その2
「気に入っていただけたようで、わたしも嬉しいですよ、エミリー」
優しげな声音に、私はつい甘えてみたくなった。
「いつか近くへ行ってみたいです」
あまり我儘は言えないけれど希望を告げると、シチュワート様は口許を綻ばせた。
「いつかと言わず今でかまいませんよ」
「いいんですか?!」
シチュワート様の言葉に私は目を見開く。シチュワート様は当然だ、と言わんばかりに深く頷いだ。
「もちろんです、エミリー」
「ありがとうございます、シチュワート様!」
私はシチュワート様の手を取り礼を言う。シチュワート様は目を瞠り、その後頬を赤らめながら微笑んだ。
「わー! 本当に素敵!」
馬車を停め、私は湖へと走った。足元に広がる水辺を眺めはしゃいでいると、シチュワート様がくすくすと笑う声が聞こえてきた。
「こんなに喜んでいただけるとは、光栄だなあ」
しみじみとした口調で発された言葉に、私は笑む。
「だって、ローガン王国には海もありませんし、こんなに大きな湖もありませんでしたから」
「確かに。この間見た湖も小ぶりでしたね」
「ええ」
呪いを解くため魔女のところへ行く際に見た湖は、池よりも少し大きめなものだった。この広大な湖とは比べものにならない。
(なんて素晴らしい光景なの!)
内心で歓喜していると、横合いから歌うような声が飛んできた。
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