その1
続編を始めました。どうぞよろしくお願いいたします。
「もう少しで着きますよ。疲れてはいませんか? エミリー」
「いいえ、大丈夫です。シチュワート様」
ルイランド王国へ向かう馬車の中、私、エミリー・クラウジアは、ルイランド王国の王太子であるシチュワート・ロートン・グラント様に尋ねられ、かぶりを振った。
「よかった。けれど疲れたなら言ってくださいね」
「はい」
シチュワート様の言葉に、私は頷く。この度私の国、ローガン王国で王様たちとすったもんだがあり、シチュワート様が、なんと私の婚約者となったのだ。
そのすったんもんだとは、縁を繋いだり切ったりできる聖水を作れる私を疎んだワイアード王に断罪され、危うく火あぶりになるところを、シチュワート王太子に助けて貰ったことにある。ワイアード王は義理の妹君であるアリシア王女のことを愛していたのに素直になれず。アリシア王女も同じ想いを抱いていたのに想いが上手く伝わらず。けれど事件はお互いの誤解を解くことで無事解決し、私は二人の結婚式を見届けた後、こうしてローガン王国を出て、シチュワート王太子の妃となるため、ルイランド王国に向かっている、というわけである。
「ルイランド王国は水の都だと聞きましたが、どんなところなんですか?」
私が尋ねると、シチュワート様が嬉しげに微笑む。
「はい。大きな湖がある都です。温泉や噴水などの数の多さも特徴ですね」
「早く見てみたいです」
「ええ。わたしもあなたに早くお見せした……、あ。噂をすれば、ですよ。ほら、湖です」
シチュワート様が車窓を指さす。
「え?」
私は振り返り馬車の窓を覗き込んだ。
「湖? というには大きい気が……」
岸が見えない。それどころか、陸地さえ見ることができなかった。けれど、シチュワート様はなんでもないことのように肯定してくる。
「ええ。まるで海のようですが、これは海水ではなく淡水ですし、れっきとした湖なのですよ」
シチュワート様の説明に、私は今一度窓辺に広がる湖を眺める。湖面が太陽に照らされ輝き、宝石が散りばめられたようだった。
「なんて綺麗なの……」
感嘆の声をあげると、シチュワート様がくすりとした。
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