第19話 瑞光の戦士
こんにちは、味噌ラー油です。
小説初投稿&初連載です。
未熟な文章ですが、最後まで読んでいただけたら幸いです。
《前回までのあらすじ》
水精族にさらわれたソフィアと、蚊の字を助けに向かったネカレウスを追って、ランドルフとともに”大瀑布の隠れ里”に潜入したへーミシュ。途中、水精の住処で”あるもの”を見つけたへーミシュだったが、ソフィアを助けるため、再び動き出す。その頃ソフィアとネカレウスは、水精の長・フルクトゥスに攻撃されていたが、へーミシュの助けもあって、隠れ里から脱出するのであった。
※表現力が未熟すぎるので、内容を更新することがあるかもしれません。ご了承ください(汗)。
水精にさらわれたソフィアを助けるため、先に潜入したネカレウスを追い、”大瀑布の隠れ里”に踏み込んだへーミシュとランドルフ。無事とまではいえないが、ソフィアを助け出し、ネカレウスと共に、隠れ里から出ようとしているところだった。入り口まで見送りに来たアクアが、ソフィアをお姫様抱っこで抱えているへーミシュに言った。
「何かわかったら、また知らせに来てください。それと——」
アクアはネカレウスに向き直ると、何か言いたげな顔をした。
「どうした? 俺の顔になんかついてるか?」
ネカレウスが聞くと、はっとした様子のアクアは、「え、ええっと……」と目を逸らしながら言った。
「あ、あなたもまた来てくれてもいいのよ……?」
「えっ? なんで俺まで指名してんだよ」
ネカレウスがそうたずねると、アクアはさっと顔を赤らめて、今度は怒ったように言った。
「ど、どうでもいいでしょ、そんなこと!!」
「何なんだよ……」
ネカレウスは呆れたような声で言ったが、声色とは裏腹にその顔にはキョトンとした表情を浮かべていた。
(何のやりとりを見させられているんだ、俺は……)
へーミシュの方こそ呆れたかったが、ここに長居するわけにも行かないので、アクアに別れを告げ、ぼーっとしているネカレウスを促し、ランドルフとともに歩き出した。
すでに東の空が明るくなってきた頃、ウルクスの掲げた松明の炎が目に飛び込んできた。
「へーミシュ! ソフィアは!?」
ウルクスの問いかけに、へーミシュは答えた。
「おう、少し気を失ってるだけだ。怪我も、水精が治したしな。もうしばらくしたら起きるだろ」
「そっか、よかった……」
「すまねえ、ソフィアを頼む。俺はちょっと一眠りしてくる」
安堵の笑みを浮かべるウルクスにソフィアを任せ、へーミシュは近くの木にもたれかかった。背が高い割には線の細いウルクスが、ソフィアを抱えるのに苦心している様子を見ていると、どっと疲れが押し寄せてきた。そのままへーミシュは眠りに落ちていった。
* * * * *
「へーミシュ、起きて、へーミシュ」
木漏れ日のように暖かな声が、自分を呼んでいるのがゆらゆらと聞こえた。目を開けると、ソフィアとウルクスが覗き込んでいた。
「んー……ソフィア……もう大丈夫なのか……?」
「うん、もう大丈夫だよ。ありがとう、へーミシュ」
起きて早々にお礼を言われ、なんだかいつも以上に照れ臭い。
「ま、まあな。それならよかった」
眠っていたからわからないが、まだそんなに時間は経っていないらしい。
「そ、それよりへーミシュ、大変なことが——!」
ウルクスの慌てたようの声で完全に目が覚めた。同時に、辺りに満ちた霊力に体が反応して飛び起きる。霊力の根源らしき集団が近づくのを感じ取って、へーミシュは言った。
「そ、そうなの。さっきからずっと、遠くでこっちに向かってきている足音がしているの。最初は生き物かなぁって思ったんだけど、どんどん近づいてきて……」
ソフィアもどうやら、気配を感じ取っていたらしい。それにしても——。
「さすがにこの数はまずいんじゃねえか……?」
「う、うん。一応結界は張っておいたよ」
「おお、さすがじゃねえか」
ウルクスの気配りに感心しながらも、へーミシュは前に出て戦闘体制をとった。横でランドルフが狼に姿を変え、唸り声を上げる。
霧の向こう側から現れたのは、白い翼を生やし、頭の上で金色の輪が輝いている集団だった。それに加え、金色の髪に、紺碧の瞳。
(やはり天使か。それも——)
へーミシュは天使たちを睨みつけ、口を開こうとした。しかし、それよりも早く驚きの声を上げた者がいた。
「インシニス! なんであんたがここに……!?」
声の主は、アルマだった。へーミシュは、意表をつかれて振り返った。ソフィアも驚いた様子で、「アルマ、知り合いなの……?」とたずねている。
「知り合いも何も……こいつは、私の同期みたいなものなの……」
「なんだ、今更仲間面するのか、アルマ」
インシニスと呼ばれた天使が、鼻で笑いながら言った。
「今更も何も、あんたは私の仲間でしょ?」
「天使軍を離れ、悪魔と行動するものなど、仲間ではない」
キッパリと言い放ったインシニスに、アルマはたじろいだようだった。
「で、でも——」
「”平和と秩序の天使”であるにもかかわらず、秩序を乱す。そんな奴は、我が隊・”瑞光の戦士”には必要ない」
「——っ!」
アルマの顔が凍りついた。インシニスはなおも続けた。
「大体、”戦いの天使”であられるミカエル様の元に、平和を司る天使など、そもそも必要ないのだ」
