第25話 襲撃
こんにちは、味噌ラー油です。
小説初投稿&初連載です。
未熟な文章ですが、最後まで読んでいただけたら幸いです。
《前回までのあらすじ》
”夢喰いの花”に憑かれてしまったへーミシュを助けるため、”風の森の隠れ里”にやってきたソフィア。そこで出会ったマラキアという少女に、”慈悲の巫女”かとたずねられる。”慈悲の巫女”が何かもよくわからないままのソフィアに、愛と美の女神ウェヌスがマシンガントークを始める——!
※表現力が未熟すぎるので、内容を更新することがあるかもしれません。ご了承ください(汗)。
「みんな、急げ!」
ルペスの声が、全員の足をさらに早く動かしている。翼を生やした謎の者たちによる突然の襲撃に、ソフィアたちがいる”風の森の隠れ里”は窮地に陥っていた。里の入り口はすでに破壊されたと、ソフィアは風に乗せられた声で聞いた。
ネカレウスやアルマ、ルペス、そしてランドルフに少し遅れて走っていると、木々の間から巨大な木が姿を現した。幹は巨人がやっと抱えられそうなほどの太さで、根元には大きなウロがある。そして、はるか高い木の上には、木造りの壮麗な神殿があった。
「……あそこ」
マラキアが神殿を指差した。そのままマラキアは神殿に向かって一直線に羽ばたいて行ってしまった。
「あ、ちょっと!」
アルマがその跡を追う。
「こっちだ。行くぞ」
ソフィアはルペスの案内でウロの中に入った。その中には、螺旋階段の入り口があった。
「……おいおい、階段かよ……!」
ネカレウスが目を見開いてため息と悲鳴が混じったような声を上げた。
「んなこと言ってる場合じゃねえよ!」
ルペスに喝を入れられ、皆一列になって階段を登り始める。途中、遠くから何かが爆発し、大きな音を立てて倒れるような音が聞こえた。そして、それは次第に近づいて来た。それでも必死に階段を登っていると、やがて階段は終わり、木の上へと出た。目の前には、遠くで見た時よりもさらに美しい神殿。
「……すごい……」
天に聳り立つ神殿の、装飾ひとつひとつの美しさに、ソフィアは思わずつぶやいた。神殿を見上げながら、ネカレウスたちの背中を追う。神殿の入り口の前で待ち構えていたマラキアとアルマに続いて、神殿の中に入った。
神殿の中には、すでに多くの風精が集まっていた。武器を手にする者。小さな子供を抱える者。突然の出来事に、ソフィアの膝ほどしか背丈がない彼らは、皆動揺しているようだった。
「全員揃ったか」
風精の長、トゥルボーが、風精たちの顔を一人一人見ながら、確かめるように言った。
「……母上、状況は?」
マラキアがトゥルボーに近づいてたずねた。トゥルボーは硬い口調でそれに答えた。
「……あまり思わしくはないな。今、我が村の精鋭たちが何とか侵入を食い止めているが……突破されるのも時間の問題だろう。そうなれば、ここにいる風精たちはおろか、我らが主人であられる方々”風の神々”も守れるかどうか……」
「……」
無言のままのマラキアは、トゥルボーの言葉を聞いてさっと眉間に皺を寄せた。ルペスが悲痛な声を上げる。
「風の長殿、どうにかならないのか!?」
「私たちだってできることなら何とかしたい……だが、我らは小さく、か弱い。今我らにできるのは、我らが主人と、ここにいる風精たちを逃がすことだ」
「……!」
トゥルボーの発言に、ソフィアは息を呑んだ。
逃げること、それはつまり、この里を捨てること。慣れ親しんできたであろうこの隠れ里を、彼らは捨てなければならないのだ。
「里は!? この隠れ里はどうなるの!?」
マラキアが声を荒げる。他の風精たちも、口々に反対し始めた。しかし、「静まれ!」というトゥルボーの声で、皆一斉に静かになる。
「致し方ないことだ。……敵は強い。そなたたちを、我らが主人たちを、危険な目に遭わすわけにはいかんのだ」
至って冷静なトゥルボーの言葉に、マラキアが悔しげに口元を歪めた。彼女が感情を表に出しているのを、ソフィアは初めて見た。
「やだぁ〜、みんな辛気臭い顔しちゃって〜。里から逃げ出すことぐらい、あなたたちの羽があればあっという間じゃない」
重苦しい空気を打ち破ったのは、ウェヌスだった。手をひらひらさせながらそう言ったウェヌスは、「それよりも、”風の神々”はまだなの〜?」と呑気そうに聞いている。一瞬にして辺りの空気が重くなるのがわかった。
(……そうだ……風精さんたちは風を司るから……それで空気が重くなったんだ……それにしても……)
