。
「……何故鞭打ちをしたかは聞けなかったが、噂でシャルロン家に仕えていた庭師が一家で逃げたらしい。もしかしたら夫人はその手助けでもしたのかもしれない。」
「!!」
そうか…!お父様がケリー一家を許すわけが無い!不憫に思ったお母様が手助けをして逃がし、それに怒ったお父様がお母様を…!!
「…大丈夫か?また顔色が…。」
「…大丈夫です。公爵様教えてくださりありがとうございました。ハンカチといい、お礼をさせてください。」
「いや、シャルロン家には私も関心があったから調べただけだ。ハンカチも気にしなくていい。」
「ありがとうございます…。」
送っていくという公爵様にお礼を告げ、フラフラと帰って行った。
涙も出なかった私は死人のような顔でただひたすらに歩いていた。




