第24話 女神
こんにちは、味噌ラー油です。
小説初投稿&初連載です。
未熟な文章ですが、最後まで読んでいただけたら幸いです。
《前回までのあらすじ》
へーミシュを探して”土の街の隠れ里”の裏路地を歩いていたソフィアたちは、へーミシュが怪しい男に話しかけられるのを目撃する。その男のせいで”夢喰いの花”に憑かれ、眠ってしまったへーミシュ。危うく男の仲間に殺されかけるが、ウルクスの魔法で助け出す。しかしへーミシュが目覚めることはなく、土精の長、コルリスの助言を得て、ソフィアたちは彼を助けるために”風の森の隠れ里”へと赴く。そこでソフィアは尋ねられた。「——君は、”慈悲の巫女”なの?」と。
※表現力が未熟すぎるので、内容を更新することがあるかもしれません。ご了承ください(汗)。
「君は、”慈悲の巫女”なの?」
「……え?」
”夢喰いの花”に憑かれてしまったへーミシュを助けるために、”風の森の隠れ里”へとやってきたソフィア。そこで出会った風精の問いかけに、ソフィアは目を瞬かせた。ソフィアが首を傾げると、手のひらに乗りそうなほど小さなその風精も、首をこてんと傾げた。
「あれ、違うの……?」
「え、ええっと……わからない、です……」
ソフィアの返答に、風精は長い白髪を揺らして「おかしいな……」と呟いた。
「確かにクレメンティア様と同じ瞳の色なんだけどな……もしかして、まだ、気づいていないの?」
「……?」
何のことを言われているのかわからないソフィアは、再び首を傾げた。
「……まあ、いいや。突然失礼したね。僕の名前はマラキア。ようこそ、”風の森の隠れ里”へ」
そう言って、マラキアは優雅にお辞儀をした。ソフィアも慌てて「わ、私はソフィアです。初めまして」と返す。
「よお、マラキア。久々だな」
ルペスがマラキアに声をかけた。「なんだ、ルペスもいたの」と、マラキアが無表情のまま言う。
「知り合いなのか?」
ネカレウスが聞くと、ルペスは、「ああ、まあな」と言って、彫りの深い顔にお馴染みの半笑いを浮かべた。すると、アルマがルペスをいじり始めた。
「へえ……なんかやけににやけてるじゃない、ルペス」
「う、うるさいな、友達に会えて嬉しくない奴がいるかよ!!」
「へ〜……ただの友達にしては、喜び方が激しい気がするんだけど」
「やかましいわっ!」
あまりにもアルマがいじるので、ネカレウスが「アルマ、そのくらいにしておけ」と釘をさした。アルマがニヤニヤしていると、今度はマラキアがアルマに質問し始めた。
「そういう君は、なんでここにいるの?」
「え、ええっ!? そ、それは、ソフィアについてきているからであって……」
「ふーん。じゃあ、天使の君が敵であるはずの”慈悲の巫女”と一緒に、敵地であるはずの境界に来ているのは、一体何でなの?」
「そ、それはソフィアの守護天使になったからで……」
アルマが口ごもると、マラキアは「ふーん」と言って、羽を音も立てずに羽ばたかせながら、里の方に向かっていった。
「い、行っちゃった……」
「あいつは風精の中でもかなりの気まぐれだからな。まあ、ついて来いよ。風精の長殿のところに連れてってやるからさ」
そう言って歩き出したルペスに続いて、ソフィアも歩き出した。
風精の長が住む家は、隠れ里の奥までずらっと並んだ木々の、その中でも一際高い木の上にあった。ルペスが木の幹をノックすると、ルペスの足元にあった小さなドアが開き、なんと中からマラキアが出てきた。
「マラキア、さん……!? どうしてここに?」
ソフィアがたずねると、マラキアは「ここ、僕の家だから」と答えた。
「マラキアは長殿の娘なんだ」
ルペスが説明した。
「へー、むすめ、ムスメ、娘……って、マラキアって、女の子だったの!?」
アルマがルペスの言葉を反芻して、ようやく飲み込んだかのように驚きの声をあげた。
「まあな」
「まあな、じゃないっ!」
アルマが半笑いのルペスにツッコむ。
確かにマラキアは、スボンを履いているし、肩には弓をかけている。彼女の「僕」という口癖からしても、男に見えてしまうのは仕方がないのかもしれない。だが、その優雅な仕草や、少し高い声からして、マラキアは少女なのだろう、と、ソフィアはなんとなく察していた。
「そんな気はしてた……」
「俺も……」
ソフィアとネカレウスは、そう言って温かくアルマとルペスのやりとりを見守っていた。
「君たち、仲良いんだね」
マラキアが、そんなアルマとルペスの様子を見てつぶやいた。
(……ん?)