先ほどのウェヌスの言葉に、ソフィアも釈然としない思いを抱えていた。ウェヌスは、おそらくそのことには気づいていないのだろう。だが、いくら女神とはいえ、風精たちにとって今の言葉はあまりにも酷だ。マラキアが眉間に皺を寄せたまま一歩踏み出そうとしたが、ソフィアはそれを手で止めた。次マラキアがウェヌスに逆らえば、何を言われるかわからない。それでもマラキアは、ウェヌスに向かって声を荒げた。
「……我々をお見捨てになるというのですか……!?」
すると、ウェヌスは悪びれる様子も見せずに、顎に指を当てて首を傾げた。
「あら、だって、私とあなたたちは何の関係もないじゃない。私が助ける義理はな——」
「いい加減にしてください!」
聞き慣れた、しかしいつもとは違う声が聞こえて、ソフィアは振り返った。声の主、ネカレウスは、俯いていたが、顔を上げ、ウェヌスを睨みつけた。
「あなたはいつもそうやって自分勝手に……! あなたの行動のせいで、ブルカヌス様がどれほど傷ついておられるか、お分かりですか……!?」
「まあ、火の精が私に口答え? 言っておくけど、あの人に情なんてこれっぽっちもないわ。元々あの結婚は、お父様の言いつけだったのよ? あんな醜いやつと結婚させられて、私の方が被害者よ!」
ウェヌスはそう言って、「むしろあんな奴、封印されて清々したわ!」とそっぽを向いた。ネカレウスが俯き、唇を噛み締める。辺りには、まるで空気が凍ってしまったかのように重い空気が漂っている。だが、いつもならその重い空気に飲まれてしまうソフィアは、一つの疑問に首を傾げた。
「……あの、ウェヌス様」
気づけば口が動いていた。唐突に話に割り込んだソフィアを、ウェヌスが凝視する。
「今のお話を聞いている限りだとよくわからないのですが……どうして”風の神々”の皆様に会われようとしているのですか?」
ソフィアはウェヌスの金色の瞳を見つめてたずねた。ウェヌスは一瞬目を見張ったが、すぐに余裕の笑みを浮かべた。
「ふ〜ん。あなたって結構鈍いのね、”慈悲の巫女”さん。私は愛と美の女神、ウェヌス。この私に心を奪われない男なんていないのよ。あとちょっとで”風の神々”も私の虜になるはずだったのに……トゥルボーが『お目通しすることはできません』なんて言ったせいで……」
ウェヌスがトゥルボーを横目で見た。
「なるほど……。まだよくわかりませんが、ウェヌス様にとって、”風の神々”の皆様は大事な存在、ということですね?」
「な、何よ。何が言いたのよ」
ウェヌスは不機嫌そうに口を尖らせた。
「それなら、その大事な人の大切なお仲間である、風精の皆さんを、お助けするべきではないでしょうか? 大切な人の大切な存在を蔑ろにすると、大切な人にまで嫌われてしまいますよ?」
「なっ……!?」
ウェヌスの短い驚嘆と、ネカレウスの息を呑む声が同時に聞こえた。
「ソフィア……」
ルペスがつぶやく。
「こ、この小娘が……! 私に対して口答えする気……!? ”慈悲の巫女”の……クレメンティアの僕の分際で……!」
ウェヌスが顔に暗い影を落とした。しかし、その表情が、みるみるうちに歪んだ笑みへと変わるのが見えてしまった。
「……いいわ、”慈悲の巫女”……そんなに私に喧嘩を売りたいのなら、あなたをこの世で最も醜くしてあげる……愛と美を司るこの私を小馬鹿にした罰、味わうがいい!」
ソフィアを指差して、ウェヌスは高笑いした。その背後で、翼を生やした人影が神殿に降り立ったことには、まだ気づいていない。
「ウェヌス様、危ない!」
ソフィアは声を上げた。だがその声は、ウェヌスの高笑いと共に、冷たい声にかき消された。
「愛と美の女神ウェヌス、貴様を封印する!」
顔を布で覆った白翼の人影が、ウェヌスに素早く近づいた。すでに幾人もの人影が、神殿内に侵入している。最初に神殿へと侵入した人影がその顔の布を取り、振り返るウェヌスと目を合わせた瞬間、辺りが闇に包まれた。風精たちの混乱を飛び越えて、冷酷な声が風の神殿に響く。
【封呪】
闇の中で、ウェヌスの悲鳴がこだました。
恐る恐る閉じていた目を開けると、目の前には無惨にも鎖で縛られ、磔にされたウェヌスがいた。悍ましいほどの魔力に驚いて彼女の足元を見ると、くっきりと紫色の光を放つ魔法陣があった。先ほどまで暗い笑みで満ちていた顔は、その瞳さえ生気を失っている。
「……ウェヌス様……!」
ウェヌスに近づこうとすると、首筋にヒヤリとしたものが触れるのを感じた。
「動くな」
月の光のように冷たい口調で、背後の人物はソフィアの動きを封じた。
「ソフィアさん!」
「ソフィア!」
マラキアやネカレウスの声が聞こえたが、すぐにその声は剣と剣がぶつかり合う音に飲み込まれた。気づけば、すでにソフィアは周りを白翼の集団に囲まれている。
「まさかここで”慈悲の巫女”と会うとはな……だが、今の貴様は、能力も持たぬただの人間。おとなしくしていれば、命だけは助けてやろう」
