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お困りなら紳士に相談を。


「スージーさん、おはようございます。」

「ああ!アリス!あんた大丈夫かい!?」

スージーさんは慌てて私に近づくと私の身体に異変が無いか触りながら確認し始めた。

「良かった……!怪我とかしてたらどうしようかと思ったよ。」

「ど……どうしたんですか、いきなり。」

「いきなりじゃないよ!聞いたよ!あんたこの間領主様に意見したんだろ?気持ちはわかるけどさ……今日聞いて領主様に何かされたんじゃとヒヤヒヤしてたんだよ。」

「……心配かけてごめんなさい。」

「本当だよ!あんたは今は平民なんだ。貴族に逆らうなんてご法度だよ!もう…心配かけないでおくれよ。」

アリスは私の娘みたいなものだよ…とスージーさんは優しく抱きしめてくれた。ありがとうございますと私はなんだか泣きそうになってしまった。

「でも本当に何も無くて良かったよ。…さて、今日は何にするんだい?」

スージーさんは私の肩を叩くと店に戻り聞いた。

「あ、今日は林檎をください。アップルパイを作りたくて。」

野菜は以前スージーさんにたくさん貰ったので今日は果物を買うことにした。




「毎度あり!」

スージーさんの声を背に私は広場へ歩いて行った。

「私の娘みたい…か……。」

ベンチに腰をかけてため息をつく。お母様に会いたい…美しくて優しかったお母様……。私が選んだ道だけど、やっぱり寂しく感じることもある。

ジョンも同じ気持ちなんだろうか…ケリーさん達に会いたいとか思うのかな…思うよね……。

私は悶々と考えていたせいで、隣に人が座ったのに全く気付かなかった。


「やぁ、美しいお嬢さん。そんなしかめっ面して…美しい顔が台無しだよ。」

「うわぁ!!」

しまった!あまりに驚いたので淑女とは程遠い声をあげてしまった。

「あら…ごきげんよう。」

私は恥ずかしくなり慌てて上品に振舞った。と、声をかけてきた男性を見る。

「―――!!」

美しい水色の瞳にシルクハットから覗く束ねた同じ水色の髪…この人スージーさんが言っていた怪しい貴族の人だ!

お父様が雇った探偵なら大変!私は慌てて立ち上がろうとすると紳士は私の腕を掴んだ。

「あ…レディに突然触るなんてとんだ失礼を。でも貴方がすぐに立ち去ろうとしたからつい。そんなに警戒しないでください。…ああ、もしかしてあの女主人に私を警戒するように言われたのかな?」

私が恐る恐る頷くと彼は笑いだした。

「あはは、そうか。やっぱりね。私はアルバーン=テッド。地方貴族さ。怪しい者じゃないよ。」

……聞いたことない名前だわ。お父様ともクライン様とも関係ない人かしら…偽名でなければだけど。

「…その地方貴族様がこんな寂れた町に何の用です?」

「ああ、今貴族の間でこちらの町が人気でしてね。ほら、ヘルバーツ公爵様も視察に来ていたでしょう?」

!!クライン様は視察に来ていたのか。

「…この町が人気とは初耳ですわ。特に目立った特産品も無いようだけれど。」

「いやぁ実は私もよく分からないんですよね。ただコーヒーハウスで小耳に挟んで。あのヘルバーツ公爵様が気にかけるとはもしかしたら何か凄いものがあるのかもと急いで来たのです。」

……なるほど。私はクライン様の事業には結婚後も全く興味なかったから分からないけど、もしかしたらクライン様はこちらで事業をしていたのかもしれない。


「―でもそれなら私は関係ないのでは?スージーさんから貴方が私の事を探ってると聞きましたわ。」

「スージーさん?ああ、あの女主人か。いやぁ参ったな。実は隣町で貴方を見て一目惚れしましてね。そしてこの町に来たらまたお見かけして…これは運命だと思いまして。でも聞いたところ貴方は新婚さんだと。残念です。」

アルバーンは肩を竦めて困った顔をした。

「…そうですか。貴族の方に見初められるなんて光栄ですわ。でもそれなら何故また私に声をかけたのです?」

「美しい淑女が悩んでいたからですよ!悩める人に助けを出すのは英国紳士にとって当たり前のことです。…それで何を悩んでいたのですか?」

「………。」

まさかお母様に会いたくてとも言えず。せめてお母様が元気にしているか知りたいわ。

「…最近ロンドンで恐ろしい事件が発生していると聞きまして。」

突然うちの家門を出したらアルバーンは驚くわ。私は遠回しに町全体の事を聞くことにした。

「恐ろしい事件?ああ、ジャック・ザ・リッパーの事かな?まだ犯人は捕まってないよ。」

「被害者は売春婦と聞いたわ。…貴族は襲われてないのかしら?」

「そうですね。今のところは…。なんですか?君は犯人探しをするつもり?やめておきなさい。あれは警察の仕事であって貴方みたいな美しい淑女の仕事では無いですよ。」

「…いえ、そんなつもりは。ただその…貴族の暮らしが気になりまして…。主にロンドンに住んでる貴族が…。」

「貴方は上品さもある。もしかして貴族だったのでは…。」

「違いますわ!貴族に憧れたただの平民ですわ!」

私が大声で答えるとアルバーンは目を丸くした。

「そうですか…。うーん、申し訳ないですが私は地方貴族だからロンドンにあまり詳しくなくてね。コーヒーハウスに行けば情報収集が出来そうだけど…。新聞や雑誌も無料で見られるしね。…まぁ女人禁制という大問題があるけど。君が男装したらいけるかもねぇ?なんちゃって。」

「それだわ!!」

え?あ…ちょっと!?と慌てているアルバーンを置いて私は家に帰る。

男装なら私と分かりづらいし…ジョンの洋服を借りよう!私は良い案を出してくれたアルバーンに心の中で感謝して急ぎ足で向かった。




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