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近づいてくる影の足音。


「いらっしゃい……元気無いねぇ。」

翌朝。お肉料理に添えるローズマリーを買いにスージーさんのところに行った。

「昨日あの後ジョニーのいる鉱山に行ってきたんです。その……想像より遥かに過酷な現場で。」

「そうかい……。」

「それで今日はジョニーにお肉料理を食べさせようと!頑張ってるジョニーに食べさせてあげたくて……。」

「なるほど、それでローズマリーなんだね?本当にあんたは良い奥さんだよ。ほら、少しだけどこれも添えてあげな。」

スージーさんはジャガイモを2つ入れてくれた。

「わ、いつもありがとうございます。」

「いいんだよ。でも加工肉じゃない肉は高いよ?大丈夫かい?」

「ええ、お金を工面してなんとか……。」

宝石を売ってお金を作っているけど、防犯上そのことは伏せている。

「聞いた?お金を工面してお肉を買うですって。」

「そこまでして食べたいのかしら。見栄?それとも口が平民料理には合わないのかしら。」

またあの2人だ。

「またあんた達かい!この子は旦那にお肉料理を食べさせようと頑張って……!」

2人に向かっていきそうなスージーさんを止める。

「大丈夫ですよ、スージーさん。悪口なんて貴族社会でもいろいろ言われてたので慣れています。」

「……アリス…でも……。」

スージーさんが躊躇している。

「聞いた?貴族社会でも嫌われてたみたいよ。」

「だからこっちに来たのかしら。」

2人はくすくす笑いながら悪口をやめない。

「身分なんて関係ないんです。平民だろうが貴族だろうが悪口が好きな人はいます。そう!これは人間性の問題なのですわ!」

私がハッキリ言うとスージーさんは吹き出し悪口を言っていた2人はバツが悪そうに去っていった。

「あはは、あんた綺麗な顔して随分言うじゃないか。」

「私は本当の事を言ったまでです。」

「あはは、アリスの事、ますます好きになったよ。」

私は笑いこけてるスージーさんに挨拶すると向かいの精肉店でお肉を買って帰路についた。




「いやぁ、この町で貴族なんてちゃんと暮らしてけるか心配だったけどあの子なら大丈夫そうだね。」

「本当にそうですね。」

声をした方をハッと見るとシルクハットを被り高そうなスーツを着た男性がいつの間にか立っていた。

シルクハットから覗く水色の眼は美しいが鋭く不気味ささえ感じた。

「あんたなんだい?こんな寂れた町に。」

「そんな警戒しないでください。わたくしアルバーン=テッドと申します。」

シルクハットを外し頭を下げる。瞳と同じ水色の髪が目立つ。洗礼された動きはいちいち美しかった。

「で、貴族様が何の用だい?パーティで使う野菜でも買いに来たのかい?」

アルバーンと名乗った紳士は楽しそうに笑った。

「まさか。わざわざこんな遠い町まで来ませんよ。……ねぇ奥様、さっきの子とても綺麗な子だったけどアリスって言うの?どういう子か詳しく教えてくれない?」

アルバーンはポッケから金貨を出すとチラと見せてくる。

「……おやおや、まぁ!しょうがないねぇ。……なんて言うわけないだろ!彼女は私のお得意さんさ!お金で売るわけないだろう!」

「まさか断られるとは。彼女は確かにお得意さんですが、金貨の方が断然利益が高いと思いますがね。」

「そういう問題じゃないんだよ!なんだいあんた!一目惚れでもしたのかい?残念!アリスは新婚さんなんだ!」

「新婚だって……!?」

アルバーンは驚愕の表情を浮かべると少し考え込んだ。

「そうでしたか、お騒がせしました。」

アルバーンは頭を下げると去ろうとした。

「あ!ちょっと待って金貨忘れとるよ!」

「……いえ、これは貴方の素晴らしい人間性を評価して差し上げます。良い情報も入りましたし……。」

「はぁ!?受け取れないねぇ!」

「本当に貴方って人は……ではこの林檎を1ついただきましょう。その代価です。お釣りは要りませんよ。」

私のお金では無いですし……とアルバーンはさっさと帰ってしまった。

「なんだったのあの人……。」

後には金貨を握らされたスージーさんが1人呆然と立ち尽くしていた。




*******


「ただいま!うわっ、良い香りがすると思ったら!」

ジョンは帰ってくるなり食卓に並んだお肉料理を見て子供のように目をキラキラさせた。

「オーブンで焼いたのよ。オーブンがあって良かったわ。昨日レモンパイも作れたし。」

「あ……昨日レモンパイの差し入れありがとう。皆美味しいって喜んでくれて……。」

ジョンは心無しか元気が無い。

「どうしたの?ジョニーの口には合わなかった?」

「そんな事ない!とても美味しかった!……ただ、アリスに汚い姿見られたなって。」

「汚い姿?」

「うん、汗まみれで煤で黒くなった顔……アンネ様の時には一回も見たことない姿だよね?だから……。」

「確かに貴族社会ではなかなか見ない姿だったけど……頑張って働いてる姿よ?汚いなんて思わないわ。だから安心して。」

「……ありがとう。」

「さ、せっかくのお肉料理冷めちゃうから早く食べましょう!」

「あれ?アリスの分は?」

「働いてるジョニーの分よ。気にしないで食べて。」

「俺一人で食べるなんて嫌だよ!ほら!ナイフで分けるから一緒に食べよう!」

ジョンはそう言って手際よく分けてくれた。

久しぶりに食べたお肉料理はスパイシーな味付けで本当に美味しかった。




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