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第五話 『初級魔術・獄炎(ヘル・フレイム)』

 怪鳥は思った以上に大きい。


 体高はおそらく俺の倍はある。いったい翼を広げた全長はどれほどのものだろうか。

 とにかく思った以上にあるそいつの迫力と心臓を鷲掴みするような強い危機感に、絶叫しながら俺は避難した。

 クーロの背中に。

 

「おおーユオルグスか。久しぶりにこんな間近でみたな」

 

 そ、そんなかっこいい名称があるのかよ。みためはヘンテコキメラみたいなのに。

 ていうかクーロはまったくビビってないけど、もしかしてそこまで強くないのだろうか。

 いや、俺はまだこの女の実力をまったく知らないからな。油断はしないほうがいいだろう。

 

「おい、呑気にそんなこと言ってないでさっさと追い払ってくれよ! 俺が怖がらないでいられるのはハリネズミみたいな小型の哺乳類に限るんだ!」

「……まったく。勇者の素質を持つくせに情けないなぁ」

 

 俺の必死さにクーロはため息混じりにそう言う、が。次にはニヤリと広角を釣り上げると、その小さな体のどこにそんな力があるのか、俺をいともたやすく自身から引き剥がした。

 

「これほどの獲物が都合よく来てくれたんだ。記念すべき最初の魔術の的として丸焼きにでもしてやればいいじゃないか! ほれ!」

「うおおおい!?」

 

 彼女はそう言って俺と立ち位置を強引に交換する。

 

「ほら! 見せてみろ! 勇者マエゾノレンキの力を!」

 

 なんて安直なフレーズで俺を焚きつけようとするんだこのイカレ女め。こちとらさっきまでただの頑張ってるだけの高校生だったというか、今もそうなんだぞ!

 

 くっ、そんな文句を心中で垂れ流している間にも、ズンズンとユオルグスとやらが迫ってきている。うわ、なんだあのギザギザな口!

 

「くそっ! やってやる! あんなのに食われて死ぬくらいなら死ぬほど恥ずかしい思いしながらしぶとく生き残ってやる!」

 

 俺はばさっとブレザーを脱ぎ飛ばすと、魔術書に記載されていたことを頭で反芻する。そして数秒の短い時間の中で、呼吸を整える。

 

 そしてーー。

 

「我が業火は貴様の魂すら無に帰すだろう!! 発動【獄炎ヘル・フレイム】!!」

 

 そのあまりにもアレな詠唱と並行するのは、左手で片目を覆い、右手の平を前方に向け、右足を後方へ、左足を前に突き出すポージング。

 

 その二つの条件をクリアすることで、【獄炎ヘル・フレイム】は顕現する。

 

 次の瞬間にはけたたましい爆発音が当たりに響き、視界一面を黒い煙が覆った。

 

 そして不運にも【獄炎】の標的となってしまった怪鳥は、灰塵と化し緩やかな時間の波にさらわれていった。

明日もおそらく投稿できます。

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