思考停止して抵抗すらできないソフィアを嘲笑うように、集団の長らしき覆面の者は言った。
「どうしてこんなことを……!」
ウェヌスの無惨な有様に、思わず悲鳴混じりの掠れた声を上げる。すると、背後の人影はそれを鼻で笑いながら話し始めた。
「ふっ……どうしても何も、簡単なことではないか。イニティウム様に刃向かう”いと高き所の神々”など、この世界には必要ない。全てはイニティウム様が理想とする世界のため——」
「そんなの間違ってる」
思わず口が動いた。首筋に突きつけられた剣に、微かに動揺が走る。
「確かに、イニティウム様の理想とする世界は、素晴らしい世界なのかもしれません。でも、あなたのしていることは間違っている。あなたが敵と見なして封印した神様にだって、大切な仲間や、守りたいものがあったはず。それを一方的に悪者扱いして、世界を壊そうとするなんて、そんなの——」
ソフィアは、自分がこんな状況で急に冷静になったことが不思議だった。だが——。
ネカレウスにアクア、マラキアにルペス。自分達の主人である神々を純粋に慕い、世界を守るために懸命に動く彼ら。そんな彼らを知った今では、白翼の集団がしたことの酷さがよくわかる。
「だから——」
自分の中に溢れ出る風と土の魔力を、手のひらに作り出した魔法陣に込める。
『——自分の力を信じて。あなたなら、運命だって変えられる——』
記憶の片隅にあった祖母の言葉が、ソフィアの魔力を増幅させた。
『砂塵嵐!』
唱えた途端、目を開けていられないほどの突風が、ソフィアに向かって吹き込んできた。風と砂が、自分を中心にしてものすごい速さで回転している。
「みんな逃げて!」
ソフィアは、砂嵐でできた壁の向こう側にいる、ネカレウスたちに向かって声を張り上げた。
「撤退だ! ……くっ!」
ソフィアに剣を突きつけていた人影は、そう言ってソフィアから離れたが、動くこともできずに立ち尽くしていた。ソフィアの周りを囲んでいた白翼の者たちは、砂嵐の中に巻き込まれている。
「おのれぇ……”慈悲の巫女”め……! 次こそは必ず、貴様の息の根を止めてやる……!」
捨て台詞を吐いた覆面の者は、そう言ってついに砂嵐の中に姿を消した。白翼の集団が羽ばたく音が、砂嵐の向こう側で徐々に遠のいていく。やがて、その羽音が完全に聞こえなくなった時、ソフィアは魔法陣を解除した。一瞬にして砂嵐の壁が消えてなくなる。そこには、変わらず封印されたままのウェヌスと、なんとか神殿の外に避難した様子の風精たちが見えた。
(みんな無事……よかった……)
安心したことに気が抜けて、倒れそうになる。
「ソフィア!」
風精たちに捕まって避難していたネカレウスが、ソフィアに駆け寄ってきた。倒れかけるソフィアを、「ぐぬぬぬぬ……」と言って腕をプルプルさせながら、必死に支えてくれている。
「ご、ごめんネカレウス、ありがとう」
頭はふらふらするが、ネカレウスの手を借りてなんとか起き上がる。お礼を言うと、ネカレウスは「このくらいどうってことねえよ」と言って、屈託のない笑顔を見せた。
「それより、大丈夫か?」
ネカレウスがたずねた。
「う、うん。ちょっと力を使いすぎちゃったみたい……」
「そりゃそうだな。あんなすげぇ魔法、見たことねえし」
ルペスも、ネカレウスとは反対の手を持って、ソフィアを支えながら言った。
「っ、そうだ、里は!?」
ネカレウスたちに支えられながら、神殿のテラスまで、よろよろと歩く。
そこから見えたのは、いく箇所からも火柱が上がる、変わり果てた森の姿だった。ところどころ木々がなくなっているところがあり、そこの木々は薙ぎ倒されたのだと、遅れて理解した。
「……僕たちの森が……」
ソフィアの隣にやってきたマラキアが呆然とつぶやいた。
「……ひどい……」
赤い炎が、広い森を赤々と映し出している様子に、胸が締め付けられた。
「トゥルボー様、大変です! たった今報告が入りましたっ!」
マラキアと共に燃え盛る森をただただじっと見つめていたトゥルボーのところへ、一人の風精が飛んできた。
「何事だ」
「……我らが主人、”風の神々”が……封印されました……!」
《第25話 襲撃 了》
最後まで読んでいただきありがとうございました!
拙い文章ですみません……(汗)。
これからも連載頑張ります。
【お知らせ】
次回から新章突入します!
《次回予告》
”風の神々”が封印されたと言う知らせを受けたソフィアたち。そんな状況でも風精の少女、マラキアの協力を得たソフィアは、へーミシュを目覚めさせるため、再び”土の街の隠れ里”へと赴く——!
感想、お待ちしています!!