インシニスがそう言うと、周りにいた天使たちも次々とアルマに嫌味を言い始めた。
「そうだそうだ!」
「こんな奴がミカエル様の御許にいるなんて」
「ミカエル様に使える天使の誇りはないのか!」
アルマは、完全に言葉を失っていた。ソフィアが「ひ、ひどい……」と小さく声を上げる。
「だが、アルマ。貴様を連れ帰れとの、ミカエル様からのご命令だ。こんなお前にも、ミカエル様はお情けをかけて下さっている。さあ、行くぞ」
気が付くと、へーミシュたちの周りを天使たちが取り囲んでいた。有無を言わせぬ雰囲気だ。だが——。
「おい」
へーミシュは、インシニスがそれ以上何かいう前に、その言葉を遮った。
「そのくらいにしておけ。こいつはただ、ソフィアの守護天使としてついてきているだけだ」
「そのソフィアというものこそ、お前とつるむ反逆者だろう? 悪魔の子へーミシュ」
インシニスの嘲笑に、ソフィアがびくりと肩を揺らす。ランドルフが牙を剥いた。その頭に手を乗せて落ち着かせると、へーミシュは反論を始めた。
「ソフィアは反逆者なんかじゃねえ。それに、アルマだって、別に俺は仲間だなんて思ってねえ。だがな——」
へーミシュはそこまで言うと、一息つき、そしてまた言葉を紡ぎ始めた。
「理不尽な言葉をかけられた奴を放っておけるほど、俺は鈍い奴じゃないんでな」
へーミシュは、インシニスたち天使を睨みつけた。
「へーミシュ……」
アルマが、俯いていた顔を上げた。
正直、アルマを庇うつもりはないのだが、こういう場面に出くわすと、つい昔の自分を重ねてしまう。それに、相手は天使。へーミシュは、怒りのタガがはずれそうになるのを感じ取った。
「それに、こんな所にいていいのか? この異郷は、”いと高き所の神々”が治める場所だ。いくらミカエルの直属部隊と言っても、下手に動いたら何されるかわかんねーぞ」
へーミシュは、怒りを抑えて、努めて冷静に言った。
「”あいつら”など、恐るるに足らぬ。我々を見くびらないでもらいたい。何ならへーミシュ、今ここでお前を切り捨てることも可能なのだぞ、”反逆者の息子”よ」
インシニスは小馬鹿にしたように言った。その言葉の意味する所を察した途端、ヘーミシュは素早く動きながら剣を抜き、それをインシニスの首筋に当てていた。
「よくも母さんのことを……!!」
一瞬インシニスの動きが止まり、その直後、右後方からの攻撃を交わして、へーミシュはインシニスから離れ、後方にバックステップした。後ろから他の天使に攻撃されていたことに気づかなければ、危なかったかもしれない。しかし、へーミシュは、己の怒りを抑えることができそうになかった。自分の中から溢れ出す闇を、思う存分夜に込める。
「宣戦布告か……悪魔風情が、我々”瑞光の戦士”に刃向かうつもりか。ならばこちらは、お前を切り捨てるまでだ……!」
インシニスが剣を抜いた。周りにいた天使たちも、一斉に各々の武器を構える。
「へ、へーミシュ、さすがにこの数は……!」
ウルクスが一歩下がったのが見えた。
「任せとけよ。ウルクスはソフィアたちを頼む。行くぞ、ランドルフ!」
「ガウルッ!」
ランドルフが唸り声でへーミシュに答えた。ランドルフと視線を合わせて合図を送り、剣・夜を振りかざすと、へーミシュは天使の中に突進した。
「はあっ!!」
敵に向かっていった矢先、へーミシュは大勢の天使に囲まれてしまった。ランドルフが援護してくれているから何とかなっているが、次から次へと繰り出される攻撃を交わすだけで精一杯だ。
(こいつら、かなり強え……”瑞光の戦士”……ミカエルの直属部隊なだけあるぜ……キリがねえ)
そんなことを考えながらも、不意に背後から迫る気配を感じて振り返り、鋭い刃を受け止めた。
「……この攻撃をかわしたか。さすがはカリタスの子、いや、”サタン”の孫だけあるな」
攻撃の主、インシニスは、夜を受け止めた短剣に力を込めながら、平然と言った。
「……じーちゃんをその名前で呼ぶな……!」
怒りに任せ、へーミシュはインシニスに剣を振り下ろした。インシニスはあっさりとそれを受け止め、弾き飛ばした。
「ちっ、もう一丁!」
今度は横から切りつけようとした。その時、一瞬インシニスの姿が消えた。
「なっ!?」
それと同時に「危ない!」と言うソフィアの声が聞こえた。
背中に鋭い痛みが走る。振り返ると、そこにはインシニスの冷酷な瞳があった。背中を切り付けられたのだと、遅れて理解した。
「貴、様……ぐっ……!」
へーミシュはそのまま正面に倒れ込んだ。
「へーミシュ!」
「ソフィア、行っちゃダメ!」
アルマとウルクスが、ソフィアを必死に止めているのが、視界の端に見えた。ランドルフがインシニスに飛びかかった。しかし、インシニスが『氷柱』と唱え、ランドルフは飛びかかった姿勢のまま凍りついた。
「……ランドルフ……!」
「ふっ、無様だな、悪魔の子へーミシュ。悪魔と人間の血を引く貴様ごときが、我々に勝てると思ったのか」
「くっ……」
痛みで動くこともままならない。
「さあ、せめてもの情けだ——天界の聖なる炎に焼かれて、消え去るがいい!」
インシニスの左手から炎が吹き出した。しかし、避けることもできない。
(ちくしょう……!)