無表情な顔に、一瞬だけ不機嫌さが見てとれた気がした。
(……き、気のせいかな?)
ソフィアはそう思い直し、マラキアに話しかけた。
「マラキアさん、私たち、風精の長様にお願いがあって来たの。長様に会わせてもらえないかな?」
「……お願いって?」
「うん……私たちの仲間が、”夢喰いの花”に憑かれてしまって……助けるためには、あなた方風精の力が必要だって、コルリスさんが……だから、力を貸して欲しいの」
「……いいよ。でも、その前に——」
「その前に……?」
ソフィアが聞き返すと、後ろから光が差してきた。振り返ってもなお眩いその光に、ソフィアが唖然としていると、光は止み、そこには美しい、いや、妖艶な女性が立っていた。
「また突然ですね、ウェヌス様」
マラキアが声色を変えずに言った。
「あら、いいじゃない。何と言っても、私はこの世で最も美しい女神ウェヌスなんですから。それとも、何か問題でも? マラキアちゃん」
ウェヌスが艶やかなブロンドの髪を指先で弄びながら言った。マラキアがボソッと「問題というか、単に迷惑というか……」というのが、ソフィアには聞こえてしまった。しかしウェヌスは全く気づいていないようで、マラキアに話しかけ続けている。
「ねえ、マラキアちゃん。私、あなたのご主人様方に会いに来たんだけど、まだ会わせてもらえないの?」
後光でも差しているんじゃないかと錯覚するほど煌びやかなウェヌスの問いかけに、マラキアは「長殿の命ですから」とだけ答えて目を逸らした。ウェヌスは、「そんなこと言わないでぇ〜!」と、瞳をうるうるさせながらマラキアにすがった。
(う、うわあ……この人、口に出しては言えないけど、すごくめんどくさそう……)
ソフィアがそんなふうに思っていると、ウェヌスがソフィアに視線を向け、「あら?」と言い、ニヤニヤと笑みを浮かべ始めた。ウェヌスと目が合い、固まったソフィアの一瞬の隙を突いて、彼女はものすごい勢いで話し始めた。
「”慈悲の巫女”じゃない!! やだぁ、どこかの陰気臭い女神と似ててびっくりしたわぁ〜。というかあなた、どこぞの悪魔に攫われたのに、よく無事でいられたわね〜。そのまま生贄がわりにパクリっ! てなるのかと思ってたわ〜! あ、そうだ、あなた、テルミヌス城に居候してるんだったら、今度カリタスに会わせてよ。あの人、私の誘いに乗らずにつれないのよ。あ、でも無理よね〜。あんな根暗な女神に仕える巫女が、この私に見合う働きができるわけないわよね〜!」
ウェヌスの超高速トークに、ソフィアの頭は真っ白になった。
(なんか悪く言われてる気がする……あ、でも、言い返したらどうなっちゃうんだろう……そもそも、”慈悲の巫女”って何なんだろう……”慈悲”……? どこかで聞いたことがあるような……)
ソフィアの脳内は大混乱していた。今もウェヌスが喋り続けている言葉の節々に出てくる、あの女神。それは一体……?
「——いい加減にしてください」
凛とした声が、あたりに響く。声の主は、ソフィアに詰め寄っていたウェヌスを睨みつけると、再び口を開いた。
「この方は、我らが森を司りし、クレメンティア様にお仕えする方。それにも関わらず、”慈悲の巫女”を侮辱し、クレメンティア様をも侮辱するような愚行を、いくらウェヌス様とはいえ、許すわけにはまいりません」
恐ることなく前に進み出ると、マラキアははっきりとした口調でウェヌスに言い放った。
「マラキアさん……」
(庇ってくれたんだ……)
「ふーん……マラキアちゃん、いいんだ? 愛と美を司るこの私に、そんなこと言っちゃって」
ウェヌスが暗い笑みを浮かべた。今まで輝いていたその瞳が光を失い、ソフィアの背筋は凍りついた。
(そんな……さっきまであんなに綺麗だったのに……ウェヌス様、怖い……あの女神様と違って……)
唐突にそんな考えが浮かび、その考えに自分自身でも驚くと同時に、祖母の言葉が脳裏に蘇ってきた。
『——”慈悲の巫女”は、クレメンティア様にお仕えする、とても大切な力を持った人のことよ……——』
(おばあちゃん、そういえばそんなこと言ってた……クレメンティア様……?)
