第七話 『魔女っ子の過去が壮絶な件』
「ほおう。レンキも若いのになかなか苦労してきたのだな」
「まったくだよ。でもま、その経験があったからこそ人として成長できたとも言えるけどな。あるのは後悔だけじゃないかな」
俺とクーロは目的地であるリモネ自治区へと向かう道中で、互いの身の上話に花を咲かせていた。
クーロの素性にはかなり興味があったし、何より現状だと頼れる存在は彼女だけなので信用を得る必要がある。
だからこそ断腸の思いで嘘偽りのない略歴を、時間をかけて開示したというわけだ。
「自分の力で立ち直ることはなかなか難しい。なのにそれを達成しているレンキはやはり勇者にふさわしいと私は思うぞ!」
「あ、ありがとう」
あれ。この魔女っ娘。
もしかしなくても、かなり優しい子なのでは?
最初に出会った時は随分と破天荒なヤツだと思ってたんだが。
もしかしたら魔術が関連する話題のときだけテンションがあがっちゃうだけなのかもしれない。
うん。厨二病患者であり重度のオタクだった俺が言うんだから、それが正しいはずだ。
そうじゃないと異性として見れなくなてしまう。
せっかくこんな美少女と一緒に行動できるのだから、ぶっちゃけそういうことも期待したいもん。
「うむ。では次は私の番だな」
クーロは一つ咳払いをすると、澄んだ声でこれまでのことを話し始めた。
「ーーとまあ、こんなところだ」
「……」
「どうして黙ってるんだ? 感想を言ったらどうだ!」
え、どうしよう。すごい返答に困るんだけど。
なぜかと言えば、それがかなり重めな内容だったからである。
どういう重さかを一言で言えば、“血生臭い”だろうか。
「なんか、俺の人生ってすごいちっぽけだったんだなって」
一応、沈黙に耐えかねた俺はなんとか感想を絞り出した。
だってさ。
生後まもなくして両親に捨てられたところを義両親に拾われて、
ようやく走り回れるようになれば魔王軍の襲来で村を焼かれ一人だけ生き残り、
その後は魔術の才能が開花するまで孤児院で生活しつつ、
やっとの思いで学園にトップクラスの成績で入学するも、自分の使命に気づき中退。
そして今に至る、と。
うん。やっぱりそれしか言葉が出ません。
反抗期こそなかったものの理解不能な行動ばかりしていた俺を見守ってくれてた両親に今更ながら感謝したい気持ちでいっぱいなんだが。
あー。家族がすごく恋しくなってきた。
忙しくてまともに連絡とれてなかったけど、元気してるかな。
あとでちゃんと元の世界に帰れるかとかクーロに聞いておかないと。
「人の人生に大きいも小さいもないさ。まあ、波乱万丈さにかけては誰にも負けるつもりはないがな!」
クーロは胸を張りからっと笑ってそう言う。
虚勢ではないんだろうけど、さすがに全てが本音というわけでもないだろう。
まだあって間もないが、俺が何かと小物っぷりを発揮しているのでこうして気を使ってくれているのかもしれないしな。
「おおっ! 街が見えてきたな」
俺が黙り込んでクーロに対する認識を改めている間に、目的地の付近まで迫っていたらしい。
指差された前方を目を凝らして見てみる。
すると確かにそこには、うっすらとだが街のような輪郭がある。
「おおー。いよいよ俺も中世ヨーロッパデビューってことか……!」
あんなこともあったし、どちらかといえば今までは期待よりも不安が強かった。
でも、もうすぐ異世界の文化に触れらると思うと、不安という気持ちはいつのまにか、膨らんだ期待の影に隠れてしまっていた。
明日は投稿できないかと思われますが、次回はいよいよ錬樹が冒険者になります。