パチンと指を鳴らす音が聞こえた。ぼんやりとし始めた意識が、それで呼び戻される。
「な、なにっ!?」
インシニスの不意をつかれたような声が聞こえた。
「そんな炎じゃ、こいつは焼けねえよ」
まだ幼さの残る声が、へーミシュのすぐ近くまで来る。
「……火精か。お前のように霊力が弱いものが出てきたところで、我らには敵わないぞ」
「お前、喧嘩売ってんのか」
声の主——ネカレウスの声色は、いつになく本気だ。
「それより、今何をした? ……いくら火精とはいえ、敵が放った炎を操ることはできまい」
そう言ってインシニスが『業火』と唱えるのが聞こえた。熱波が体を包む。かろうじて目を開くと、ネカレウスとへーミシュの周りは巨大な炎に包まれていた。逃げ場はない。しかし、ネカレウスは落ち着き払ってつぶやいた。
「決まってんだろ。俺の得意技は——」
ネカレウスが指を鳴らし、再び乾いた音が異様に辺りに響く。その瞬間、あたりの木々を焦がしそうな高さまで届いていた炎が、消えた。
「——俺の得意技は、火を消し操ることさ」
「ネカレウス……」
へーミシュは、思わず痛みすら忘れてネカレウスの名前をつぶやいていた。
見えないとはいえ、魔力のように確かに存在しているものを消し去ることは、容易ではない。ウルクスですら、前に彼の能力を使った後は、膨大な霊力を消費したせいで倒れてしまった。それを、ネカレウスはこんなにも簡単にやってのけたのだ。
(まさか、ネカレウスにこんな力があったとは……)
「さて、と。お前の炎は、完全に消したわけじゃない。さっきの魔力は吸収させてもらった。今の俺なら、あんたの攻撃よりも強い攻撃を放つことができるが……それでもやるか?」
「ふっ、なるほどな。最弱のサラマンドラは、最強の力を持つ、か。……覚えておこう」
そう言って、インシニスが身を翻した。
「撤退だ、行くぞ。それからアルマ——」
「な、何よ」
「このことは、ミカエル様に報告させてもらう。お前は悪魔に庇われた軟弱者だ、とな」
インシニスの後に続く天使たちが、アルマの方をわざとらしく見て、クスクスと笑い声を残しながら、霧の中に消えていった。
「へーミシュ、しっかりして!」
ソフィアが駆け寄ってきた。
「こ、このくらい、どうってこと……うっ!」
起きあがろうと体に力を入れる。が、すぐに力が抜けてまた倒れ込んでしまった。
『玉泉』
ソフィアの静かで落ち着いた声とともに、背中の痛みが取れていくのがわかった。へーミシュは顔を上げた。ソフィアの背後では霧が晴れ、境界にしては珍しい朝日が登っている。その朝日が、ソフィアの陰を鮮明に映し出していた。
「……治せたけど、無理はしないでね」
そう言ってソフィアは優しく微笑んだ。逆光でも、その表情ははっきりと見えた。
「あ、ああ。ありがとな」
(またソフィアに治してもらっちまったな……)
まるで自分が弱いみたいで、少し複雑な気持ちになった。
ネカレウスがランドルフの氷を慎重に溶かしている間、ソフィアがアルマに近づいた。
「アルマも、大丈夫……?」
「う、うん」
ソフィアの問いかけに頷きはしたが、アルマの顔は晴れていない。
「ごめん、少し、一人にさせてもらってもいいかな?」
アルマはそう言って、その場を離れた。
「わ、わかった。気をつけて」
ウルクスの心配そうな声は、その背中には届いていないようだった。ゆっくりと起き上がったへーミシュは、ネカレウスと顔を見合わせ、それから再びアルマの後ろ姿が消えた方を、じっと見つめるのだった。
《第19話 瑞光の戦士 了》
最後まで読んでいただきありがとうございました!
拙い文章ですみません……(汗)。
これからも連載頑張ります。
《次回予告》
インシニスの言葉に傷つき、一人になったアルマ。そんな彼女に、ネカレウスがかけた言葉とは——。
感想、お待ちしています!!