その名を心の中で繰り返した瞬間、急に意識が遠くに飛んで行くような、不思議な感覚を覚えた。目の前には、依然として睨み合っているウェヌスとマラキアが見えている。しかし、ソフィアの意識は、遠い過去の記憶を辿っていた。
『——我が加護を受けし”慈悲の巫女”よ。あなたには、大きな使命が課されています。……きっと、涙を堪えきれないほど辛く苦しいこともあるでしょう。でも、どうか希望を捨てないで。あなたには、世界を、運命を変える力があるのだから——』
幼き日の記憶。突然現れてそう言った女性に、ソフィアはたずねた。
『あなたは、一体だあれ……?』
『——私の名は、クレメンティア——』
記憶は、そう言った女性の顔を見る直前で途切れていた。しかし、昔の記憶と、”慈悲の巫女”という言葉が、つながった。
(クレメンティア様って、あの女神様のことだったんだ……っていうことは、私は……)
「はいはい、そこまで」
手を打ち鳴らす音がして、ソフィアは我に返った。音がした方を見ると、マラキアよりも少し背の高い風精が、先ほどの入り口から出てきているところだった。
「……母上」
マラキアがものすごく不機嫌そうな表情をしながら振り返った。そんなマラキアの頭に手を乗せ、風精は言った。
「ウェヌス様。申し訳ありませんが、この子の言う通りです。森に住み、森に生かされている我らにとって、クレメンティア様がどれほど重要な存在か、あなた様もよくわかっておられるはず。どうかお引き取りください」
「……わかったわよ。その代わり、”風の神々”たちに会わせなさいよね」
「……わかりました。ではこちらへ」
そう言って、風精はウェヌスを少し離れたところへ連れていった。
「今の方は……?」
ソフィアがたずねると、不機嫌そうに黙り込んでいるマラキアの代わりに、ルペスが答えた。
「風精の長、トゥルボー殿だよ。マラキアの母親だ」
「そうなんだ……」
ルペスの説明で、風精の長は女性なのだと初めて知った。
(それにしても、トゥルボーさん、って、すごく勇ましい名前だなあ……)
どうりで立ち姿からかっこいいのか、と思っていたが、むすっとしたマラキアを見て思考を切り替えた。
「あ、あの、マラキアさん……さっきはありがとう。私のせいで巻き込まれちゃってごめんなさい」
ソフィアが頭を下げると、マラキアは「僕は、別に……」と言って、ルペスの方を見て、「ねえ?」と言った。
「俺に聞くなよ」
ルペスが笑いながら答えた。
(マラキアさんが少し元気になってよかった……)
ソフィアがそう思っていると、今度はマラキアの方から話しかけてくれた。
「そう言えば、ソフィアさん、僕たちに用があって来たんじゃないの?」
「あっ、そうだった……! あ、あのね——」
「おい、何だあれ!?」
ネカレウスの声に、ソフィアの言葉は遮られた。
振り返ると、翼を生やした人間のような生き物が、境界の空にたくさん羽ばたいていた。その表情は影になっていて読み取れない。
「何、あれ……!?」
ソフィアのつぶやきに応えるものはいない。いや、あまりに突然の出来事すぎて、誰一人として応えることができなかった。しかし、緊急事態だと言う風精たちの声が、風に乗って次々と聞こえてきた。
『侵入者だ!』
『里の入り口が破壊された!』
『敵の数は!?』
『二十、いや三十……!』
『女子供は森の奥に逃げろ!』
『急げ! 何としてでも侵入を食い止めるんだ!』
ネカレウスと目が合った。ネカレウスの顔にも緊張が走っている。
「ねえ、これってまさか……」
「ああ……神々を封印した奴らだ……!」
ネカレウスはソフィアにそう言うと、マラキアに「ウェヌス様と”風の神々”はどこに!?」と聞いた。
「……行くよ、ルペス」
マラキアは無表情にそれだけ言うと、先ほどウェヌスたちが向かった里の奥へと飛んで行った。
「みんな、ついて来い。今のままだと、またテルース様や他の神々の二の舞になる……!」
ルペスの焦った声に、全員が反射的に走り出した。
《第24話 女神 了》
最後まで読んでいただきありがとうございました!
拙い文章ですみません……(汗)。
これからも連載頑張ります。
《次回予告》
翼を生やした謎の集団に襲撃された”風の森の隠れ里”。里を、風精を、そして神々を守るため、ソフィアが立ち上がる——!
感想、お待ちしています!!




